英国とカナダが相次いで欧州連合(EU)に接近する姿勢を鮮明にしています。英国ではブレグジットの修正、カナダでは対米依存の低下が焦点。一見するとEUの求心力が高まったようにも映りますが、その背景には両国それぞれの国内事情も透けて見えます。
バーナム英首相は最近、EUとの関係を見直す考えを打ち出しました。現状維持に加え、関税同盟や単一市場への復帰、さらにEU再加盟まで選択肢として検討します。2016年の国民投票から10年。バーナム氏はブレグジットが英国に「利益より害をもたらした」との認識を示し、経済成長などを重視してEUとの関係を再構築する姿勢です。
背景には世論の変化があります。調査機関のまとめではEU再加盟への賛成が55%に達し、単一市場、関税同盟への復帰を伴わない関係強化にも59%が賛成。ただ、EU予算への拠出やユーロ導入といった条件が加わると、再加盟への支持は弱まります。国民の間では、EUとは近づきたい半面、以前と同じ形に戻りたいわけではないとの複雑な意識がうかがえます。
バーナム氏がEUとの関係改善を打ち出せば、ブレグジット後の経済に不満を持つ層に対応する姿勢をアピールできます。一方、実際の再加盟への動きを急がなければ、ブレグジット支持層との正面衝突も避けられるでしょう。正式な関係変更を次期総選挙後としている点からも、国内世論を慎重に見極める姿勢が読み取れます。
一方、カーニー・カナダ首相は先月の欧州議会で、重要鉱物やAI、防衛、エネルギー、デジタル貿易など幅広い分野で協力を深める構想を打ち出しました。最大の貿易相手である米国との通商摩擦が続くなか、欧州にも太いパイプを構築したい狙いです。防衛面でも欧州諸国との連携を強めています。
同氏の動きも、やはり国内向けのメッセージを感じさせます。対米関係が不安定な状況で、EUとの関係強化は「米国だけに頼らないカナダ」を有権者に示す材料になります。もちろん、経済面で米国をEUに置き換えるのは現実的ではありません。それでも、EUとの連携を強調することで、外交や通商の選択肢を広げているとの印象を国内に与えることができます。
英国とカナダでは事情が異なるものの、共通するのはEUとの関係強化を国内で前向きに訴えやすくなったこと。EUの求心力が単純に高まったというより、両国のリーダーがEU接近を国内での政治基盤の強化につなげようとしている――そんな政治的な思惑が浮かび上がります。
(吉池 威)
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