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三菱UFJフィナンシャルG、「グローバルTop5」をめざす 国内・米州・アジアを中心とした多様な事業ポートフォリオを強みに持続的成長へ

成長を生み出すMUFGのチカラ PART1 ―MUFGの“いま”と“これから”

十川潤氏(以下、十川):みなさま、こんにちは。株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ代表執行役専務グループCFOの十川です。当社の個人投資家セミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。

今回は、金融アナリストで名古屋商科大学大学院教授の大槻奈那氏との対談形式でお届けします。

大槻奈那氏(以下、大槻):よろしくお願いします。

十川:今回のメインテーマは「成長を生み出すMUFGのチカラ」です。

大槻:いわゆる「金利がある世界」となり、日本の金融を取り巻く事業環境は大きく変化しています。

これに伴い金融株も注目を集めていますが、その中で日本を代表する総合金融グループである三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)がどのように成長していくのか、またどこに注目して選んでほしいとお考えなのか、私も非常に楽しみにしています。

十川:金融株への関心の高まりは私も肌で感じています。その中で、投資家のみなさまには、私たちの持続的な成長に注目していただきたいと考えています。

大槻:今回は3つのパートに分けてお話ししていきます。

十川:まずPART1で「MUFGの“いま”と“これから”」について、PART2で「なぜMUFGは成長し続けられるのか」についてご説明し、PART3では投資家のみなさまからのよくあるご質問にお答えします。

なぜ、MUFGなのか?

大槻:それでは、PART1の「MUFGの“いま”と“これから”」についてです。スライドの「2兆円突破」は、昨年度の利益の実績を示しています。

親会社株主純利益2兆4,000億円という数字は、大変インパクトがありました。

十川:昨年度は、親会社株主純利益が初めて2兆円を超え、3年連続で過去最高益を更新しました。

東証プライム上場企業の中で、利益が2兆円を超える企業が何社あるかご存じですか?

大槻:具体的な数字はわかりませんが、それほどの利益を誇る日本企業は、思い浮かぶ名前だけでも数えるほどしかないと思います。

なぜ、MUFGなのか? ー親会社株主純利益2兆円を超える企業

十川:昨年度、利益が2兆円を超えた企業は、MUFGを含めて3社のみでした。1兆円を超える企業は6社しかありません。

大槻:東証プライム上場企業が約1,570社あるなかで、1兆円を超える企業は1パーセントにも満たないということですね。私がアナリストとして御社の目標株価などを立てていた頃、確か利益は数千億円程度だったと記憶していますが、いつの間にそこまで増えたのでしょうか?

十川:ご承知のとおり、環境要因もあり親会社株主純利益が数千億円にとどまる時期が長く続いていました。しかし、この5年間で大きく収益力を向上させています。

なぜ、MUFGなのか? ー親会社株主純利益の推移

十川:グループ発足後の親会社株主純利益の推移をご覧ください。厳しい環境下でも構造改革を進めた結果、2021年度に1兆円を突破し、その後も着実に利益を伸ばしています。

2026年度には2025年度からさらに10パーセント以上の利益増加をめざし、2兆7,000億円を目標としています。これは5年前と比較して2.4倍にあたります。

大槻:5年で2.4倍の利益成長を遂げたことは驚きです。MUFGは日本のマイナス金利環境下でも国内ビジネスの改革を進め、さらに海外を含む事業ポートフォリオの多様化を積極的に推進してきました。これらの取り組みが成果につながったということでしょうか?

十川:おっしゃるとおりです。ただし、親会社株主純利益2兆4,000億円の実績には円金利上昇という追い風の要素も多分に含まれています。私たちはこの結果に満足しているわけではありません。

なぜ、MUFGなのか? ー企業価値向上のしくみ

十川:また、重要視しているのは利益の規模だけではありません。企業価値を示す代表的な指標として、PBRが挙げられます。

PBRは株価を1株あたり純資産で割った倍率です。このPBRは、収益力を表すROE(自己資本利益率)と成長期待を表すPER(株価収益率)に分解されます。

大槻:自助努力が数字に直結するのは収益力を表すROEであるため、ROEを経営指標に掲げる企業が多くなっています。

東京証券取引所の要請もあり、PBRやROEを重視する流れが日本全体に浸透してきています。「ROEが高ければ、一般的に収益性や経営効率が良い」と評価されていますね。

十川:おっしゃるとおりです。当社もROEを最も重要な経営指標として掲げています。持続的な利益成長と資本規律の徹底により、ROEの向上をめざしています。

大槻:成長によって得られた利益は、配当の原資にもなります。この株主還元の実績についても教えていただけますか?

なぜ、MUFGなのか? ー株主への還元の実績

十川:2026年度の一株あたり年間配当予想は、前期比10円増配の96円としました。2021年度の28円と比較すると、3.4倍になります(撮影時点)。

大槻:5年で3.4倍ということは、先ほどの利益成長の2.4倍を上回っています。

十川:配当性向の引き上げと規律ある資本運営により、利益成長を上回る増配を実現してきました。

なぜ、MUFGなのか? ー総還元額と総還元性向

大槻:配当を含めた総還元性向はどれくらいでしょうか?

十川:私たちは現中期経営計画で配当性向を40パーセント程度と設定しており、それに加えて自己株式取得も機動的に行っています。その結果、総還元性向は60パーセント前後で推移してきました。

大槻:総還元性向が約60パーセントというのは、高い水準といえます。ただし還元が多ければ良いというわけではなく、還元しすぎると内部成長を抑制し、結果として株価が上がりにくくなることもあります。

MUFGの株価は好調と理解していますが、現在の状況を教えてください。

なぜ、MUFGなのか? ーマイナス金利解除前後の株価推移

十川:スライドは、マイナス金利が導入された2016年からの株価推移です。MUFGの株価を赤、TOPIX銀行業をオレンジ、全体のTOPIXをグレーの折れ線で示しています。ピンク色の棒グラフはMUFGの時価総額を表しています。

2024年3月以降、政策金利が段階的に引き上げられ、それに伴い銀行株は右肩上がりで推移しています。

大槻:政策金利の引き上げは、一般的に貸出金利と預金金利の差である利ざやの改善につながり、銀行の収益を押し上げる要因とされています。

力強い実績と利上げという追い風の影響もあり、MUFGの時価総額は今年7月には東証プライムで首位になりました。

この「銀行が首位に立った」というニュースは大きく取り上げられ、私も喜びと驚きとともに見ていたのですが、実はこれは1986年のバブル期以来のことでした。

これほど配当を増やし、株主還元を進めつつも、きちんと成長を達成されています。また、株価が好調であれば、トータルリターン、つまり株価の値上がり益と配当金を合わせた株主総利回りも気になるところですが、いかがでしょうか?

