■RIZAPグループのchocoZAP事業
5. 店舗品質・顧客満足度向上と無人運営エコシステムの進化
2025年3月期以降は既存会員の満足度向上を推進しており、現在はその成果が顕在化してきた。chocoZAPはサブスクリプション方式であるため、chocoZAPはサブスクリプション方式であるため、会員数が増えるほど退会率の抑制が重要となり、会員満足度の向上が不可欠となる。同社が打ち出す方向性は“人×DXの最適化”であり、具体的には、ちょこっとサポート導入(トレーナー配置)、コンシェルジュ導入(コールセンター)、清掃の強化、サポート会員制度導入、ちょこっとメンテナンスなど社員によるメンテナンス導入等である。さらに、品質管理担当の役割を担う「ちょこっとメンテナンス」人材を登用し、自社車両による定期巡回を行うとともに、設備修理業務やサポート会員のフォローを行うなど、品質向上の取り組みを包括的に実践する体制とした。
故障・不具合対応では、サポートセンターの設置(2022年7月~)、故障カード導入(2023年9月~)、チェックシート導入(2023年11月~)、など段階的に対応を強化してきた。2024年12月に導入したのが、「お店の状況わかるナビ!」(2024年12月~、一覧Webページ)、QRコード管理(2024年12月~、各マシンのQRコードで情報管理)であり、個別機器の故障・不具合の“見える化”が実現した。これらの結果として、マシン故障率は5.90%(2024年11月末)から1.60%(2026年8月時点)まで低減した。
清掃業務・備品補充業務の主役となるのは、33,785名(2026年2月時点)のフレンドリー会員である。同社では清掃箇所の指示や完了報告などが簡易にできるサイトを導入し、フレンドリー会員が働きやすい仕組みを整備している。一方、清掃状況が低調な店舗を中心に定期巡回専門スタッフによる大規模清掃を行っているほか、清掃クオリティの均一化に向けて、AIカメラによる清掃活動の評価や店舗環境の把握を行っている。
以上のサービス水準の向上から、chocoZAPのサービスモデルは、品質の平準化と向上が高水準に達し、現在は「無人運営エコシステムの確立」が完了した段階と言えるだろう。進行期には、従来の「清掃スコア」「マシン故障率」の2指標から、店舗体験スコア(=満足度)と会員の“生の声”を取り込んで店舗品質を高める仕組みへ刷新した。
6. ヘルステックのフル活用
chocoZAPの急成長の要因には、ヘルステックの活用が不可欠である。chocoZAPアプリは、入退会、日々の入退館、混雑情報の確認、ライフログ・顧客特性からAIによる最適な運動の提案、おすすめ動画の配信、継続を支えるゲーム機能(くじ引きなど)、顧客同士のコミュニティ機能などのサービスがあり、会員に不可欠な存在となっている。また、各店舗に平均10台設置された監視カメラ映像をAIが解析し、「不審な行為」や「転倒」を検知した場合には、適切な対処を遅延なく行える体制が整っており、無人店舗のセキュリティ確保に大きく貢献している。さらに、体組成計、ヘルスウォッチ、様々な新規アプリによるライフログの蓄積は顧客サービスにおいて重要な役割を果たしている。
同社は2022年6月にDX専門子会社であるRIZAPテクノロジーズ(株)を新設した。Web・UI/UXデザイナー、デジタルマーケター、データアナリスト、エンジニアなどのDX人財を積極的に採用し、育成している。現在では、同社のDX人財は総勢130名超となり、ヘルステック企業としても大手に位置付けられる。内製化率100%となったことでナレッジ資産蓄積や開発速度の向上が成果として顕在化している。直近の取り組み成果事例としては、chocoZAP店舗の冷暖房の自動制御を同社DXチームが主導した。IoT遠隔システムを自社開発し、冷暖房を自動制御することにより、快適な店舗環境とともに、大きな節電効果が得られた。トレーニングジム業界にはない発想と専門性で、chocoZAP事業の集客や満足度向上に貢献している。今後は、「AI店長」「AIトレーナー(2026年8月中旬より実証検証を開始)」が実装される計画であり、さらなる顧客満足と運営効率化が期待される。
7. 大きな出店ポテンシャル
chocoZAPは大都市を中心に出店を加速し、現在では地方都市を含む全国に店舗網を広げ、2026年8月14日時点で国内2,030店舗、海外26店舗の合計2,056店舗に拡大した。都心部でのchocoZAPは、1〜2km圏内に一定以上の人口があれば成立する小商圏ビジネスモデルである(コンビニエンスストアの商圏は500m前後と言われている)。また、地方都市へ拡大中であり、2024年12月末時点では、既設店舗の72.6%が大都市店舗(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県)であるのに対し、それ以外の27.4%は地方都市の店舗であり、地方都市の店舗の比率は大きく上昇している。1店舗当たりの会員数では大都市店舗を下回るものの、固定費を安く抑えられるため十分収益性が成り立つ。また、過疎地での店舗展開も、人口密度(50人/km2以下)などの条件が不利で当初は考えられなかった地域でも採算がとれることが確認できている。
新たな立地タイプ・店舗タイプの可能性も見えてきている。洗濯・乾燥機のみ、カラオケのみなど機能を絞った店舗、高速道路店舗(「chocoZAP日本平PA(上り)店」(E1東名高速道路)など)、ホテル内立地(「chocoZAPホテル信濃路店」)、空港内店舗(阿蘇くまもと空港内)などである。さらに、大きなポテンシャルを秘めるのが、企業内出店である。2024年10月に同社は、初の単独企業内出店として「chocoZAPクボタ グローバル技術研究所店」をオープンした。国内企業の94.2%※は、福利厚生にフィットネス関連補助を導入していない。一方で、フィットネス関連補助をいち早く導入した企業では、働きやすさの評価が上がり、業績の向上が見込まれるという調査結果もある。上記事例では、chocoZAP導入により社内コミュニケーションの向上に好影響があったという評価もあった。
※ 経済産業省委託事業「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(国内外での健康経営の普及促進に係る調査)報告書」(2023年3月24日)による。
これらの実績及び検証から、同社では、国内のchocoZAPの出店ポテンシャルを、6,000店舗以上と想定している。また、国内のフィットネス参加率(現状4.5%)が、将来的にフィットネス先進国の米国(現状23.7%)に迫る水準(20%)になる前提で試算すると必要フィットネス施設数は49,800店舗、同社シェア16%(現状20%)と仮定すると約8,000店舗となり、出店余地は6,000店舗以上(2026年8月時点の同社店舗数2,030店舗)となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)