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「夢よもう一度」の老年期相場、まずは19200~19400円の窓埋めが焦点=山崎和邦

ECBドラギ総裁の追加緩和示唆をキッカケに、前週末から今週初めの株価は大幅高となっています。そこで今回は特別編として、好評配信中の有料メルマガ『投機の流儀』最新号より、「夢よ、もう一度」の老年期相場(金融相場)における上値メドの考え方を、山崎和邦氏が解説します。

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.177 2015/10/25号より、マネーボイス編集部にて再構成

「老年期相場は壮年期の高値を抜かない」が、さて今回は?

週末の大幅高は安心できる上げ方ではない

日・欧・米が共に金融相場の様相を強めた。これは老年期相場の特徴でもある。世界景気の失速懸念を金融相場で「夢よ、もう一度」というのが老年期相場である。

米利上げ延期、22日のECBの定例理事会後の記者会見で、ドラギ総裁が12月会合で追加緩和に踏み切ると示唆し(「ドラギマジック」などと呼ぶ筋もある)、週末前日のNYが320ドル高をしたことを受けて売り方の買い戻しが主導する週末高となった。売買代金は2兆6千億円だから大きな活況状態とは言えない。

完全に売り方の「踏み上げ」が主導した相場だろう。

8月28日の戻り高値のTOPIXを見ると1,555ポイント、週末前場の高値が1,553ポイントだ。因縁場に来た。また、21日高値が18,706円で23日安値が18,747円だから、この間に41円幅の小さな窓がある。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

良く見て、この上は本稿で既述してきた19,200円と19,400円との窓埋めであろう。その区間に75日線と200日線がある。

週末は穏やかな高値引け、一定の上昇力はありか

23日の夜に中国が追加緩和を発表して、NYも続伸し、日経先物は夜間取引で19,000円台に乗せた。その後には75日線が19,163円、200日線が19,166円と横たわり、これが上値抵抗線となるか一挙に抜けて下値支持線になるかというところだが、出来高と売買代金から判断するしかない。

週末のように派手に上げても売買代金が3兆円に届かないようでは「金融緩和に頼った相場は短命に終わる」と言うジンクスのほうが優先しそうではある。

ところが、9月は週末に反発して高値引けすると翌週はロクなことはなかったということが2度あってジンクス化する恐れがあったのだが、週末は高値引けでなく穏やかに引けた。ゆえに上昇余力ありと見る。

Next: ボックスの上限はどこか?カラ売り筋は苦しいものの――


山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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ボックスの上限はどこか?カラ売り筋は苦しいものの――

東証1部の騰落レシオは最近上昇傾向だったが、今週は130%台には達するだろう。

このところ、騰落レシオ140%台に乗せて一見「超過熱圏」まで上昇すると、そこから日経平均は最大1ヶ月間程度は堅調を維持する傾向があった。しかも、その期間が一番儲かった。

今回は12月3日にECBが追加緩和をする公算なので、カラ売り筋の進撃は難しい。よって12月初旬まで株価堅調との見方は十分可能だろう。

NY株は、見方によってはW底を形成したかにも見え、これがボックスを上抜けていくと見れば、日本株はボックス圏内としても上限一杯まで粘る可能性がある。

19,000円と2万円との間は滞在日数が少なく出来高累計は薄いので戻り売りは少ないが、いわゆる大天井を付けた可能性の高い相場の上限は前ページの前半でも述べた19,200円と19,400円との窓埋め程度のものであろう。

ただし、この水準からのカラ売りはない

アベノミクス相場が日柄の関係もあって、いわば“賞味期限切れ”となり、株式相場はそれを先取りして大天井を打った可能性を本稿で繰り返して述べてきたが、「老年期相場」がもう一幕ある可能性もある。

普通は老年期相場は壮年期の高値を抜かないものだが、直近の実例では2007年7月に壮年期の高値を少々ながら抜き、郵政選挙相場として大いに活況を呈したケースがあった。

では、その老年期相場が大相場になる可能性の契機は何か。その一つは、以下のような形になって、世界株式市場が「全体として」老年期相場を迎える可能性である。

  1. イエレンさんありがとう!利上げ延期の間に一稼ぎ
  2. ドラギさんありがとう!これを機会に一稼ぎ
  3. 中国蹉跌よありがとう!中国停滞が世界相場に一息入れて反落させてくれたから次の飛躍のバネにできる

大相場はすべて政策と一体だったと本稿で何度も述べてきた。日本だけが一大政策を打って出ても一国だけでは知れている。しかし世界市場全体で同様の動き、特にNYの動きが新規に出てくれば、別の局面が展開される可能性も無いとは言えないのである。

ゆえに、この戻りが所詮は中間反騰と見ても、ここからのカラ売りは筆者ならやらない。

Next: 市場で注目されなかった「大事件」も頭の片隅に


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市場で注目されなかった「大事件」も頭の片隅に

週末の大幅高の前までは、まったく風景は違っていた。

政府が10月の景気判断となる月例経済報告を1年ぶりに引き下げた。これは市場では大騒ぎされなかったが、実は大変大きな事件である。

この報告は55年前から当代一級のエコノミストが集結していた経済企画庁(いまは内閣府の一部)がとりまとめるもの。世界に信用のある景気指標に基づき、その文言を一言一句精査して決めるものである。

もうじき選挙があるからとか、政権支持率のためにとかでさじ加減できる性質のものではない。IMFからもOECDからも信任されている、世界に冠たる折り紙付きの景気指標である。

これによる景気判断を見て失望した海外勢が利食い売りに走っていたと思われる。8月11日に中国人民元の切り下げ以降、世界は大きく下げてその一巡後の戻りに挑戦しているところだが、欧米と比べても日本市場の戻りが一番悪い。

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【関連】私の見た「幸福な富裕者と不幸な富裕者」その決定的違い(前編)=山崎和邦

山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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