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ウルフパックに企業はどう備えるか――太田洋弁護士に聞く(2)

フィスコでは、2026年1月8日に株式会社実業之日本総合研究所(以下「実日総研」)と、アクティビスト投資家やいわゆるウルフパック等による予期せぬ会社支配権の取得、株主提案、委任状争奪戦(プロキシーファイト)等に対応する買収防衛コンサルティング分野における協業を開始している。

近年、上場企業を取り巻く資本市場環境は変化している。アクティビスト投資家の活動に加え、複数の投資家が関係を明らかにしないまま協調して株式を取得する、いわゆるウルフパック戦術や、SNS・メディアを通じた情報発信などを背景に、企業が短期間で対応を迫られる場面もある。

今回、敵対的買収やアクティビスト対応を数多く手掛けてきた弁護士の太田洋先生に話を聞いた。(聞き手:山本泰三=フィスコアナリスト)

ウルフパックに企業はどう備えるか――太田洋弁護士に聞く(1)の続き

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―千葉地裁は、新株予約権の無償割当ての差止めを求める仮処分申立てを却下しました。過去の案件と比較して、今回の司法判断にはどのような意義があると評価されていますか。

今回の基本的な発想自体は、三ッ星案件の大阪高裁決定でも示唆されていたものだと理解しています。大量保有報告規制上の「共同保有者」であると厳密に認定できなければ、防衛策を発動できないということではありません。そこまで求めると捜査機関でもない会社側の負担が過大になります。

共同ないし協調して行動しており、客観的に同一グループと認定できる合理的な範囲であれば、それらを一体として扱えるという考え方は、三ッ星案件の大阪高裁決定でも既に示唆されていたと思います。今回の措置では、共同協調行為を行っている株主として認定された者の保有割合を合算すると20%を超えるという点が問題になりました。

ただ、三ッ星案件で問題とされた点の一つは、認定基準や手続のあり方です。そこで今回は、会社法の研究者の先生方とも相談しながら認定基準を明確にし、認定手続の適正さにも十分に配慮しました。共同協調行動者としての認定が合理的であると裁判所に説明できるよう、合理的かつ適正な認定手続を構築しました。

裁判所が今回の基準や手続を踏まえ、差止めの仮処分申立てを却下したことは非常に大きいと思います。限られた証拠の中で、共同協調行為者のグループとしての認定を認め得ると判断したものと受け止めています。

決定文は、独立委員会の認定プロセスをなぞる形で判断していますが、裁判所には膨大な裏付け資料を提出しています。差止めの申立てを受けて最初に提出した実質的な答弁書は140ページ以上になりました。本当にこの人たちが不自然な動きをしているという点を綿密に主張・立証しました。

―地域新聞社の独立委員会が開示した、共同協調行為を認定する十数項目の要素について、必要十分なものだと感じました。どのような議論を経て、これらの要素を定めたのでしょうか。

裁判所が最も重視すると考えたのは、同じ時期に揃って株式を買っている及びブロックで大量の株式を譲渡しているという点です。同じタイミングで買っているから、まず不自然である。さらに、その買付者同士の背後にさまざまなつながりがある。そうであれば、意思を通じて揃って買ったと考えられる。基本的には、そのような組み立てです。

したがって、判断要素の中では、買付時期やタイミングが非常に重要です。今回は、株式分割後に一斉に株式を取得する動きが見られました。時期が揃っていたことは、裁判所も重視したのだと思います。

―地域新聞社は時価総額の大きくない中小型株に当たります。ウルフパックの標的になりやすい企業には、どのような特徴がありますか。また、企業はどのように備えるべきでしょうか。

狙われやすいのは、やはり中小型株だと思います。加えて、一定の信用がある会社です。今回、会社側が対応しやすかった理由の一つは、事前警告型の買収防衛策が既に導入されていたことです。念のため、株主総会の追認決議も得る形にしました。既存の対応方針の位置付けや追認決議の必要性は、個別の事情に応じた慎重な検討が必要だと思います。

株主構成などから見てリスクがある会社は、事前警告型の対応方針の導入を検討することが有益だと思います。もう一つ重要なのは、早い段階で専門家に相談することです。

ウルフパック戦術に対して防衛できた会社は本当に少なく、ナガホリや今回の地域新聞社など、数えるほどです。共通しているのは、ごく早い段階から相談に来ていることです。もちろん我々でなくても構いませんが、できるだけ早く専門家に相談することが非常に重要です。

―異変に気づかないまま、株式を取られてしまうケースもありそうです。

そうですね。異変に気づいた後は、部分情報提供請求などを通じて、名義や保有状況を調べます。名義上の保有者だけでは実際の関係を把握しにくいケースもありますが、取引の経過などに手掛かりが残ることがあります。早く気づき、部分情報提供請求や総株主通知などを活用して、株主構成の変化を把握することが重要です。スピードも大切ですが、同時に会社側は、拙速な判断で自ら不利な状況を招かないようにすべきです。

大量保有報告規制については、今回の金商法改正で課徴金の水準を従来の70倍に引き上げる措置が盛り込まれました。ただ、違反の態様によって課徴金額は異なります。三ッ星事件での摘発事例のように従来の水準が約10万円となる事例であれば、単純に70倍しても約700万円です。会社支配権の取得によって見込まれる経済的利益との比較では、十分な抑止力になるか疑問が残ります。

規制面では、課徴金額を引き上げるだけでなく、米国のように、違反によって得た利益を全て吐き出させる措置を導入することも検討すべきだと思います。また、外形的な規制だけでは限界があるので、証券取引等監視委員会の執行体制を強化する必要があります。制度を実効的に運用することが重要です。

―今回の防衛スキームが他社にも広がる可能性はあると思います。今後、警戒すべき点を教えてください。

新たなプレイヤーも出てくるなか、実質的支配者を把握する制度は検討に値すると思います。また、臨時国会に提出される予定のBO(究極の実質的保有者)を届出・登録させる制度も重要です。名義上の保有者だけでは、最終的な支配者が誰なのか分からない場合があります。そのため、現状では外形的な事実を積み重ねて対応する必要があります。

こうした事象が広がっていることを踏まえ、資本市場の関係者には、より迅速に対応してもらいたいと思います。規制当局による監督や市場での取引実態の把握も重要です。今回の案件でも、市場内クロスを利用した不透明な取引など市場内の取引について、実質的な関係を確認する必要があると考えています。

市場内で売買の相手方が見えにくい取引については、関係する証券会社の役割も含め、事実関係を丁寧に調べることが重要だと思います。問題が確認された場合には、当局が法令に基づき適切に対応する必要があります。

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