なぜ、MUFGなのか? ー成長+還元の推移(TSR)

十川:スライドのグラフは、仮に2021年3月末に投資した場合、トータルリターンがどのように推移したかを表したものです。

2021年3月末の株価の終値を「100」とした場合、2026年9月末時点のMUFGのトータルリターンは「758」となっています。これは邦銀のみならず、海外の主要銀行よりも高い水準です。

大槻:つまり、2021年3月末にMUFG株に投資していた場合、この5年間で投資金額が約7.6倍になったということですね。まだ株式を持っていない人が今から購入しても遅くはないでしょうか?

十川:今からでも遅くないと感じていただけるように、トータルリターンを分解しながら当社の取り組みをご説明します。

なぜ、MUFGなのか? ー株主価値向上の仕組み

十川:TSR(株主総利回り)は配当金と株価の値上がり益で構成されています。まず、1株あたりの配当金額は、1株あたりの純利益であるEPSと配当性向の積によって決まります。当社は配当性向を40パーセント程度に維持する方針としているため、EPSが伸びるほど増配につながります。

大槻:1株あたりの純利益を伸ばす手段としては、利益の成長と発行済株式数の減少、つまり自社株買いが挙げられます。

十川:MUFGのEPSは、過去15年間で年率約12パーセント成長してきました。この間、累計で約3兆円分の自己株式取得を実施し、この12パーセントのうち2パーセントは自己株式取得の効果によるものです。

さらに、将来の利益成長に向けた取り組みや事業の安定性といった要素は、成長期待であるPERの維持・向上に寄与し、EPSの向上とともに株価に影響を与えていきます。

大槻:競合他社も同様の理論を述べることは可能だと思います。その中でMUFGが選ばれる理由となるような持続的な利益成長や、成長期待の醸成に向けたMUFGならではの取り組みにはどのようなものがありますか?

MUFGのチカラ ーグローバルなポートフォリオ

十川:鍵となるのは多様化された事業ポートフォリオとグループの総合力です。スライドはMUFGの収益ポートフォリオを表しています。モルガン・スタンレーの持分法投資損益も含めると、割合は国内と米州がそれぞれ4割程度、アジアが2割程度となっています。

大槻:国内だけでなく、米州やアジアも含め、かなりバランスよく構成されているのが特徴ですね。

十川:この多様化されたポートフォリオによって、国内の円金利上昇だけでなく、グローバル経済から成長を取り込むことで、安定した収益力強化を実現しています。

MUFGのチカラ ーグループ総合力

十川:このポートフォリオを実現しているのが、グループ総合力です。スライドに表示しているのはMUFGを構成する代表的なグループ会社です。

国内では多岐にわたる金融機能を揃え、米州では戦略的提携関係にあるモルガン・スタンレーとともに投資銀行業務を中心に注力しています。

また、アジアではパートナーバンクと呼ばれる地場銀行やデジタル金融、コンシューマーファイナンスビジネスなど、地域に根づいた事業を展開しています。

大槻:この中でも、2008年の金融危機の際、米国を代表する投資銀行のモルガン・スタンレーに出資されたというのは大変象徴的な出来事でした。

当時アナリストとして見ていた時には、実際のところなかなかのリスクテイカーだと思いました。あれから18年が経ちますが、現在はどのような協働をされているのでしょうか?

MUFGのチカラ ーモルガン・スタンレーとの戦略的提携

十川:モルガン・スタンレーとの協働は、投資銀行業務から始まりました。その後、合弁で日本国内の証券会社を設立し、現在ではウェルスマネジメントや市場業務における機能・ノウハウの共有、資産運用商品の販売など、両社が持つ顧客基盤の相互活用を行っています。

さらにAIやサイバーセキュリティ分野での知見の共有など、多岐にわたる分野で連携しています。

大槻:まさに、世界に類を見ないトップバンク同士の提携に成長してきたということですね。

十川:モルガン・スタンレーと、日本やアジアで顧客基盤を築いてきたMUFGは、それぞれの強みを補完し合う関係にあります。今後もこのパートナーシップの力を最大限に発揮し、さらなる付加価値の創出に取り組んでいきます。

大槻:地域ごとに特徴のある事業ポートフォリオが、それぞれどのような成長につながっていくのでしょうか?

MUFGのチカラ ーそれぞれのポートフォリオが描く成長曲線

十川:スライドでは、私たちが描いている短期から中長期に向けた地域ごとの利益成長曲線のイメージを示しています。

国内では最大級の顧客基盤を活かし、政策金利や円金利の上昇を最大限に取り込むことで、高い利益成長を実現します。

大槻:国内ビジネスについて、この1年は金利上昇に市場の注目が集まりました。しかし、成長ドライバーはこの外部環境だけなのでしょうか? それだけでは、成長もそろそろピークアウトしてしまうのではないかと感じます。

十川:いえ、私たちの戦略は、中長期的な成長を見据えています。1つ目は貯蓄から投資、そして大相続時代を背景とした資産運用ビジネスの拡張です。

2つ目は、お客さまと一緒に新たなビジネスを構築する、事業共創の取り組みによる収益機会の拡大です。社会やお客さまとともに私たちも成長するという循環を展望しています。

米州では、強みである投資銀行業務やプロジェクトファイナンス、O&D(オリジネーション&ディストリビューション:貸出資産の組成・販売)の強化に取り組みます。加えて、モルガン・スタンレーとの提携をさらに深めることで、世界最大の金融市場で安定的かつ高い成長を取り込んでいきます。

アジアでは、現時点の利益貢献という観点からは、将来に向けた種まきの側面もあります。各出資先との協働の立ち上げや基盤の構築に注力しています。

アジアの出資先には伝統的な商業銀行とデジタル企業があり、それぞれ異なる成長曲線を描きます。MUFGならではの独自のシナジーを創出し、将来の成長エンジンとして位置付けます。

このような異なる成長曲線の組み合わせにより、持続的な成長を可能にしていきます。

大槻:確かに、この図を見ると、アジアがこれから指数関数的に成長する局面が訪れるように思います。

これまでグローバルなポートフォリオやグループ総合力によって利益成長を続け、最終的には「MUFGとしての持続的な企業価値向上を実現する」ということでしたが、具体的には何をめざしていくのでしょうか?

MUFGのチカラ ーグローバルトップバンクへ

十川:スライド左側のグラフは、ROEとPBRに関する当社の現在地と将来の目標を示しています。スライド右側の表は、G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の時価総額ランキングです。

大槻:世界でもトップクラスであるゴールドマン・サックスの背中が見えている状況ですね。

スライド左側のグラフが示すとおり、上位のJPモルガン、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスが入っている赤い丸の部分が、めざすべきところということでしょうか?

