■網屋の会社概要
安全・安心な情報通信基盤の実現をミッションとするサイバーセキュリティカンパニー
国産メーカーとしてログ管理製品「ALogシリーズ」を開発・販売するほか、通信インフラのクラウドサービス「Network All Cloud」を提供している。「SECURE THE SUCCESS.−自動化で、誰もが安全を享受できる社会へ−」というビジョンを掲げ、「高水準のセキュリティを、すべての人が得られる社会に」の実現をミッションとし、企業のDX促進を支援する。
社名の「網」は、同社がインターネットのインフラを構築してきたことに由来する。創業当時はオフィスなど限られたエリアで接続されるネットワークであるLANを、広域ネットワークであるWANにつなぐ事業を展開していた。その後、内部不正対策やサイバー攻撃対策などサイバーセキュリティ市場の需要増を背景に、サイバーセキュリティカンパニーとして舵を切り、着実な事業拡大を続けている。自社でサイバーセキュリティ製品を開発できる技術力が強みである。
■事業概要
「ALogシリーズ」のサブスクリプション化により、収益の安定とLTVの向上に期待
1. 事業内容
同社の事業は、情報の安全を守る「データセキュリティ事業」と通信の安全を守る「ネットワークセキュリティ事業」の2つで構成される。2026年12月期中間期の事業別売上高構成比はデータセキュリティ事業が42.1%、ネットワークセキュリティ事業が57.9%となった。セグメント利益構成比はデータセキュリティ事業が58.0%、ネットワークセキュリティ事業が42.0%と、両事業がほぼ同等の利益を創出した。
同社では事業別にARRを重要なKPIに設定している。継続購入や月額・年額制のサブスクリプションサービスによる1年間の売上高もARRに含まれることから、特にSaaSビジネスで重要な指標とされている。2026年12月期中間期は、データセキュリティ事業で2,104百万円(前年同期比39.2%増)、ネットワークセキュリティ事業で2,357百万円(同29.4%増)と右肩上がりで成長している。ARRは、継続収益基盤拡大の表れでもあり、特定の大型契約に依存しない広範かつ構造的な事業基盤が構築されていると弊社では見ている。
データセキュリティ事業とネットワークセキュリティ事業の2軸で展開
2. 事業セグメント
(1) データセキュリティ事業
データセキュリティ事業は、同社の主力製品である「ALog」を中核として展開している事業である。「ALog」は企業内のITインフラ全体に存在するサーバ、ネットワーク機器、セキュリティ機器などの操作履歴やアクセスログを一元的に収集・管理し、誰が、いつ、何を行ったのかを可視化するログマネジメント製品である。サイバー攻撃発生時の侵入経路や被害範囲の特定、内部不正の追跡、システム障害の原因究明などを可能にすることから、企業におけるセキュリティ対策や内部統制を支える重要な基盤として位置付けられている。累計契約実績は6,500件を超え、国内を代表するログ管理製品の一つとして高い導入実績を有している。
近年のサイバー攻撃の高度化やサプライチェーン全体でのセキュリティ強化要請の高まりを背景に、「ALog」の役割は従来の情報漏洩対策や内部不正抑止から大きく拡大している。従来はファイルサーバやストレージサーバにおける操作記録を管理する用途が中心であったが、現在では企業システム全体から収集したログを分析し、攻撃の兆候検知やインシデント発生後のフォレンジック調査を支援するSIEM(セキュリティ情報イベント管理)製品としての活用が進んでいる。経済安全保障やサプライチェーン監査への対応ニーズが高まるなか、企業にとってログ管理は単なるセキュリティ対策ではなく、事業継続やガバナンス強化を支える重要な投資領域となりつつある。
「ALog」の競争優位性は、複雑かつ膨大なログデータを実務で活用できる情報へ変換する独自技術にある。一般的なログ管理製品はログの収集・保管機能が中心であり、専門知識を持つ技術者による分析が必要となるケースが多い。一方、「ALog」は独自のログ翻訳変換技術により、機械的なログ情報を人が理解しやすい形に自動変換することで、専門人材が不足する企業でも効率的な運用を可能としている。また、サイバー攻撃の検知や不正アクセス分析、テレワーク環境下における利用状況把握など、用途別に設計されたテンプレートを標準搭載しており、導入後すぐに高度な分析環境を利用できる点も特長である。
さらに、AI技術を活用した機能強化も進めている。従来のログ管理がインシデント発生後の事後分析を主目的としていたのに対し、現在では過去のログパターンを学習し、不審な行動や異常なアクセスを自動検知する機能を実装している。これにより、事後追跡のみならず、インシデント発生前の予兆検知やリスク低減にも活用領域が広がっている。同社は継続的な研究開発を通じてAIによる自動監視機能の高度化を進めており、海外大手ベンダー製品との競争力向上を図っている。
販売面では、大手ITベンダーやディストリビュータを中心とした間接販売モデルを採用している。富士通、日本電気(NEC)、日立製作所をはじめとする有力パートナーを通じて大企業市場へ展開しており、顧客基盤の大半を大手企業が占める。こうした販売体制は高い市場浸透力を実現するだけでなく、与信リスクの低減にも寄与している。
収益モデルについては、2024年4月に主力製品「ALog」の販売形態をライセンス売切り型からサブスクリプション型へ全面移行した。これにより、従来の一時売上中心の収益構造から、月額利用料を継続的に積み上げるストック型ビジネスへ転換している。移行初期にはフロー売上減少の影響があったものの、現在はARRの積み上がりが加速しており、解約率も0.7%と極めて低水準に抑えられている。既存顧客のサブスクリプション移行も順調に進展していることから、収益の安定性と予見性は着実に高まっている。
また、2023年3月にはSaaS型サービスである「ALog クラウド版」の提供を開始した。従来のオンプレミス型製品では専用サーバの調達や運用管理が必要であったため、主な導入先はシステム運用体制を有する大企業に限定されていた。一方、「ALog クラウド版」はインターネット経由で利用可能なため、サーバ調達や運用負担が不要となり、準大手企業や中堅・中小企業でも導入しやすい環境を実現している。大企業市場で高い導入実績を築いた同社にとって、クラウド版は新たな顧客層の開拓を担う重要な成長ドライバーと位置付けられる。
足元では、サプライチェーン全体のセキュリティ強化やSCS評価制度への対応需要を背景に、エネルギー、防衛、製造業などを中心に引き合いが増加している。ログ管理は一度導入すると運用基盤として定着しやすく、解約率が極めて低いことから、高い継続収益性を持つ事業である。同社はサブスクリプション化による収益基盤強化とAI機能の高度化を進めながら、国内市場におけるシェア拡大を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)