■ESGの取り組み
網屋はESG経営の推進にあたり、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の観点から優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定している。同社では、社会への貢献、事業の継続において、「人材」が最も重要であり、ESGにおいても「人材」に関わる活動に重点を置いて取り組む考えである。
1. 「環境」への配慮
在宅勤務、ワーケーションなど、働き方の多様化を積極的に推進するほか、社内をフリーアドレス化し、社員1人当たりのオフィススペースの効率化を図ることで、オフィス内で必要とする電力量の削減に努めている。また、会議資料の電子化や業務における紙の使用量の削減を推進し、「保護(まもる)くん」※の利用により、紙資源の再利用を促進している。
※ (株)日本パープルが手掛けている機密情報を回収するためのボックスである。回収ボックスに集められた紙は、機密処理施設に運ばれ、再生紙としてリサイクルされる。
2. 「社会」への貢献
サイバーセキュリティ人材の不足は、国防の観点から重要な課題の一つである。同社は、国立大学法人・公立大学法人・学校法人・国立高等専門学校などとの共同研究を通じて、サイバーセキュリティ人材の育成に貢献している。また、海外の大学とも連携し、世界のサイバー空間の安全性向上に貢献している。具体的な取り組みとして、東京大学との因果解析によるログの活用、京都大学や北陸先端科学技術大学院大学とのサービスデザインの共同研究、上智大学との秘密分散法を活用したビジネス創出、高等専門学校とのWi-Fiエクスペリエンス向上のアプリ開発、北海道大学とのサイバーセキュリティ研究部門の設置やAIによるパケット・ログ解析、東京科学大学との次世代機械学習の数理モデルの研究、タイの国立大学マヒドン大学との「ALog」に搭載するAIの調査・検証などがある。
同社は、誰もが平等な雇用機会を得られるよう、多様な働き方を支援している。傷病により休職した従業員に対し、休業中のサポートから職場復帰まで一貫して支援を行っている。また、女性が活躍できる社会を目指し、産休後の職場復帰についてもサポートしている。加えて、将来の社会を担う子どもたちのために、男性の育児への参画も重要だと考え、育児のための休暇を必要とするすべての従業員が取得できるよう、サポート体制を構築している。
3. 「ガバナンス」の強化
(1) リスク・コンプライアンスへの取り組み
経済環境、自然災害、政治・地政学、レピュテーション、労務、不正行為など同社を取り巻くリスクには様々なものがある。同社ではリスク・コンプライアンス委員会を設置し、これらのリスクを識別し、予防・コントロールするとともに、有事の際にその被害を最小限にとどめるための体制を整備している。また、法令違反に対する予防だけでなく、法改正や制度改正などに対して速やかな対応ができるよう、専門家との連携も強化している。
(2) サイバーセキュリティ対策の強化
サイバーセキュリティ企業として、社会にサイバー空間の安心・安全を提供する立場にあるため、厳しいセキュリティ対策を講じている。セキュリティリスクに対する予防だけでなく、常にリスク状況をモニタリングし、有事における被害を最小限にとどめるための対策及び体制を整備している。具体的には、セキュリティリスクをモニタリングし、把握することで顕在化を予防するとともに、有事の際に速やかに適切な対処を行うためにCSIRTを設置している。また、サーバなどすべての機器に対し、週次で脆弱性検査を実施している。発見した脆弱性については、対応基準に従い、脆弱性の重要度に応じて適切に対処している。
(3) 情報セキュリティの継続的改善
顧客や同社などが所有する情報を保護することを目的として、国際規格である「ISO/IEC 27001」認証を取得している。同社では情報セキュリティ委員会を設置し、各部門にセキュリティ担当者を配置することで、日々変化する情報セキュリティリスクに迅速に対処できる体制を整備し、その維持・改善に努めている。また、「ALog Cloud」「Verona」及び「Hypersonix」(ベーシックを除く)のクラウドサービスでは、「ISO/IEC 27017」認証(クラウドサービスのセキュリティ認証)を取得し、提供サービスのセキュリティ向上にも努めている。
■株主還元策
2026年12月期は1株当たり20.00円の配当を予想
同社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けており、企業価値の持続的な向上とあわせて、経営成績に応じた安定的かつ継続的な利益還元を行うことを基本方針としている。配当については、業績や財務状況を総合的に勘案のうえ配当性向20%を目安とする方針のもと、2025年12月期に創業以来初めて期末配当(1株当たり15.73円)を実施した。さらに2026年8月12日、同社は配当政策の基本方針を変更し、経営環境の著しい変化など、特段の事由がない限り年間配当金を維持または増配し、減配は行わない累進配当政策を採用することを発表した。これを受け、2026年12月期の1株当たり期末配当金は20.00円を予定している。背景には、データセキュリティ事業・ネットワークセキュリティ事業がいずれも安定成長軌道にあり、利益率の改善とともに中長期的にも継続的な利益創出が可能な収益基盤の構築が進んでいることがある。
また、同社では株主優待制度を導入している。毎年12月31日時点で同社株主名簿に記載・記録があり、同社普通株式200株(2単元)以上を保有する株主を対象に、保有株数(200株以上500株未満/500株以上の2区分)と保有継続期間(1年未満/2年未満/2年以上の3区分)に応じてQUOカード(2,000円分~15,000円分)を進呈している。
加えて、自己株式取得による機動的な資本政策も継続している。2025年には資本効率の向上及び経営環境の変化に応じた機動的な資本政策を目的として自己株式の取得を実施したのに続き、2026年2月には303,200株の自己株式を取得(同月公表の第三者割当による転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権の発行に関連したものを含む)、さらに2026年8月13日には、176,000株の自己株式取得を実施した。取得した自己株式の一部は、2026年2月公表の転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権の転換・行使時に交付する株式にも充当する方針である。
同社は中期的な成長方針を掲げつつ、累進配当政策への転換、株主優待、機動的な自己株式取得を組み合わせることで株主への利益還元姿勢を一段と明確化しており、中長期的な株価下支え要因になると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)