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多摩川HD:防衛予算の拡大で3Q決算も好調、中計を2年前倒し達成

多摩川ホールディングスは、高周波無線技術を基盤とする電子・通信用機器事業と、太陽光・風力発電所の開発・売電を行う再生可能エネルギー事業を展開する企業グループである。中核子会社の多摩川電子は1968年創業の高周波無線技術専門メーカーであり、官公庁(装備品・安全保障)、公共プロジェクト(列車無線・気象レーダー等)、モバイル通信インフラ、FA・計測の4分野へ製品を供給する。官公庁関連では、大手電機メーカーから受注する立場であり、レーダーに搭載されるRFモジュールや無線機関係を中心とする装備品向け機材を製造し、陸・海・空にわたる納入実績を有する。再生可能エネルギー事業においては、保有する発電所からの売電収入、運用管理(OM)、コンサルティング、請負工事のサービスを提供する一方で、新たに蓄電所の開発とそのノウハウの蓄積に注力している。

同社の強みは、第一に、アナログ高周波、光通信、デジタル・ソフトウェアの3つの技術領域をワンストップで提供できる点である。デジタル化の進展に伴いアナログ高周波の設計人材が構造的に不足しており、大手電機メーカーからアナログ領域の業務が同社に降りてくる構図が定着しつつある。競合にはアナログパーツのみ、デジタルパーツのみといった単機能の企業が多いなか、発注側には無線ブロック一式を1社に任せたいというニーズが強く、アナログから光までを一貫して担える同社への依存度は着実に高まっている。第二に、官公庁関連は製造する工場や製造手順に至るまで細かく定められており、一度採用されれば他社への切り替えが極めて困難な点である。調達期間は3~10年に及ぶため、リピート性の高い安定収益源として積み上がる。足元でも官公庁関連の主力製品が量産フェーズ移行にしており、収益改善に寄与している。第三に、2015年に設立したベトナム工場が10年を経て生産能力を高め、モバイル通信インフラ向けにおいて高品質・低コスト生産を武器にしている点である。コスト競争力の向上のほか、量産体制の確立、ASEAN市場への迅速な供給も可能となっている。

2026年10月期第3四半期累計の連結業績は、売上収益5,302百万円(前年同期比35.8%増)、営業利益928百万円(同453.7%増)と大幅な増収増益で着地した。牽引役は電子・通信用機器事業の官公庁向けであり、関連国家予算の増加に加え、主力製品が開発フェーズから量産フェーズへ移行したことで、第3四半期の電子・通信用機器事業の売上収益は4,912百万円(同40.8%増)と急拡大し、同事業のセグメント利益は1,173百万円(同2.2倍)に達した。完全受注生産による高付加価値型の収益構造が量産化で一段と強まっている。会社側は6月に通期予想を期初から二度目となる上方修正を行い、今期業績見通しは売上収益6,950百万円(従来計画6,620百万円)、営業利益820百万円(同560百万円)を見込む。一部大型案件の期ずれ等も考慮し、業績予想は据え置きとなっているが、達成率は高い。営業利益に関しては、2025年12月公表の中期経営計画における2028年10月期計画(761百万円)を進行期において上回る見通しであり実質2年前倒し、営業利益率も3年前倒しの進捗となっている。

今後の成長を支えるのが官公庁向けの更新需要である。現在進行している新規案件類は2~3年後から本格的に売上へ寄与し始める見込みであり、長期にわたり調達が継続する装備品の特性上、中長期の安定した受注として積み上がっていく公算が大きい。官公庁向けを含む社会インフラ関連は、公共プロジェクトと合わせセグメントの約3分の2を占める収益基盤に育っており、需要増に対応するため生産フロアの拡大と技術人材の確保・育成を進めるほか、2029年10月期には本社第二工場の稼働を計画する。現状の中期経営計画では2030年10月期に売上収益11,154百万円、営業利益1,419百万円を掲げているが、足元の前倒し傾向を鑑みると修正の余地もあろう。

また、再生可能エネルギー事業は、保有する太陽光・小形風力発電所の売電収入が安定収益源となっている。売電は電力を市場で売却するため業績変動の小さい固い基盤になっていることに加え、顧客から発注を受けたNon-FIT太陽光発電所の開発・販売も今期は後半から売上収益・利益への寄与が見込まれる。今後は再生可能エネルギーの普及に不可欠な系統用蓄電所の開発を、金融機関のサポートを得ながら推進していく方針である。政府は系統用蓄電池の導入量を2030年に2024年3月末比4~7倍規模へ拡大させる想定であり、市場の追い風もあろう。同社は太陽光・小形風力で培った電力会社との協議や行政・地権者対応のノウハウを持ち、完成物件の購入によるポートフォリオ拡充も併用しながら、電子・通信用機器事業を補完するストック収益の積み上げを図る。

資本政策面では、新株予約権を活用した資金調達を実施しており、調達資金は主に本社第二工場をはじめとする設備投資へ充当される予定である。希薄化を伴う一方、会社側はこれまで以上に積極的な株主還元を表明しており、量産フェーズ入りで急改善した収益力を踏まえた還元方針の具体化が注目される。防衛関連の中小型株として市場の関心も高まりつつあり、流動性の改善とあわせ、機関投資家層への投資家裾野の拡大が期待される局面にある。8月25日には同社の海外現地法人が保有するシンガポール上場のAddvalue Technologies(SGX:A31)が米Viasatとの提携を発表した。契約数量や業績への定量的影響は公表されていないものの、衛星間データ中継サービス「IDRS」をViasatの「HaloNet」経由で米国政府顧客へ提供する枠組みが構築された。また、IDRS事業グループをNASDAQまたはNYSEへスピンオフ上場させる計画があり、9月24日の臨時株主総会で、最大30%の持分希薄化を含めて承認された。Addvalue Technologiesは上場後も70%以上の持分を維持する方針だが、時期や条件は未確定であり、計画が変更・中止される可能性もある。Maybank Researchはアナリストレポートにおいて、9月4日付でAddvalue Technologiesの投資判断「BUY」、12か月目標株価0.34SGDを示している。同社グループは約1億2,580万株(発行済株式の約3.44%)を保有しており、参考評価額は2025年10月末の約6億円から、9月24日時点で約28.7億円(株価0.185SGD)に拡大した。目標株価を機械的に当てはめると、参考評価額は約52.8億円となる。

総じて、多摩川ホールディングスは、RF基幹部品をアナログから光まで一貫供給できる希少なポジションを確立した企業グループである。防衛予算の拡大と更新需要という長期の追い風のもと、主力製品の量産フェーズ入りで利益率が急改善し、中期経営計画を大幅に前倒しで進捗している。地政学リスクの高まりの中、本格化する官公庁向け入替更新需要の取り込み、第二工場と人材への投資の進捗、そして評価益を除いた実力ベースでの利益成長の持続性を見極めつつ、今後の動向に注目していきたい。

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