十川:おっしゃるとおりです。ROE(率)と、時価総額(額)の両面で、MUFG設立当初から掲げてきた、グローバルトップクラスの金融機関と肩を並べる水準の企業価値と株主価値をめざしていきます。

大槻:MUFGは日本を代表する金融機関であることは間違いありません。しかし、さらにそこから進化し、世界を代表するグループへと成長していくということですね。

その道半ばだからこそ、今後の成長が期待され、それが株主の期待にもつながるということだと思います。御社には、ぜひグローバルトップ5を実現していただきたいと思います。

十川:PART1は以上です。「MUFGの“いま”と“これから”」についてお話ししました。「いま」に関しては、親会社株主純利益が2兆円を突破し、今年度は昨年度からさらに10パーセントを超える増益となる2兆7,000億円をめざします。この力強い利益成長に伴い、配当も大きく伸ばしています。

MUFGのチカラ ーPART1のまとめ

十川:そしてMUFGの「これから」についてです。現在、MUFGの強みである多様な事業ポートフォリオとグループ総合力を活かし、持続的な利益成長を実現しています。グループ発足当初に掲げていた「グローバルトップ5」の立ち位置を、率と額の両面でめざしていきます。

PART2では、持続的利益成長を実現するための各地域における具体的な取り組みについてお話しします。

成長を生み出すMUFGのチカラ PART2 ―なぜMUFGは成長し続けられるのか

大槻:PART2のテーマは「なぜMUFGは成長し続けられるのか」です。

MUFGのチカラ ーPART1の振り返り

十川:前年度の親会社株主純利益は2兆円を突破し、3年連続で過去最高益を更新しました。2026年度はさらに10パーセント以上の成長をめざし、2兆7,000億円を目標としています。この利益成長に伴い、2026年度の1株あたり年間配当予想は10円増配の96円としています。

また中長期的には、さらなるROEの向上と時価総額の上昇を通じて、グローバルトップ5をめざしています。

PART2では、この目標に向けた中長期的な成長を支える当社の強みと、多様な事業ポートフォリオについてお話しします。

MUFGのチカラ ーグローバルなポートフォリオで描く成長

大槻:スライドは地域別収益ポートフォリオです。PART1では、地域ごとに利益の成長曲線が違うというお話でした。

十川:ここではそれぞれの地域での取り組みについて具体的にお話しします。まず、国内の具体的な戦略です。

国内の金融を取り巻く環境

十川:国内の経済や金融サービスを取り巻く環境は、急速に変化しています。

大槻:現在の日本では、長年続いたデフレ環境から脱却し、いわゆる金利のある世界から、さらに金利が上昇する世界へと移行しつつあります。

企業は資本コストや株主価値を意識した経営が一段と求められるようになり、個人についても、政府が掲げる資産運用立国の政策による後押しや、インフレへの対応の観点から資産形成への関心が高まるなど、この数年で金融環境に大きな変化が見られました。

十川:おっしゃるとおり、成長投資や事業再編に向けた資金需要が高まっていると実感しています。また、個人の資産形成ニーズの拡大に伴い、異業種による金融業への参入も活発化しています。

大槻:そのような中、個人と法人それぞれに対して、MUFGではどのような戦略を展開しているのでしょうか?

国内ビジネス ー「生活の中で自然に使われ続ける金融」へ

十川:まずはリテールについてご説明します。めざす姿は「生活の中で自然に使われ続ける金融」です。

大槻:先ほど、異業種参入も活発化しているというお話がありました。人々の生活と金融の垣根はこれまで以上に低くなり、より金融が身近になってきていると感じます。

十川:近年、人々の生活にすでに根づいたEコマースや通信事業者などの金融事業参入が多く見られ、競争が激化しています。

大槻:このような競争を勝ち抜く上で、MUFGはどのような武器をもって戦っていくのでしょうか?

国内ビジネス ー圧倒的顧客基盤×グループに揃うコア金融機能

十川:他社では金融サービスの提供においてグループ外企業との提携が見られますが、MUFGはグループ内であらゆる金融サービスを揃えることにこだわっています。

外部との提携では、互いに合意に至るまで時間がかかる場合がありますが、グループ内ではスムーズに意思決定を行うことが可能です。

一方で、これまで銀行の圧倒的な顧客基盤をグループ内で十分に活用できていないという課題がありました。

国内ビジネス ーライフステージ総合金融サービス「エムット」 Phase1

十川:この課題を克服し、攻めに転じて打って出たのが、新たなリテールブランド「エムット」です。

大槻:「エムット」は最近よく見かけます。昨年5月に発表後、テレビCMや広告なども展開されていますが、その効果はいかがでしょうか?

十川:宣伝効果により認知度が上がっていると実感していますし、数字にも表れています。

「エムット」は3つのフェーズに分かれており、Phase1ではさまざまなサービスをワンストップでつなげることで、グループ各社の顧客基盤を大きく拡大しました。

大槻:そもそもMUFGは国内で相当大きな顧客基盤を有しています。国内随一の顧客基盤を持つ三菱UFJ銀行のさらなる基盤拡大と、グループ各社との連携が順調に進んでいるということですか?

十川:おっしゃるとおりです。この基盤拡大を継続しつつ、「エムット」はPhase2へと移行していきます。

国内ビジネス ー「エムット」Phase2新たなデジタル資産形成体験の提供

十川:Phase2では、新たなデジタル資産形成の体験を提供していきます。新たに開業するデジタルバンク「エムットバンク」では、サービス開発のスピードと柔軟性を向上させるため、銀行本体とは異なる新たなシステムを使用します。

変化の激しいリテールマーケットにタイムリーに適応し、先進的なUI/UXやAIを活用した一人別最適提案などを提供していきます。

大槻:個別に対応できるということですね。またネット証券である三菱UFJ eスマート証券とウェルスナビも統合を予定されています。

十川:高度なトレーディングツールなどを利用できる三菱UFJ eスマート証券と、運用初心者や忙しい方でもお任せで運用できるウェルスナビを統合し、多様なニーズに対応できるネット証券が誕生します。

「エムットバンク」と組み合わせ、将来的にはAIによる一人ひとりに最適化された家計管理や取引の自動化を展望しています。

このように、高い利便性とお得な資産形成体験の提供を通じ、お客さまとの長期にわたるお取引をめざしています。

大槻:グループのサービスをつなげ、デジタルバンクの立ち上げやネット証券の統合によって、さらに利便性を高めた先には、どのような戦略があるのでしょうか?

