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Chatrawee Wiratgasem/Shutterstock

【海外邦人の安全性】かつて「金だけ出せ」と言われた日本のPKO活動、残された道は?

かつて国連PKO局で「中途半端に自衛隊に出てこられると足手まとい、資金だけ出してくれ」と言い放たれた経験を持つ軍事アナリストの小川和久さん。国際平和の実現にアテにされる国となってこそ日本の安全が確保されるのであって、真価が問われているのはPKOなど国際平和協力活動だと言います。

日本の真価はPKOで問われる

『NEWSを疑え!』第379号より一部抜粋

昨年7月1日の集団的自衛権の限定行使容認の閣議決定を受けて、安全保障法制の整備が着々と進んでいます。

例えば、次の新聞記事(3月14日付け産経新聞)が伝えているような具合です。

「政府は13日、自民、公明両党による安全保障法制に関する与党協議で、関連法案の全体像を示した。国際社会の平和と安全の確保に寄与する他国軍支援を可能にする新法については、自衛隊派遣の条件として2基準を提示した。国連平和維持活動(PKO)で任務遂行型の武器使用が可能になったことを踏まえ『PKO参加5原則』の改正案も示した。(中略)

自衛隊を海外派遣する際の国会の関与に関しては、新法に基づく他国軍支援では『事前に国会承認を得ることを基本』とし、改正PKO協力法では治安維持や停戦監視を行う場合は原則、事前承認とした。PKO参加5原則の改正は自己保存型の武器使用だけではなく『受け入れ同意が安定的に維持されている場合』には任務遂行型も容認。人道復興支援活動などPKOの枠外の活動のために定める5原則でも同様に記述する」

この記事を読みながら、頭の中に蘇ってきた言葉を追い払うことができませんでした。2010年2月から4月にかけて、平和構築の調査研究のためにオーストラリアと米国の専門家から聞き取りを行ったとき、国連PKO局で聞かされた言葉です。

「中途半端な形でPKOに自衛隊を派遣するくらいなら、足手まといになるだけだからやめてもらいたい。いっそのこと、一人も派遣しなくても良いから資金面で貢献してほしい。そのほうが、はるかに役に立ちます」

第一線で活動する自衛隊に対する評価は非常に高いものがありましたが、日本のPKOへの取り組みについては、このように見られてきたのです。

適切なタイミングに必要なことをできなければ、危機管理もPKOも落第点です。そのためには、恒久法を制定し、武器の使用基準も適切なものを定め、必要な部隊と装備と輸送手段を準備し、ただちに投入できるようにしておく必要があります。

上の新聞記事にあるような「改正PKO協力法では治安維持や停戦監視を行う場合は原則、事前承認」という部分も、どれくらいスピーディーに国会の承認手続きを済ませることができるかが問われていることは言うまでもありません。

国際平和の実現にとって、アテにできる存在であるのかどうか。その取り組みの姿が日本への国際的な信頼を高め、めぐりめぐって日本の安全を確かなものにするのです。

同盟国などとの足並みを揃えて行う集団的自衛権の行使に関わる諸課題にもまして、日本の真価が問われているのはPKOなど国際平和協力活動のほうだということを忘れないで、しっかりとした安保法制の整備を進めてほしいと思います。

 

『NEWSを疑え!』第379号より一部抜粋

【第37号の目次】
◎テクノ・アイ(Techno Eye)
・グローバルホークの新たな能力
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)
◎編集後記
・日本の真価はPKOで問われる(小川和久)

著者/小川和久(軍事アナリスト)

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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