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いつか来る「出口戦略」のことを忘れてはならない!そのとき市場はどうなる?

対外の問題は様々ありますが、現在の日本経済は堅調に推移しています。そんな中、投機家で大学教授の山崎和邦氏は、「出口戦略」という量的緩和の停止がいつかは来る、そのことを忘れてはならない、と警鐘を鳴らしています。

「出口戦略」を考えるのは今ではないが……

日本の国債は95%までを日本人(主に日本の銀行)が持っているから日本人が自ら国債を売って下げさせて、自分の首を自分で占めるような愚行は決してしない。ゆえに日本国債の暴落はない、という説がある。これは(愛国心)と言う「感情」と(損得)という「勘定」とを混同させてしまった謬論である。資本市場には株であれ債権であれ為替であれ、損得があって善悪はない。法律と契約さえ守っていれば強弱・大小はあっても倫理非倫理はない。

背に腹は替えられないとなれば背も腹も食ってしまうものだ。

その実例は1987年、バブル相場の6合目、タテホ化学工業が債券投資に大失敗したことが明るみに出て債権価格が急落した。その際に売ったのは日本の国債保有者だった。我々はタテホの株価を見ていれば債券相場の落ち着き方が推測できるとまで語り合った。

他にこういう例もあった。98年の12月、宮澤蔵相が大蔵省の資金運用部が国債買入れを停止すると認めたと伝わり、国債相場が急落した。株式相場も急落し、円も急落し「日本国そのものが売られているのだ」と言われた。その時に売ったのは海外投資家もいたが主として国内投資家だった。これには大蔵・日銀は大いに慌てて資金運用部の国債買い入れを翌年2、3月から再開せねばならなかった。

従来はインフレ対策には公定歩合・売りオペ・窓口規制があった。いまはゼロ金利だから効かない。量的緩和だから幾らでも札束は世間に出まわっている。では、「出口戦略」という量的緩和の停止は出来るのか、誰にも答えはない。今、それを考えるのは時期尚早だというのは筆者も賛成だが、では、いつ考えるのか?「今はその時期ではない」を繰り返すことに「本当はないのではないのか」と皆が気がつく日が来る。「異次元」の量的緩和を続けねばならない黒田総裁の宿命は如何なる結末が待っているのだろうか?

Next: いつの日か量的緩和をやめねばならぬ時が来る




平成バブル抑止は打つ手が遅かったしオーバーキルだったとはいえ、通常の金融引き締めという手があった。異次元の現在には通常の引き締めのブレーキがない。銀行間にカネが潤沢にあるから日銀がいくらおカネの量を絞っても金利は動かない。銀行に余っている資金を吸収して量的緩和以前の状態に戻さねば日銀は市場を誘導できない。嘗て日銀が自在に市中金利を動かせ得たのは銀行間市場で流通している資金の需給が概ね均等だったからである。

よって、異次元量的緩和という「通常なら禁じ手とされてきたカード」を切ってしまった以上は利上げは簡単にはできない。出口戦略なんて誰にもわかってはいないのだ、と言える。現にR・クー氏の言うには(2カ月前のことだったが)「出口戦略についての論文は世界に一本もない」のだそうだ。

この言い分は、かの“過激発言”と“伝説のディーラーで鳴らしてきた”と自称する藤巻健史氏と概ね同一軌道にある、と言わねばならない。

一方、日銀の日本株購入は昨年下期の約2倍の1.7兆円弱になるから、海外投資家に次ぐ大手買い手になった。日銀の存在感が強まれば既報で述べてきた「官製カンヌキ相場」の要素を強め、将来、日銀が「出口」に向かえば従来の買い勢力は売却勢力に変化するのか、少なくも買い入れ減額には間違いなくなるから市場の波乱要因にはなる。「今はそれを考える時期ではない」という意見には筆者も賛同するが、我々は「いつの日かには必ず来る」ということだけは脳裡に置いておくべきであろう。

山崎和邦 週報「投機の流儀」』(2015年7月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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