■SOLIZE Holdingsの中長期の成長戦略
2. 成長戦略
持株会社体制の下では、収益事業の利益を基に新事業及び新会社を創り、価値を生み出す企業体を構築する。すなわち、グループ本社は企業体の収益と投資の総和をマネジメントし、傘下の中核事業会社では収益の基盤を作り、その利益を基に投資して新たな事業と企業を創る計画である。3つの中核事業会社に分けたのは、従来の一体化で行う意思決定スタイルではなく、それぞれが自主的・自律的に安定した利益を上げることができる事業やブランドを作り、そのなかで上げた収益を新しい領域に投資していくためである。それぞれの中核事業会社が、遠心力を利かせて成長を加速させることを目指している。一方、持株会社は、コーポレート機能をしっかりと果たしながら、投資戦略と人財戦略の2つの戦略で、中核事業会社の成長を加速させることが大きな役割である。このように、持株会社体制により、事業戦略・投資戦略・人財戦略を組み合わせて、グループの成長を推進する。事業戦略(ケイパビリティの拡張を中心に、産業・市場及び地域を拡張)と、それを支える投資戦略と人財戦略を組み合わせることで、中長期の成長目標を達成する計画である。
成長戦略の達成に向けて、中核事業会社がグループ全体として取り組む事業戦略と、持株会社による投資戦略・人財戦略は以下のとおりである。
(1) ケイパビリティの拡張
事業戦略のカギとなる中心的な要素はケイパビリティの拡張である。従来のケイパビリティの掛け合わせにより、開発工程における対象プロセスを拡張するとともに、領域を拡張することで、新規ケイパビリティを獲得する。
1990年代から2000年代にかけては、従来の事業範囲である設計・解析・生産準備の、すなわち試作品の提供を本業としてきた。2010年代に入ると、ものづくりのデジタル化が進展するなかで、事業の拡張を進めた。2020年代に入り、事業戦略の一環としてケイパビリティの拡張を進めている。上流領域では、3Dプリンターが顧客のPoC(Proof of Concept:概念実証)に相性が良いことから、これまで聖域であった顧客の研究開発領域に同社が参入することが可能になった。また、下流領域では、技術革新が進む3Dプリンティングにおいて、試作品ではなく量産品としての製造が可能となっている。この分野では、品質基準の厳しいトヨタ自動車から国内で初めて認証を受け、「LEXUS LC500」の純正オプション部品の量産を開始した。このように対象プロセスの拡張を1つの戦略として掲げている。
従来、対象プロセスはハードウェア領域を中心に進めてきたが、ものづくりのデジタル化によりソフトウェア領域の拡張が進むなか、同社も2010年代からモデルベース開発の領域に参入している。2020年以降は、ソフトウェアでは組み込み系ソフトウェア開発やデジタルリスクマネジメント、サイバーセキュリティといった領域にも事業ドメインを拡張している。
主な取り組み実績としては、2025年12月期には、プロセスの拡張では自動車向けの少量量産部品の受注増加、領域の拡張ではSDV、サイバーセキュリティ領域での受注拡大、ソフトウェア事業を展開するSTELAQの事業成長などがある。
2026年12月期中間期には、コンサルティング・エンジニアリング事業において、MBD※1サービスからSDVにコンセプトを変更し、上流工程からのコンサルティングによって、より大型プロジェクトが可能になった。また、AIの進展に伴いSpectA KY-Tool(スペクタ ケーワイツール)※2も順調で、自動車業界だけでなく建設業界でも対応が可能になっている。
※1 Model Based Development:PC上でシミュレーションしながら設計・検証する開発手法。
※2 同社独自の自然言語処理AI「Aspect Engine(R)」を搭載した危険予知支援ツール。
(2) 産業・市場の拡張
自動車業界において、従来のケイパビリティの掛け合わせによる拡張と新規ケイパビリティの獲得による拡張を図るとともに、このスキームをほかの産業・市場に拡張する。
同社はこれまで自動車産業を中心にサービスを提供してきたが、ケイパビリティの拡張を踏まえ、今後さらに成長が見込まれる分野として、防衛を含む重工業、エネルギー、AI、航空宇宙といった新たな成長産業及びマーケットに対して、事業領域を拡張する。
主な取り組み実績としては、2025年12月期には産業の拡張として重工業企業からの変革コンサルティング案件増加、電機・防衛企業からのソフトウェア開発案件が増加した。また、市場の拡張として二輪車領域の受託開発が拡大、レース分野での3Dプリンティングサービスを展開した。さらに2026年12月期中間期には、重工業系で大きなプロジェクトを受注している。また、電気業界に関連して、ソフトウェア系からの受注があった。
(3) 地域の拡張
グローバルでは、成長率の高いインドやASEAN地域、今後さらなる需要が見込まれる北米におけるビジネスを拡張し、国内においても拠点とエリアを拡張する。
地域の拡張については、これまで海外拠点として米国、インド、中国の3拠点を有していたが、北米市場をさらに重視する戦略の一環として、2025年にカナダ企業の事業をM&Aした。さらに、自動車産業において東南アジアで非常に重要な役割を果たすタイへ進出するなど、北米やアジアにおけるケイパビリティの拡張を図りながら、積極的に地域展開を進めている。
主な取り組み実績としては、2025年12月期には国内の拡張としてフューレックスにおける東海地域での車載関連制御・組み込みやソフトウェア開発サービスの提供、海外の拡張として北米市場の拡張に向けたカナダ法人の設立やASEAN地域におけるさらなる展開のためのタイ法人の設立などが挙げられる。2026年12月期中間期には、インドにおいてソフトウェア販売が伸びた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)