十川:MUFGの金融サービスが、個人の生活に自然に溶け込んでいくことが重要だと考えています。その鍵の1つがAIです。

国内ビジネス ー「エムット」Phase3新しい顧客体験に向けた検討

十川:「エムット」のPhase3は、OpenAIや国内におけるGoogleとの提携です。

OpenAIとの提携では、MUFGグループ各社のアプリにGPT最新モデルを実装したり、ChatGPT内の商品購入機能にMUFGの決済サービスを連携させたりすることを検討しています。

もう1つはGoogleとの提携です。検索、マップ、動画ストリーミングなど、日常生活に浸透しているGoogleの多種多様なサービスの中で、MUFGの金融機能を提供していくことが、この戦略的提携の目的です。

このように、最先端のAI技術との連携や顧客接点のさらなる拡大を通じて、「生活の中で自然に使われ続ける金融」を進化させていきます。

大槻:これは非常におもしろい取り組みです。まだ個人的には、自分の日常生活の中で、具体的にどのようなかたちで新しいサービスが使えるのかイメージしにくい部分がありますが、これから徐々に新しいかたちが見えてくるのだと思っています。

銀行の歴史を振り返ると、1800年代にはまず資本を蓄え信用を構築しました。その後、1900年代には立派な店舗網を展開することで、さらに信用を高めてきました。

これに続き、今後の銀行がリテール分野で選ばれるための鍵は、やはりUI/UXの進化による利便性であると考えています。

MUFGは、これまでの段階においてもそのような観点で選ばれてきたと理解していますが、新しい文脈においても選ばれ続けるために、「エムット」には期待を寄せています。

一方で、法人についてはいかがでしょうか?

国内ビジネス ー「企業のメインバンク」調査14年連続1位

十川:法人分野では、MUFGをメインバンクとして選んだ企業数が14年連続で1位となりました。この強みを活かし、日本の成長を支えるとともに収益性の向上にも努めたいと考えています。

国内ビジネス ー法人基盤を活かしたグループ一体取引

大槻:企業の成長投資や事業再編が活発化し、資金需要はかなり高まっています。スライド左側の折れ線グラフを見ると、銀行の主要な収益源の1つである貸出の年平均成長率は5パーセントですが、法人手数料収益は7パーセントと高くなっています。

十川:法人貸出残高はもちろん重要ですが、私たちは収益性にも重点を置いています。成長投資や買収などのコーポレートアクションに際して、より付加価値の高い金融サービスを提供し、手数料収益につなげることが重要なポイントです。

大槻:事業再編や成長投資をきっかけとしたM&Aは活発化していますし、不動産投資も盛んです。

十川:MUFGグループには、グローバルトップクラスの投資銀行であるモルガン・スタンレーとの合弁会社の三菱UFJモルガン・スタンレー証券や、業界トップクラスの三菱UFJ信託銀行があります。これらの強みを活かし、M&Aや不動産に関して大きく伸ばしています。

大槻:信託業務やモルガン・スタンレーとの合弁による証券業務のソリューション力は、MUFGならではの強みであり、その競争力が高い手数料収益の成長を支えているわけですね。MUFGの競争力の強さがここにも表れていると思います。

MUFGのチカラ ー米州ビジネス

十川:ちょうどモルガン・スタンレーにも触れましたので、次は米州についてお話ししたいと思います。

米州は、MUFGの収益ポートフォリオにおいて、国内に次いで35パーセントの割合を占めています。この中には、戦略的提携先であるモルガン・スタンレーの持分法投資損益も含まれています。

大槻:米州での強みは何でしょうか?

米州ビジネスー「金利変動に強い収益力」

十川:一言で言えば、「金利変動に強い収益力」です。PART1でも触れましたが、米州では底堅い成長を期待しています。その背景について詳しくご説明します。

米州ビジネス ー手数料収益による持続的な成長

十川:スライドは2022年度以降の米州における粗利益の推移です。

大槻:折れ線グラフで示されているとおり、米国ではここ数年の間にFF金利(短期金利)が大きく変動しました。

十川:おっしゃるとおりです。ただし棒グラフで示す全体の粗利益は着実に右肩上がりで伸びています。金利環境の変化に左右されないこの成長を支えているのが、棒グラフの赤い部分で示されている手数料収益です。

大槻:これほど安定的に手数料収益を伸ばしている背景には、何があるのでしょうか?

十川:その秘訣がO&Dビジネスです。簡単に言うと、貸出資産の回転ビジネスです。

米州ビジネス ーO&Dビジネスとは?

十川:スライドは、金融機関のバランスシートの仕組みを簡単に示した図です。一般的に、貸出を実行した場合、左側に貸出金として計上されます。しかし、預金や市場での資金調達には限界があるほか、貸出はリスク資産でもあります。そのため、資本規制上の制約も存在します。

大槻:貸出資産をバランスシートに抱え続けないほうが資本効率は高まるということですね。収益性が見込める大型案件がたくさんあっても、バランスシートに限りがあると引き受けられる案件数に限界が出てきますが、そのような制約が少なくなるということですね。

十川:おっしゃるとおりです。そこで、実行した貸出金の一部を投資家に売却します。これによりバランスシートに余裕が生まれ、新たな案件に取り組むことが可能となります。この仕組みを採用したビジネスモデルをO&Dビジネスと呼んでいます。

米州ビジネス ー大口資金需要に応え続けるO&Dビジネス

十川:具体的にご説明します。米州では、AI関連やインフラなどへの投資、またM&Aといった大型の資金需要が多く見られます。このような大型ファイナンスでは、高度なソリューションが求められます。

一方、投資家からは投資対象を多様化したいというニーズが拡大しています。そのため、機関投資家とのネットワークを活用することで、組成したローンへの投資を促すことが可能です。結果として、より多くの案件を手がけることで手数料収益を得る機会を増やしていくことができます。

大槻:相互のニーズに応えながら資産を回転させ、手数料収益を獲得しているということですね。実際に、MUFGはこのO&D領域でどのような強みを持っているのでしょうか?

米州ビジネス ーMUFGが誇る米州O&Dにおける2つの強み

十川:プロジェクトファイナンス(PF)では、米州においてマンデートアレンジャーとして16年連続で1位を獲得しています。また、複数の銀行が貸出を行う案件においては、取りまとめ役を担う主幹事を務めた案件数を、2024年度から3割伸ばしています。

ディストリビューションでは、案件に招聘した投資家数を約2倍に増やし、貸出の実行から貸出金の売却までの期間を短期化しています。

大槻:このような投資銀行領域では、モルガン・スタンレーと協働する機会が多いのではないかと思います。PART1でも触れましたが、MUFGがモルガン・スタンレーに出資してから15年以上が経過しました。あらためて現在の協働状況について教えていただけますか?

