■事業概要
3. エナジートレーディング事業
エナジートレーディング事業では、GXソリューション事業で発生する余剰電力や、相対契約・(一社)日本卸電力取引所(以下、JEPX)から調達した電力を、特別高圧・高圧・低圧のすべての電圧区分において、法人から家庭まで幅広い需要家に小売販売している。2025年7月には、電力シェアリングの新サービスとして、余剰電力を集約して地域内の他の施設などへ長期にわたって供給する「循環型電力」を開始した。これにより、構造上の理由や賃貸条件などにより太陽光パネルの設置が困難な施設に対しても、設置工事不要・最短2ヶ月で再エネを導入することが可能になった。また、2026年2月より、余剰電力を活用した土日昼間ゼロ円の家庭向け新プラン「スマ電ウィークエンドゼロ」の提供を開始した。こうしたGXソリューション事業との連携を生かしたサービス展開によって、同事業の成長を追求していく方針である。
AIプラットフォームが最大の強み
4. アイ・グリッド・ソリューションズの強み
前提として、余剰電力を他施設へ融通するには送配電網を介して電力を流す必要がある。その際、同社のような電力事業者は、電力の需給をあわせるため、地域ごとかつ30分単位で翌日の供給予定量を送配電事業者に事前通告しなければならない。実際の需給に差分が生じると、差分に応じて「インバランス料金」というペナルティを支払う必要があるからである。このため、発生する余剰電力、つまり送配電網に流す電力量を精緻に見積もることが不可欠である。ところが、オンサイトソーラーを設置する施設の規模、日照条件、電力需要パターンなどはそれぞれの施設で異なるうえ、天候は刻々と変化する。全施設の需要と発電量、余剰電力量をリアルタイムかつ個別に予測することは、固定的なアルゴリズムでは極めて難しい。そこで同社は、各施設や設備に設置されたエッジ端末とAIモデルで構成される独自のAIプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform」を開発し、こうした技術的課題に対応している。
「R.E.A.L. New Energy Platform」では、エッジ端末が様々な機器から発電量や使用量などをリアルタイムで収集し、施設ごとに個別に割り当てられたAIモデルがこれらのデータなどから需要と発電量を予測している。新しい施設の場合は、類似施設のAIモデルから支援を受けつつ精度を高めていく。加えて、予測データを基に送配電事業者に通告する余剰計画の作成や、各施設の太陽光発電状況の監視、収支管理、請求書作成などを行う業務アプリケーションと、各施設データの可視化やダウンロード、蓄電池や空調の制御機能を提供する顧客向けアプリケーションも開発し、利用シーンや利用者に応じて提供している。「R.E.A.L. New Energy Platform」は、過去約20年間にわたり8,000以上の施設で蓄積した電力使用量のビッグデータと、省エネSaaSを展開してきたノウハウを基礎に開発され、さらに日々進化を続けているため、他社では模倣が難しい同社最大の強みである。
ビジネスモデル自体も強みである。同社は「R.E.A.L. New Energy Platform」を中核に、多数の再エネ発電所と需要家をつなぐネットワークを有し、太陽光、蓄電池、EV充電、エネルギーマネジメント、電力供給など多岐にわたるGXの統合管理や、顧客料金管理など電力売買に関する機能、施設の遠隔モニタリングなどのサービスを提供している。発電所だけ、需要家だけ、ソフトウェアだけのビジネスモデルではないため、余剰電力循環スキームや「循環型電力」の供給といったユニークなサービスも開発してきた。また、電力を創るGXソリューション事業と余剰電力を循環させるエナジートレーディング事業という両輪が、相互にシナジーを創出できる点も強みである。このほか、設置から管理・運営までのワンストップサービス、顧客に投資負担を強いない点、サービスラインナップの充実によりバランスシートを制約とせずに成長と高収益を得られること、法人向けオンサイトPPAで国内トップの実績を持つこと、設置制約がありFITに依存しがちなメガソーラーとの違いも、ビジネスモデルを背景とした強みといえる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)