■会社概要
1. 会社概要
unerryは、「心地よい未来を、データとつくる。」というミッションの下、生活者行動ビッグデータとAIを活用し、リアル空間を見える化することによってマーケティングや街づくりに必要なソリューションを提供している。中国・北米・日本で特許を取得している生活者行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を通じて特定の個人を識別しない人流データを蓄積し、「分析・可視化」「行動変容」「One to One」という3つのサービスを顧客に提供している。人流データは、ユーザーがビーコン電波範囲に入った際に位置情報を取得するBluetoothビーコン(Bluetoothの電波を発信する小さな端末)と、GPSによりユーザーの位置情報データを取得することで蓄積される。具体的には、同社の「Beacon Bank SDK(ソフトウェア開発キット:ソフトウェアやWebサービスの開発に必要なプログラム、API、仕様書などをパッケージ化したもの)」を組み込んだスマートフォンアプリを介して、ユーザーから同意を得て取得した位置情報データが「Beacon Bank」に蓄積され、同社独自開発のAI群によって解析される仕組みだ。
同社は、グループ全体で10億超IDの生活者行動データ(300以上のアプリが同社またはブログウォッチャーのSDKを搭載している)と220万ヶ所以上のビーコンにより取得する年間数兆件のログを解析している。こうして膨大かつ網羅的な人流データを分析できることが同社サービスの競争優位の1つだ。併せて、同社はプライバシー対応も実践している。「Beacon Bank SDK」を組み込んだアプリで情報を取得する際はユーザーの事前許諾を得ること、ユーザーが許諾を拒否する方法を明示することなどを徹底し、透明性の高い情報の収集・蓄積を行っている。さらに、情報の分析の際にも統計処理の方法を工夫している。特定の個人を識別できないように統計データ化や少数サンプルの秘匿処理などを実践し、安全性向上に注力している。なお、ブログウォッチャーについてもプライバシー対応水準は同様である。
デジタル化が高度に発達した現代においても、日本国内における消費の90.2%は実社会でのリアル購買によるものだ(令和6年度経済産業省)。一方で、実社会におけるデータの収集・蓄積・整理・分析・活用はまだ十分になされていない。そういった意味では今後同社の事業が貢献できる領域は広大であり、伸び代も大きいと言える。
なお、同社は実社会のデータを基に一般消費者に最適な情報が提供される世界を「環境知能」とし、「人が意識してコンピュータを操作するのではなく、IoTデバイスが人々を『取り巻く(=ambient)』環境に遍在し、状況を賢くセンシングすることで自然な形で必要な情報が提供され、安全安心な状況が保持される環境が知能を持ち、くらしをサポートしてくれる世界」と定義している。
2. 事業内容
同社は、GPSとBluetoothビーコンより取得した生活者行動ビッグデータをAI群で解析し、3つのサービスを提供先の顧客・市場別に各業界の課題解決に最適化し、以下の事業を展開している。小売・外食等を対象とする主力の「リテールDX事業」、消費財メーカー等向けの「リテールメディア事業」、不動産・自治体・官公庁等向けの「スマートシティ事業」、海外・外資・越境事業者等向けの「グローバル事業」、の4事業である。3種類のサービスは、「分析・可視化サービス」「行動変容サービス」「One to Oneサービス」である。「分析・可視化サービス」は導入サービスとして機能しやすく、その上位サービスとして「行動変容サービス」と「One to Oneサービス」があり、これらのクロスセルを促進する仕組みを構築している点も特徴だ。データ分析による現状把握から顧客に合わせたシステム構築まで一気通貫で提供できるサービス群を擁することで、顧客の囲い込みが可能になる。
(1) 「分析・可視化サービス」
「分析・可視化サービス」は、同社が「Beacon Bank」に収集・蓄積した位置情報データをAIで解析し、小売事業者、商業施設運営事業者、消費財メーカー、自治体等に対してダッシュボードサービスや顧客のニーズに応じてカスタマイズした行動分析レポートを提供している。顧客は生活者行動データに基づく各種行動分析レポートを参照することによって自社のDX推進や店づくりに活用できるほか、街づくりにおいてはスマートシティの構築に活用することができる。主に小売事業者を対象に提供している「ショッパーみえーる」は、全国のスーパー・ドラッグストア・ホームセンターにおける来店者のリアルな行動データをAIで分析・推定することによって、商圏の把握、競合店舗とのシェア比較、来店客のデモグラフィー、細かな行動嗜好を簡単に把握できる可視化ツールである。分析機能の拡張を続けており、2024年10月には従来の個別店舗別の詳細分析だけでなく、チェーン×都道府県における分析や、任意のエリアの来店者数ランキングなど、メーカー企業の販促戦略や小売企業の地域戦略に役立つ分析機能を搭載した。主に小売事業者のマーケティング施策に関わる意思決定の際の根拠として導入されている。クラウドで提供するSaaS方式を採用しており、サービス契約期間は基本的に年間で、分析対象のエリアや業態に応じて月額課金(15万円~130万円)としている。
「リアル行動データ可視化・分析」サービスでは、上記以外も含めたカスタマイズ性の高い分析などを提供しており、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/エビデンスに基づく政策立案)を推進する自治体などにも活用されている。
そのほか、観光地やイベント会場などの曜日・時間帯別混雑状況をAIが「混雑」「通常」「閑散」の3段階で推定し可視化する「カスタマイズ混雑マップ」も提供している。顧客は混雑状況を推定したグラフを自社のサイトやアプリに好みのデザインで掲載でき、密の回避により来訪者・自社スタッフの安全の確保や快適性を実現することができる。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)