米州ビジネス ーモルガン・スタンレーとの戦略的提携

十川:スライドに示すとおり、モルガン・スタンレーとは幅広い領域で協働しています。

大槻:投資銀行業務において、欧米だけでなくアジアでも実績を上げています。また、それ以外の領域でも幅広い協働を行っていますね。

十川:株式や外国為替取引のトレーディングシステムなど、モルガン・スタンレーが持つ先進的な機能の導入や活用、運用商品のインバウンド・アウトバウンド双方(国内⇔海外)のお客さまへの販売強化だけでなく、AIやサイバーセキュリティといった最先端のノウハウ共有にまで及んでいます。

大槻:サイバーセキュリティの知見を得られるパートナーがいるというのは、昨今の情勢を考えると貴重なつながりだと思います。

収益面でも、モルガン・スタンレーの貢献は大きいのではないでしょうか?

十川:モルガン・スタンレーは、米国のウェルスマネジメント市場においても圧倒的な存在感を示し、着実に利益を伸ばしています。

また、MUFGにおけるモルガン・スタンレーの貢献利益は約6,700億円と非常に大きなものとなっています。

大槻:ビジネスの協働面でも収益面でも、この協力関係は他行と大きな差別化要因だと思います。トップバンク同士の提携であること、またこれほど長い歴史が続いているという点でも、象徴的な関係だと思います。

十川:おっしゃるとおりです。MUFGには、日本やアジアを中心とした顧客基盤やグループ総合力といった強みがあります。一方、モルガン・スタンレーには投資銀行事業やプロダクト供給力に強みがあります。これらは互いに補完関係にあります。

MUFGのチカラ ーアジアビジネス

大槻:米州も特徴的な強みがありますが、アジアでも独自の戦略を展開されています。

十川:アジアは収益ポートフォリオの16パーセントを占めていますが、今後の成長が期待される領域です。

アジアビジネス ―約4,000億円

大槻:MUFGはメガバンクの中でも比較的早くアジア進出を始めた点が特徴的でした。

十川:MUFGのアジア戦略は形を変えながら成長を続け、約4,000億円もの利益拡大を実現してきました。

アジアビジネス ーステージ変化に伴う営業純益の拡大

大槻:MUFGのアジアビジネスは、当初は法人向けが中心でしたが、商業銀行への出資を通じてリテールビジネスへ拡大しました。現在ではデジタル分野への出資を含む経済圏構築へと変化しています。

十川:日本がマイナス金利下にある中、収益の多様化をめざし、高い経済成長を誇るアジアでの基盤を強化してきました。アジアの営業純益は、2013年度の1,100億円から、現在では5,000億円に拡大しています。

大槻:これまでさまざまな出資案件を手がけてこられたと思いますが、どのような戦略の下でここまで展開してきたのですか?

十川:私たちのアジア戦略では、各国の成長と連動しながら、商業銀行とデジタル企業が生むシナジー効果を重視しています。

現在のポートフォリオが、各国のマーケットをどのようにカバーしているかについて詳しくご説明します。

アジアビジネス ーMUFGのユニークなネットワーク

十川:さまざまな顧客層をカバーするために、パートナーバンクと呼ばれる地場銀行のほか、デジタル金融事業者にも出資してきました。また2026年はインドにおいても大型出資を行いました。

大槻:なぜ商業銀行だけでなく、さまざまなビジネスに投資しているのでしょうか?

十川:アジア経済の特徴として、高い経済成長率が期待されています。これは人口ボーナスに支えられており、個人消費が経済の原動力の1つとなっているためです。

アジアビジネス ―ビジネス環境とそれに応じた出資

大槻:スライド左上の2026年GDP成長率予測のグラフを見ると、アジアの成長を取り込む魅力は非常に大きいですね。

十川:ただし、アジア市場には、日本を含めた先進国とは大きく異なる特徴があります。それが、銀行口座を持たないアンバンクト層の存在です。

大槻:ASEANにおけるアンバンクト層は、半数近い割合を占めています。

十川:MUFGはアジアの成長全体を取り込むため、このような銀行口座を持たない人々も利用する金融サービスへの出資を進めてきました。

具体的には、QRコード決済事業者であるAscend Money社やMynt社、商品購入時の割賦ローンを提供するHome Credit社の子会社であるHC Consumer Finance Philippines社とPT Home Credit Indonesia社、そして2026年はインドで車両ファイナンスを主軸に展開するShriram Finance社にも出資しました。

特にインドは、現在ASEANより高い経済成長が見込まれ、大きく期待しているマーケットです。

大槻:成長という点だけでなく、先ほどのアンバンクト層をカバーすることには社会的意義もあると思います。したがって、スライド左上のGDP成長率予測の「???」はインドでしょうか?

十川:おっしゃるとおりです。Shriram Finance社への出資について、詳しくお話しします。

アジアビジネス ーMUFGのインド戦略

十川:Shriram Finance社は、インド全域において強固な独自の事業基盤を有しており、高いROEと成長率を兼ね備えた業界第2位のノンバンクです。

大槻:インドは高い経済成長率が期待されており、2030年には生産年齢人口が世界最大になるとも言われています。

十川:そのようなインドの主な輸送手段は陸運が全体の約6割を占めており、中古商用車や中古乗用車の販売台数も、今後高い成長が期待されます。Shriram Finance社はこの自動車向けのファイナンス領域に強みを持っています。

大槻:ビジネスや文化の違いもあるため、邦銀単体ではリスクテイクが難しい領域もあると思います。しかし、このようにマーケットに根づいたプレイヤーへの出資を通じて経済成長を取り込むという戦略は、非常に合理的です。特にアジアの各国においては、それが当てはまると思います。

出資によるシナジーにはどのようなものを期待されていますか?

