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外国人から日本人へ。景気の調整弁として利用される「派遣」の闇

世界的に移民・難民問題が取りざたされるなか、日本は不法就労の外国人労働者をいわゆる「景気の調整弁」として利用してきた歴史があります。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ』は、外国人労働者を使い勝手よく利用してきたこのノウハウが、大量解雇などの問題を抱える今の派遣システムの原型になったのではないか、との持論を展開しています。

移民・難民と外国人労働者

私は日系ブラジル人が大量に「受け入れ」られていた頃、外国人をテーマにいくつか取材を経験しました。単純労働に従事する外国人労働者法的に拒否し続けている日本は、「労働鎖国」などと揶揄されることがあります。その日本は、実際には、欺瞞的なやり方で外国人労働者を便利に使ってきたのです。

人手が不足していた時期、一定範囲の日系人は入管法改正によって、日本国内でどんな仕事にも就ける地位を付与され、派遣会社の手によって各地の自動車工場、家電工場などに送り込まれていきました。その数、30万人以上。他方、就労可能なビザを取得できない大多数の外国人は、短期滞在で来日してはオーバーステイとなり、買いたたかれて3K職場に吸い込まれていったようです。

当時、外国人労働者を受け入れる方向に政策転換するか否かについて、それなりに活発な論議も行われました。労働省(当時)関連のシンクタンクは、どのような形で移民労働者を受け入れれば日本社会にとってプラスになるかを研究して、独身かせいぜいカップルまででなければ、逆に社会的費用がかさむというような、冷徹な「計算」を行っていました。子どもが生まれれば教育や福祉の対象として「金が掛かってしまう」から元も子もないという話だったのです。要は、奴隷的な労働者が欲しかっただけで、「同じ社会のメンバー」を求めていたわけではなかったのです。結局、人手不足が緩和されるのと機を一に、議論自体、しぼんでいきました。

そもそも、企業にとって「不法就労」の外国人は実に有り難い存在で、低賃金で働かせることができ、多すぎたりトラブルが多発したりすれば入管当局が取り締まるにまかせ、強制送還させればいいと考えている。よく、皮肉を込めて「景気の調節弁」などと称されました。今では、非正規雇用の労働者一般がそのように呼ばれることがありますが、最も立場の弱い労働者群が、最も使い勝手がよいという意味で、不法就労外国人は、最高の調整弁だったのです。なにしろ、違法な存在なので、いつでも捕まえることができ、母国に送り返してしまえば後腐れがない。

派遣会社を通して製造業の現場で働いていた日系人たちも、また「景気の調節弁」としか言いようのない立場でした。需要の変化に応じて、一定期間だけ、一定の人数を送り込んでくれる派遣会社のノウハウは、このときに築かれたものと私は思っています。その後、日系人の数は減りましたが、そこに日本人の労働者が入り込み、製造業派遣や構内下請け作業の形でラインにつくようになっています。リーマンショック後の激しい「派遣切り」で分かるように、派遣会社との契約を解除するだけで、事実上、まとめて解雇することが可能です。これぞ究極の「景気調節弁」として今も機能している。日系人を利用する過程で作り上げたノウハウが、今の派遣システムの原型になったと私は考えています。派遣についてはまた別の機会にでも。

image by Alf Ribeiro / Shutterstock.com

 

uttiiの電子版ウォッチ

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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