PRISM BioLabは、独自のペプチド模倣技術「PepMetics技術」を中核とし、創薬困難とされてきた細胞内のタンパク質―タンパク質相互作用(PPI)を制御する低分子医薬品の創出に挑む創薬バイオテックである。同社が発表した2026年9月期第3四半期決算は、小野薬品工業との共同研究におけるマイルストン収入や共同研究費等の寄与により売上高が前年同期比19.4%増の369百万円と伸長した。先行する研究開発投資に伴い営業損失は829百万円となったものの、自社開発の「ヒット創出プログラム」において目標を大幅に上回る約71%のヒット率を達成し、複数の有望プログラムがリード探索段階へ順調に進展している。十分な手元資金を背景に、グローバル大手製薬企業との共同開発やライセンスアウトの拡大を通じた中長期的な高収益化ロードマップを着実に歩んでいる。
2026年9月期第3四半期決算動向:提携マイルストン進展で増収、先行投資期ながら開発は順調
2026年9月期第3四半期累計の業績は、売上高369百万円(前年同期比19.4%増)、営業損失829百万円(前年同四半期は753百万円の営業損失)、経常損失800百万円(同738百万円の経常損失)、四半期純損失845百万円(同803百万円の四半期純損失)となった。小野薬品工業との共同研究における初回マイルストン達成一時金や共同研究費の受領、非開示パートナー企業との進展に伴う一時金受領が寄与し、トップラインは前年同期を上回って推移した。費用面では、有望な創薬標的に対するスクリーニングや最適化研究を積極的に加速させた結果、研究開発費が641百万円(前年同期比43.7%増)へと増加したことが損失拡大の要因となっているが、これは将来の導出価値を高めるための戦略的先行投資である。
競争優位性と技術プラットフォーム:AIと実験の融合で高難度標的に挑む
同社の最大の競争優位性は、20年以上にわたる研究開発の蓄積から生まれたPepMetics技術と、独自のAI・インシリコデザインおよびウェット実験データを高精度に融合させた創薬プラットフォームにある。従来の低分子医薬では標的とすることが極めて難しかった細胞内PPIや、従来のキナーゼ阻害剤が抱えていた選択性・耐性変異の課題に対し、同社はATP結合部位とは異なる領域を選択的に阻害する化合物の創出に成功している。さらに、従来はペプチドでしかアプローチできなかったGPCR Class Bに対しても低分子でのヒットを見出すなど、低分子創薬のフロンティアを切り拓いている。成功事例が乏しくAI単独では設計が困難なPPI領域において、豊富な実測データと化合物の立体構造解析を統合した独自ノウハウの蓄積が、他社には真似できない高い参入障壁と開発効率を実現している。
自社開発および共同開発パイプラインの進展:ヒット創出率71%と想定を大幅超過
当事業年度より本格始動した「ヒット創出プログラム」は目覚ましい進捗を示している。年間10件のスクリーニング実施とヒット率50%を目標としていたところ、第3四半期末までに開始した新規12件のうち評価が完了した7件中5件でヒット化合物を創出、ヒット率は約71%に達した。創出されたヒット化合物はキナーゼCDKファミリーやGPCR Class Bなどを標的としており、順次リード化合物探索段階へ移行している。臨床開発プログラムにおいても、エーザイと共同創出した経口CBP/β-カテニン阻害剤「E7386」はレンビマ併用による後期第Ib/第II相臨床試験で高い奏効率を示し、子宮内膜ガン適応での承認取得に向けたトップラインデータ取得が期待されている。また、大原薬品工業に導出した「PRI-724」も、肝硬変や肝線維化を直接改善する治療薬が実用化されていない非代償性肝硬変を対象とした国内第II相臨床試験が着実に進捗している。
財務基盤と中長期の収益化・黒字化ロードマップ
財務面において、第3四半期会計期間末時点での現金及び預金は2,330百万円、純資産1,890百万円を保持し、自己資本比率は75.7%と健全な水準を維持している。現時点で当面の事業展開に十分な流動性を確保しており、積極的な研究開発投資を継続できる財務体質を維持している。単年度黒字化に向けては、単発のマイルストンに依存する構造から脱却し、豊富な自社創出ヒット化合物群を動物試験等の進展に合わせて製薬企業へ共同開発・ライセンスアウトする体制を構築している。世界的な製薬大手が関心を寄せる数千億円規模の市場性を持つ大型標的を対象としたパイプラインを複数保有しており、数年以内を視野に入れた安定的な黒字化達成と、グローバル市場で確固たる存在感を示す創薬バイオテックとしての飛躍に大いに期待したい。