十川:大きく3つあります。1つ目は、Shriram Finance社の信用力が向上し、それによって同社の資金調達コストが改善されることです。これについては、すでに実績が出始めています。

2つ目は、増強された資本を活用した新規事業の拡大や、MUFGの顧客との協働です。

そして、3つ目は知見の共有です。MUFGが過去の出資を通じて蓄積してきたリスク管理やガバナンスなど、さまざまな経営知見をShriram Finance社に共有することで、経営効率を高める効果を期待しています。

大槻:ただ出資を重ねるだけなら、「資金さえあれば誰でもできるのでは」という見方もできます。しかし、今ご説明いただいたようなシナジーを通じた企業価値の向上は、これまでの成功体験を持つMUFGだからこそ成し遂げられるのだと考えています。今後のMUFGのインド戦略にも注目していきたいと思います。

MUFGのチカラ ーPART2まとめ

十川:PART2は以上です。「なぜMUFGは成長し続けられるのか」というテーマで、各地域別の具体的な取り組みについてお話ししました。

大槻:国内、米州、アジアにおける各戦略について深掘りしましたが、グループ総合力を活かしたグローバルな視点で、多様なビジネススタイルにより収益を獲得できることが、MUFGの強みであるとあらためて感じました。

また、今回ご説明いただいた戦略は、必ずしも短期的な収益を追求するものではなく、将来の成長を見据えている点が多く見受けられました。MUFGが成長を続ける理由が、まさに今回の内容に凝縮されていると感じました。

十川:このような「MUFGならでは」の強みを活かして持続的な利益成長を実現し、グローバルトップ5をめざしていきます。

成長を生み出すMUFGのチカラ PART3 ―よくあるご質問

大槻:PART3は「よくあるご質問」についてうかがっていきます。ここには私からの質問も含んでいます。

MUFGのチカラ ーPART1,2の振り返りそれぞれのポートフォリオが描く成長曲線

十川:国内、米州、アジアへとバランスよく分散された事業ポートフォリオは、それぞれ異なる成長曲線を描き、MUFGの持続的成長を支えています。

国内では、No.1規模の顧客基盤を活かし、金利上昇を大きく取り込みつつ、お客さまとの新たな事業共創を推進しています。また、「貯蓄から投資へ」の動きを受けた資産運用機能の強化を進め、将来の成長をめざしています。

米州では、投資銀行業務やプロジェクトファイナンス、O&Dビジネスの強化を図るとともに、モルガン・スタンレーとの提携をさらに深めることで、世界最大の金融市場において安定的かつ高い成長を取り込んでいきます。

アジアでは、現在、各出資先との協働の立ち上げや基盤構築に注力しています。将来的には、MUFGならではのユニークなシナジーを創出し、高い成長を実現します。

MUFGのチカラ ーPART1,2の振り返りMUFGを表す数字

十川:このような取り組みを通じて、中長期的にも持続可能な利益成長を実現し、グループ発足当初に掲げていたグローバルトップ5の立ち位置を、率(ROE)と額(時価総額)の両面でめざしていきます。

大槻:では、ここからは投資家のみなさまの関心が高いテーマについて、「なぜMUFGを選ぶのか?」という点にも触れながら取り上げていきます。

Q1 MUFGの株主となった際のメリットを教えてください

大槻:「MUFGの株主となった際のメリットを教えてください」という質問です。

株価の上昇などさまざまな要因はありますが、個人投資家のみなさまが最も注目される株主還元について、あらためてご説明いただけますか?

A1-1 株主への還元の実績

十川:2026年度の一株あたり年間配当予想は96円であり、2021年度と比較すると3.4倍になります。また、自己株式の取得も機動的に進めており、上期には1,000億円の取得を実施しました。

大槻:そもそも株主還元はどのような方針で行っているのですか?

A1-2 株主還元方針と還元推移

十川:「累進的な配当」「機動的な自己株式取得」「自己株式の消却」の3つを株主還元の基本方針としており、特に、配当は株主還元の主たるものと位置付けています。

大槻:実際の還元額と総還元性向については、スライド右側に記載されています。

十川:配当性向は40パーセント程度を維持する方針です。これにより、利益成長に応じて累進的な増配を実現していきます。

自己株式取得については、業績・資本の状況や、成長投資の機会、さらにマーケット環境を勘案しながら機動的に実施しています。

昨年度は5,000億円の自己株式取得を実施し、総還元額は1兆4,000億円を超えました。結果として、これらの総還元額を純利益で割った総還元性向は、60パーセント前後で推移しています。

大槻:総還元額で1兆円を超えるのは相当な額だと思います。また、総還元性向60パーセントは比較的高い水準です。

株主還元の魅力は十分に理解しましたが、一方で、株主がMUFGをより身近に感じられるような取り組みはあるのでしょうか?

A1-3 株主イベント

十川:MUFGを知っていただくためにさまざまなイベントを用意しています。2026年度の事例としては、航空燃料の堺SAF工場見学、東洋文庫ミュージアムや三菱一号館美術館の貸切観覧、MUFGスタジアムの見学ツアーを実施しました。いずれもMUFGとゆかりのある場所です。

通常ではなかなか体験できないような機会をご用意していますので、ぜひこのようなイベントへもご応募いただければと思います。

大槻:大変おもしろい取り組みだと思います。これは抽選になるのですか?

十川:はい。人気のあるイベントですので、ぜひ積極的にご応募いただければと思います。

大槻:配当や株主還元だけでなく、このような体験を通じてMUFGについての理解を深める機会が得られるということですね。

Q2 株価上昇はこれからも期待できる?

大槻:これから「MUFG株を持ってみようかな?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、一部の個人投資家からは「すでにかなり株価が上がってしまっているように感じています」「手が出しづらい」といった声も聞かれます。

好調な株価推移の中で、今後も株価の上昇が期待できるのでしょうか?

A2-1 マイナス金利解除前後の株価推移

十川:私もよくいただくご質問です。マイナス金利導入前からの株価を見ると、TOPIX銀行業はTOPIX全体を上回り続けており、その乖離は利上げが起きるごとに拡大しています。

ここだけを見ると確かに、「どこまで伸びるのか」もしくは「これからピークアウトか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

A2-2 マイナス金利導入前からの株価推移

十川:スライドは、先ほどのグラフをさらに長期間にしたものです。長期間にすると見え方が大きく変わるかと思います。

大槻:確かに、MUFGの株価を発足当初から長期で見ると、TOPIX全体のパフォーマンスには追いついていないようです。

十川:おっしゃるとおりです。短い期間で見ると邦銀株は良いところまで上げてきているように見えますが、マイナス金利時代に下げた分をまだ取り戻したとは言い切れません。

大槻:これからまだキャッチアップの可能性があるということですね。また、グローバルの競合他社の時価総額とも、まだ差がある点も重要です。

十川:おっしゃるとおりです。グローバルトップ5入りをめざしているため、今の立ち位置にはまだ満足していません。米国と日本の環境の違いもありますが、ROEなどの収益性にも改善の余地があり、現状は道半ばです。

これからさらに収益性と株価を上げていきたいと考えていますので、現時点で株価が踊り場にあるとは思っていません。

大槻:力強いお言葉です。グローバルトップ5への挑戦はまだ続くということで、非常に期待しています。

ところで、グローバルトップ、特に米国の銀行とは金利環境に違いがあると思います。日本は金利上昇の途上にあるとの認識の中で、次のご質問です。

Q3「金利ある世界」による利益への影響は?

