会いにいけるオバアも今年の8月まで。消え行く昭和の沖縄を探訪

2015.04.01
by kousei_saho
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毎回沖縄のディープスポットをご紹介してくださる宜野湾在住の写真家・伊波一志さん。今回は、今年8月に取り壊しが始まる那覇市の農連市場を訪ねます。昭和の匂いが色濃く残る農連市場に、オバアたちに会いに出かけてみましょうか。

農連市場(農連中央市場事業協同組合) 那覇市樋川

今やおびただしい数の土産物屋が乱立する国際通り。その国際通りにある那覇OPA(ショッピングセンター、現ドン・キホーテ)から市場本通りというアーケード街に入って行くと100mほどで有名な牧志公設市場があります。

ただ、今回ご紹介したいのは、さらにアーケードを突っ切った先、南側一帯の樋川地区にある農連市場です。ここは戦後のバラック市場がそのまま残るディープな場所。沖縄が日本の南端ではなく東南アジアの北端であることを強く意識させられます。僕が記憶する3、40年前の濃密でまったりとした沖縄カジャー(におい)を残している数少ない場所と言っていいかもしれません。

国際通り、那覇OPA(現ドン・キホーテ)

国際通り、那覇OPA(現ドン・キホーテ)

農連市場は、1953年に開設されて以来、ほとんどの店は開設当時のまま、屋根のほかには何もないところで商いをしています。戦後から全く変わらず続けられている市場は、セリではなく、生産者と直接交渉して値段を決める「相対売り」の制度を取っているとのこと。スタイルがゆるくて、本当に沖縄らしいと思います。

活気のピークは午前3時から6時くらいまでだそうですが、僕がうかがった午前10時くらいもいいかもしれないですよ。なぜなら、残っているオバアたちがのんびりユンタク(おしゃべり)していて話しかけやすい時間帯だから。おもしろい話が聞けるかもしれません。

農連市場建物内部

農連市場建物内部

ところで、1953年からそのまま使用しているという木造・トタン屋根建築の市場建物は、琉球大学建築科の学生たちが見学に訪れるほどレアな歴史的建造物だそうです。ただし、かなり木造建物の老朽化が進んでいることから、残念なことにこの農連市場、近年中に取り壊され再開発される予定だそう。新しく建設される大きな建物には、農連市場のほかに商業施設やホテル、大規模な駐車場などが入る予定だとか。

諸々の事情はもちろんあるのでしょうが、この風景が消えてしまうのかと思うと、とてつもなくさびしいですね。何かまた大切なものを失ってしまうような気がします。さあ、この雰囲気が味わえるのもあとわずかかもしれません。

市場建物外観と傍を流れるガーブ川

市場建物外観と傍を流れるガーブ川

戦後の激動を生き抜いてきた建物と沖縄のオバアたちに会いに、農連市場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

iha伊波 一志(いは かずし)

1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

 

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