■事業概要
3. 競合優位性
網屋の競合について、国内市場においてはシスコシステムズ傘下のSplunkが挙げられる。Splunkの製品は、様々なソースからのビッグデータを処理してデータ分析を行うためのツールで、ログデータの収集や解析は機能の一部分に過ぎない。機能面のみを比較した場合、同社製品を上回る。しかし、多くの機能を持つため、導入・維持管理には専門の技術者が必要となり、導入や運用のハードルやコストは高い傾向にある。一方、同社製品はSplunkの製品ほど多くの機能を持たないが、SIEM(セキュリティ情報イベント管理)製品として必要な機能は十分に備わっている。ログ解析に特化することで運用が容易で、誰でも扱いやすいのが特長である。また、価格面でも競争力を持つ。
製品に対するユーザー意見の汲み上げについては、営業担当者が販売代理店に同行することで、実際に顧客に製品説明を行いユーザー意見も直接ヒアリングしている。加えて、導入後の製品サポートを通じて新たなニーズについても収集している。同社内では、マーケティング担当・開発担当・営業担当の3者で製品仕様の調整会議を行っており、ユーザー意見を適切に製品へ反映する仕組みが構築されている。Splunkの製品が一部の専門技術者を対象とするマイノリティモデルであるのに対して、同社製品は汎用的で使いやすいマジョリティモデルである。顧客自身が運用できるという点に、同社の優位性があると見られる。
■業績動向
売上高・営業利益ともに中間期最高を更新。営業利益は期初予想の53.2%まで進捗
1. 2026年12月期中間期の業績概要
2026年12月期中間期の連結業績は、売上高3,397百万円(前年同期比23.7%増)、営業利益638百万円(同31.3%増)、経常利益633百万円(同32.3%増)、親会社株主に帰属する中間純利益435百万円(同33.8%増)となった。売上高、各利益ともに中間期として過去最高を更新しており、積極的な成長投資を継続しながら高い成長率を維持した点が注目される。
好調な業績の背景には、国内におけるサイバーセキュリティ需要の拡大がある。近年はランサムウェア対策に加え、経済安全保障やサプライチェーン全体のセキュリティ管理強化が重要な経営課題となっている。特にSCS評価制度をはじめとする各種制度整備が進むなか、大企業や官公庁のみならず、その取引先企業にも一定水準以上のセキュリティ対策が求められるようになっている。このような環境下で、同社の主力製品である「ALog」やSASE関連サービスへの需要が拡大しており、公共、金融、製造業、エネルギー、防衛関連企業など幅広い業種からの引き合いが増加している。
ストック収益の成長を示すARR(年間経常収益)は44億円台まで拡大し、前年同期比33.9%増となった。事業別では、データセキュリティ事業が同39.2%増、ネットワークセキュリティ事業が同29.4%増と、両事業とも高い成長を維持している。データセキュリティ事業では主力製品「ALog」のサブスクリプション契約が順調に積み上がるとともに、既存顧客のサブスクリプション移行も進展している。一方、ネットワークセキュリティ事業では、SASEサービス「Verona」の受注拡大が継続しており、機器販売中心のビジネスモデルから継続課金型モデルへの転換が着実に進んでいる。
収益性の向上については、特定事業の利益率改善によるものではなく、サブスクリプション型製品売上の積み上がりによる構造的な変化が主因である。コンサルティングや各種運用支援サービスなど労働集約型サービスの利益率に大きな変化はない一方、「ALog」や「Verona」といったストック型製品の売上構成比が上昇したことで、全社ベースの収益性が高まっている。特に利益率の高いサブスクリプション収益が継続的に積み上がる事業構造への転換が進んでおり、営業利益率は18.8%と高水準を維持した。
一方で、同社は2026年12月期を「投資の年」と位置付けている。広告宣伝、人材採用、研究開発など将来成長に向けた先行投資を積極的に実施しており、特に大型展示会への出展や自社イベントの開催など、ブランド認知度向上を目的とした販売促進活動を強化した。また、外部委託への依存を低減し内製化を推進するため、新卒採用を中心とした人材投資も継続している。さらに、SASE市場の拡大を見据えた研究開発投資にも注力しており、「ALog」や「Verona」の機能強化を進めている。
加えて、同社はネットワーク機器の調達コスト上昇や円安への対応を目的として、2026年5月にアンペールを子会社化した。現時点では業績への寄与は限定的であり、依然として海外製ネットワーク機器への依存度は高い状況にあるものの、今後はルータなど一部製品から自社設計・自社製造を進め、将来的にはWi-Fi関連機器などへ対象領域を拡大することも視野に入れている。コスト削減効果や収益改善効果は来期以降、段階的に顕在化する見通しであり、中長期的な競争力向上につながる施策として注目される。
こうした投資負担が増加するなかでも、売上成長がこれを上回ったことで営業利益は前年同期比31.3%増となった。特に従来は利益成長が限定的であった第2四半期においても大幅な利益拡大を実現しており、サブスクリプション収益の積み上がりによる収益構造改革の成果が顕在化していると評価できる。
また、通期業績予想に対する進捗率は、売上高48.5%、営業利益53.2%、経常利益53.3%、親会社株主に帰属する中間純利益51.2%となった。同社は例年、下期に売上・利益が偏重する事業構造を有していることから、上期終了時点で通期計画の約半分を達成していることは順調な進捗と評価できる。加えて、今後はキヤノンマーケティングジャパンやNTTドコモビジネスとの協業が本格化する見込みであり、新たな販路拡大や案件創出による成長加速も期待される。
以上を踏まえると、同社は将来の事業拡大に向けた積極投資を継続しながらも、ARRや契約負債の積み上がりによって収益基盤を強化している段階にある。サブスクリプション型製品の拡大による構造的な収益性向上が進んでいることに加え、アンペール買収による調達力強化や内製化の推進も中長期的な収益改善要因となる可能性が高い。高い継続収益性と低い解約率を背景に、今後も安定的な利益成長が期待できる状況にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)