大槻:実際に利上げが起きた際、MUFGの収益にはどのような影響がありますか?

A3-1 円金利上昇影響による期待

十川:0.25ポイント政策金利が引き上げられると、収益が約1,800億円増えると試算しています。これは、貸出や債券などの資産の金利が引き上がることによるものです。ただし、貸出の中には固定金利のものも含まれており、これらは3年程度をかけて段階的に入れ替えが進むことになります。

大槻:つまり、0.25ポイントあたり1,800億円の増収効果というのは、3年目に反映される数字ということですね。

十川:おっしゃるとおりです。この特性を踏まえると、今年6月と9月に利上げがありましたが、昨年までの利上げ効果も含めると、現状で2026年度には3,100億円程度の増収が期待されます。

このうち9月の利上げ分にあたる約500億円は、計画2兆7,000億円には織り込まれていませんので、アップサイドとなります。

大槻:つまり、これから利上げが発生すればその分はアップサイドとなり、さらに反映には少しタイムラグがあるため、利益に効果が現れるには時間がかかるということですね。

利上げの効果として興味深いのは、営業経費をほとんど増やさずに利益を押し上げられる点です。貸出残高を増やすには営業担当者のマンパワーが必要ですが、利上げによって貸出等の利回りが拡大する場合は、追加コストをほとんど伴わずに利益が拡大します。

そして、これまで実施された利上げ効果は、2027年度や2028年度の利益にも影響を及ぼします。

十川:ただし、この試算はバランスシートの構造を変えないことを前提に計算しています。この点について、次のスライドでご説明します。

A3-2 円債保有状況と運用方針

十川:スライド左側はMUFGの円貨バランスシートです。MUFGのバランスシートは圧倒的な預金量に支えられ、貸出金や債券などの有価証券運用に加え、約60兆円の日銀当座預金を保有しています。

大槻:本来であれば、利回りの高い有価証券で運用したほうが収益に貢献しますが、スライド右側の棒グラフにある国債残高や、折れ線グラフで示される平均デュレーションを見ると、過去に比べて低い水準が維持されています。

十川:おっしゃるとおりです。債券のほうが利回りは高いのですが、金利がさらに上昇すると、利回りが相対的に低い債券は含み損を抱えることになります。

そのため、私たちは長期金利の動向を注視しながら、国債の投資残高や期間を調整してきたというのが現在の状況です。

大槻:確かに長期金利が上昇しています。デュレーションは抑制的で、1年台を維持されています。

このように長期金利の動向次第では、先ほどの試算以上に金利上昇の効果を取り込める可能性があります。一方で、マイナスの影響はないのでしょうか?

十川:金融機関にとって、預金獲得の価値が高まるため、預金金利競争が激化する可能性はあります。ただ、結局競争の鍵となるのは、UI/UXやお客さまの利便性向上だと私たちは考えています。圧倒的な顧客基盤を維持するために、利便性の向上に引き続き取り組んでいます。

また、借入コストの上昇により与信費用が増加することを懸念する声もありますが、現時点では当社のポートフォリオに大きな変化は見られていません。

競合他社との差別化のポイントは、金利による収益だけでなく、手数料収益にもあると考えています。

A3-3 金利上昇効果だけに頼らない―強い手数料収益

十川:私たちは手数料収益をストック型とフロー型に分類しています。ストック型とは、日頃の資金決済や為替取引など、安定的な収益が見込まれるビジネスで得られる手数料収益です。この中でも、受託財産関連手数料は5年で1.7倍まで伸びています。

大槻:資産運用残高の積み上がりが、受託財産関連の手数料の伸びに表れていますね。

十川:また、M&Aや株式の売り出しのように、その時々のお客さまのアクションによって生まれるビジネスの収益をフロー型と呼んでいます。この中では、融資関連手数料が2020年度の2.2倍にまで成長しています。

この成長ドライバーが、PART2で触れたプロジェクトファイナンスやO&Dビジネスです。

大槻:ここからも、バランスシートの規模による金利収益の取り込みと手数料収益の伸びが、確実な利益成長につながっていることがわかります。これはMUFGならではの強みだと思います。

Q4 AIへの投資や、社内での取り組み状況は?

大槻:今後の競争力を測る観点から、AIの活用状況も気になるところです。MUFGのAIへの取り組みについて教えてください。

A4「あらゆる業務の中でAIが自然に活用される企業」へ

十川:私たちは「あらゆる業務の中でAIが自然に活用される企業」への変革をめざし、投資を行っています。そのため、さまざまなパートナーと協力しながら最先端のAI技術活用を取り入れています。

実際に、この中期経営計画の累計投資額は当初計画を大幅に上回り、600億円を超える見込みです。AIを業務で実装した件数は、2024年度および2025年度の累計で200件近く、2026年度分を含めると約400件を見込んでいます。これらAI活用による経済効果は400億円近くになると想定しています。

大槻:社内でも随分と活用が進んでいるのですね。

Q5 MUFGの預金獲得戦略は?

大槻:次はお客さまサービスでのAI活用と戦略についてうかがいたいと思います。AIやITの発展により、従来の競合他社だけでなく、ネット金融や他業種といった新たなライバルも増えています。

そのような中で、さらに国内の「金利のある世界」という経済環境のもと、顧客および預金獲得競争が激化しているとあらためて感じています。

こうした環境の中で、MUFGは今後どのようにテクノロジーを活用し、預金の獲得や維持を実現していくのでしょうか?

A5-1 リテール戦略の全体像―エムットのめざす姿

十川:預金獲得の土台となるのは、PART2でご説明した「エムット」です。スライド左側に記載されているように、ライフステージに応じた多様な金融サービスや、AIを中心とした最新テクノロジーで利便性を高めることで、顧客基盤の維持・拡大をめざしています。

また、スライド右側にあるとおり、若年層から富裕層まで、さまざまな需要にお応えしつつ、相続に至るまでをサポートすることで、1人の人生だけでなく、世代を超えた関係を構築していくことが重要だと考えています。

大槻:「エムット」の中には、それぞれのステージに合わせた施策やサービスが含まれているわけですね。

A5-2 エムットのステージに応じたサービス展開―長期的な関係の構築

十川:例えば、スライド左側に示しているのは、現在開発中の「MAP AI」というものです。お客さまの資産や取引の状況に応じてパーソナライズされた提案が可能になり、より身近な資産形成体験を提供できる仕組みです。

一定のお取引をいただいているお客さま向けには、預かり残高に連動したポイント還元が得られるカードや、銀行・信託・証券が一体となったアドバイスが可能なコンサルティングなど、ワンランク上のサービスが体験できる「エムット Excellent Club」も用意しています。

また、デジタルで相続の困りごとに応える「エムットそうぞく」もリリースを予定しています。「複雑な相続手続きに向けた備えを少しでもスムーズにしたい」という思いから、私たちの信託銀行が持つノウハウを最大限に活用したサービスです。

このように、お客さまのライフステージに寄り添いながら、MUFGならではの価値を提供し、長期的な関係を着実に築くことで、預金や運用資産の拡大を図っていきます。

また、「エムット」はまだ進化の途中であり、今後もさまざまなサービス展開を構想しています。ぜひ、今後の展開にご期待ください。

大槻:特に最後の「エムットそうぞく」に関しては非常に期待しています。金融機関のアプリはさまざまなものがありますが、相続に関する分野はそれほど強みがないように感じます。

相続は複雑なプロセスとなることが多いため、ネットやアプリの特性にそぐわない部分もこれまであったのだと思います。その点について、MUFGがどのような工夫をされていくのか、今後の展開を楽しみにしています。

Q6 成長を生み出すMUFGのチカラとは?

大槻:ではそのような仕組みで獲得した預金をはじめとするリソースや資本を、どのように配分して今後さらなる成長につなげていく方針なのかを教えてください。

A6-1 MUFGのチカラ ーそれぞれのポートフォリオが描く成長曲線、資源配分の方向性

十川:来年度から始まる次期中期経営計画については、現在議論を進めている最中です。そのため具体的な話はこれからとなりますが、大まかな方向性についてお話しします。

国内では成長投資や事業再編が続き、しばらくの間は資金需要の拡大が予想されます。トップバンクとして日本の成長を支えるべく、リソースを確保していく方針です。一方で、バランスシートや資本には制約がある状況です。

大槻:このような中で、拡大する貸出需要に対し、中長期的にはどのように対応していく予定でしょうか?

十川:今後数年間は、当社のバランスシートで資金需要に十分応えることが可能です。しかし、中長期的には、直接金融をはじめとする多様な資金循環を構築していく必要があると考えています。

日本では、市場慣行や規制などの課題が依然として多く残されています。しかし、海外でのO&Dビジネスや受託財産業務で得た知見やネットワークを活用し、マーケットリーダーとして新たな資金循環を構築していきたいと考えています。

大槻:確かに業界の今後をリードしていくという点で、トップバンクらしいお考えです。一方で、海外での資源配分についてはいかがですか?

十川:すでに海外ではO&Dが定着しつつあり、さらにその取り組みの裾野を広げていく方針です。O&Dでは組成したローンをすべて売却するのではなく、一部は保有するケースも多いため、取り組み件数の増加に伴い、貸出残高は緩やかに積み上がっていく見込みです。

大槻:アジアは中東情勢の影響で景気減速に直面していますが、この点についてはどう捉えていますか?

十川:確かにアジアの景気減速はリスクだと認識しています。しかし、中長期的に見ると成長が期待できる市場であることに変わりはないと考えています。国ごとに状況が異なるため、国別に戦略を進めていきます。

出資の採算性や当初描いていた戦略との整合性をモニタリングし、必要に応じて出資ポートフォリオの入れ替えも検討していきます。

このように、環境変化やビジネスチャンスを捉えながら、最適な資本配分を柔軟に行います。そして、それを支えることができるグローバルな事業ポートフォリオこそが、MUFGの持続的な成長を生み出す力です。

ここまでは財務資本に焦点を当てて話してきましたが、MUFGの経営資源はそれだけにとどまりません。

A6-2 MUFGの価値創造モデル

大槻:スライドはMUFGの価値創造モデルです。

十川:MUFGには、人材や長年培ってきた専門性、社会との信頼関係、さらには自然資本といった経営資源があります。

このような多様な資本を活用し、今回説明してきた成長戦略の進化だけでなく、気候変動への対応といった社会課題の解決、スピード改革やAI活用といった企業変革の加速に取り組んでいます。

これらの取り組みを通じて、利益などの経済価値だけでなく、社会・地域への貢献といった社会価値を生み出します。そして、その価値が新たな経営資源となり、新たな成長につながり、循環していきます。これがMUFGのめざす価値創造モデルです。

また、当社の強みであるグローバルな事業ポートフォリオがこの循環を支え、成長を加速させる重要な要素となっています。

大槻:短期的には今期、中期的には次期中期経営計画ももちろん重要ですが、MUFGの最大の価値は、長期的に循環的に成長し、それが社会とも連動して成長していく点にあると思います。

これまで得てきた資本をどのように株主をはじめとするあらゆるステークホルダーに還元しながら成長していくのかが、これからの企業価値につながっていくと考えています。

MUFGが何を強みとし、どのように企業価値を高めていこうとしているのか、その全体像がよく理解できました。

MUFG Report 統合報告書

十川:これらの内容は、7月末に発刊した統合報告書「MUFGレポート2026」に掲載しています。マネジメントのトップメッセージや、今回お話ししたMUFGの「強み」や、MUFGが「めざす姿」に加えて、AIに関する取り組み、社会課題の解決、ガバナンスなど、非財務分野についても充実させています。

今回撮影をサポートしていただいているログミーさんのご協力のもと、このレポートの紹介動画も公開しています。ダイジェスト版となっていますので、ぜひご覧ください。

大槻:統合報告書といえば、御社は昨年「第5回日経統合報告書アワード」なども受賞されており、非常にわかりやすいと定評があります。

投資家やその他の多様なステークホルダーの方々にとって、MUFGの現在地や将来の方向性を理解するためにも要チェックだと思います。

十川:実感を伴ってMUFGを知っていただくための資料となっていますので、ぜひご覧ください。

総括

大槻:現在、金利上昇で注目を集めている金融株ですが、それだけにとどまらず、成長の種が多岐にわたって存在することがよくわかりました。

日本と世界の成長とともに、金融業界の存在感が高まっている中で、他行とは異なる成長パスを歩んできたMUFGの強みや、今後の進化の可能性についてよく理解できました。

個人的には、メインバンクである三菱UFJ銀行や、東証プライムトップクラスのMUFG株が選ばれている理由をあらためて実感できましたし、今後さらなる成長が期待できると感じました。

もちろんこれは、今後のさまざまな環境やMUFGの一層の努力次第ではありますが、これからも注目していきたいと思います。

十川:少しでもMUFGの成長の力強さを感じていただき、短期ではなく中長期的に成長を遂げる銘柄だと思っていただけましたら幸いです。

株主・投資家のみなさまのご意見に耳を傾け、成長を続けていきたいと考えています。ステークホルダーのみなさまの一層のご理解とご支援をよろしくお願いします。

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