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世界史に残る2015年。米中冷戦の幕開けに、日本はどう生き残る?

バブル崩壊から25年。これまでの日本は、長く暗いトンネルの中にいたかのような状態でした。アメリカの凋落、中国の台頭など、世界情勢でもさまざまな問題が起こっています。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者である北野幸伯さんは、AIIB事件後、日本政府の対応が日米関係に光を与え、2015年に日本の未来は「希望」が見えるようになった、と語っています。その理由について、過去の世界情勢などを交えながらわかりやすく解説しています。

2015年、日本の未来に希望がもてるようになりました

前号では、2015年を振り返りました。

まだの方は、まず前号をご一読ください。

米国が「中国打倒」を決意した2015年。これから世界はどう変わるか?

「まとめ」として、次のように書きました。

2015年、

1.ウクライナ問題は事実上消滅した。

2.アメリカは、ロシアと和解しはじめた。

3.アメリカは、中東への関与を減らし始めた。

4.アメリカは、中国打倒を目指し始めた。

こんな感じでしょうか。

一言で、「2015年は、歴史的視点でみるとどんな年ですか?」と聞かれれば、私は、「アメリカが、中国打倒を決意した年である」と答えるでしょう。

世界は、こんな年だった。日本にとっては、どうなのでしょうか?

7年間の苦悩

今から11年前の04年秋、私は1冊目の著書「ボロボロになった覇権国家」を執筆していました。書きながらはっきりわかったのは、「アメリカの没落は近い」ということです。

05年1月にこの本が出版されたとき、「アメリカ没落」を本気で信じた人はいなかったと思います。しかし、わずか3年後の08年、それは起こってしまったのです。

08年、私は3冊目の本「隷属国家日本の岐路」を出版しました。この本は、08年9月4日に発売になりました。その11日後の9月15日、「リーマンショック」が起こり、世界は「100年に1度の大不況」に突入していきます。「タイミングがすごいですね」とほめられました。

ちなみにこの本の副題は、「今度は中国の天領になるのか?」です。

本全体は、「日本の改革」に関するもの。しかし、日本と世界の未来について重要な予測を書いていました。

1.アメリカは没落し、中国は浮上する

2.アメリカの没落は、日本に自立のチャンスを与える

3.しかし日本は自立を目指さず、中国への依存を深めるだろう

実際、この本が出た1年後、日本には親中民主党政権が誕生しました。鳩山政権最大の実力者・小沢さんは、「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!!!」と世界に宣言するほど、親中でした。

4.尖閣から日中対立が激化するであろう

事実、10年9月「尖閣中国漁船衝突事件」が起こり、日中関係は悪化。12年9月、日本政府が尖閣を国有化すると、両国関係は「戦後最悪」になってしまいます。

私は9年、10年、11年と本を出版しませんでした。そして、予想通りに起こってきた、

・アメリカ没落

・中国浮上

・親中政権の誕生

・日米関係の破壊

・尖閣問題と日中対立

などなどを、悲しみながら見ていました。


12年11月になると、さらに苦しみが増していきます。それは、中国の「反日統一共同戦線戦略を知ったからです。その骨子は、

1.中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくろう!

2.中ロ韓は、一体化して、日本の領土要求を断念させよう! 日本に「沖縄」の「領有権」はない!!!

3.「アメリカ」を「反日統一共同戦線」に引き入れよう

詳細はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

私はこれを読んだ時、「嗚呼、中国は戦争をはじめた」と思いました。毎回書いていますが、実際の「戦闘」だけが戦争ではありません。まず「情報戦」からはじまるのです。

「情報戦」の目的は、

1.敵国を悪魔化する

2.敵国を世界的に孤立させる

3.実際の戦闘が起こったとき、誰も敵国を助けない状況をつくりだす

です。

中国は、まさにその如く動いている。そして2013年、安倍総理は、進んで「中国の罠」にはまっていくように見えました。

非常に危機的な状況でしたが、2014年にロシアがクリミアを併合すると、「日本を世界的に孤立させる」という中国の戦略は挫折します(ロシアに制裁するため、アメリカは日本と和解した)。 

久しぶりに見えてきた「希望」

というわけで、私は08年以降、特に12年11月から、日本のことを思うとナーバスになることが多かったのです。メルマガ読者さんからも、「最近のメルマガはまじめすぎます!」「昔のように(^∇^)を多用したり、ギャグをいれてくさだい!」などといわれました。

しかし、2015年末、私は久しぶりに、日本の未来に希望を見出しています。なぜでしょうか?

1.アメリカが、「最大の敵は中国である」ことを認識しはじめた

中国が主導する「反日統一共同戦線」。その重要な柱は、「アメリカを反日統一共同戦線に引き入れる」です。つまり、「日米を分断する」こと。そして、日本の陰謀論者が恐れているように、「米中一体化して日本を叩きつぶす」こと。

【参考】まるで孔明の罠。習近平が「反日戦略」を方向転換してきたワケ

しかし、この戦略は2015年、かなり挫折しました。アメリカは、日本ではなく、中国が「最大の敵」と認識しはじめた。

【参考】南シナ海作戦はほんの序章。アメリカは2つの「戦争」を中国にしかける

そのこと、この本を読めば、はっきりくっきりわかります。

「China2049」

【参考】アメリカが「中国打倒」を決意。南シナ海の自由航海で見えたもの

まだの方は、年末年始に是非ご一読ください。

なぜ、アメリカは、「最大の敵は中国」と認識したのか? そう、3月の「AIIB事件」です(「China2049」は、アメリカで2月に発売になっています。つまり、CIA、国防総省の高官は、AIIB事件前から「中国こそ最大の脅威」と認識していた。しかし、オバマ政権が気づいたきっかけは、AIIB事件でした)。

2.日米関係が劇的に改善された

日米関係は、(日本の)民主党政権時代ボロボロになりました。親米自民党・安倍内閣になっても、中国の反日プロパガンダがアメリカに浸透し、「冷たい関係」がつづいていた。

14年、アメリカは、クリミアを併合したロシアに対抗するため、安倍総理と和解。しかし、それほど愛に満ちた関係とはいえませんでした。

15年、日米関係は劇的に改善されます。「AIIB事件」で、親米諸国に裏切られたアメリカ。唯一、アメリカを裏切らなかったのが日本だった。

そして、4月29日、安倍総理の「希望の同盟」演説。オバマさんは歓喜し、「歴史的訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固だったことはない!」とツイートしました。2013年末年始とは、全然違いますね。

その後も安倍総理は、アメリカへの接近をつづけます。

・安倍談話

・安保関連法成立

・TPP(私はTPPに反対ですが)

毎回書いていますが、「日米同盟が強固であれば、中国尖閣沖縄奪えません。 

3.中国経済が崩壊しはじめた

これ、一般的には、「悲しいできごと」と認識されるでしょう。なぜなら、中国経済の悪化は、世界と日本経済にネガティブな影響を与えるからです。そして、実際、悪影響が出てきています。

しかし、「日本には沖縄の領有権はない!」「反日統一共同戦線をつくる!」と宣言している国が、隆々と栄えるほうがもっと恐ろしいです。中国経済が、アメリカを軽く凌駕するような状況になれば、中国は、遠慮なく沖縄を奪いにくるでしょう。なんといっても彼らの認識は、「沖縄は中国固有の領土」なのですから。

4.中国から日本企業が「帰国」しはじめた

【参考】ある理由で中国から逃げ出した日本の大企業一覧

「沈みゆくタイタニック」と認識されはじめた中国。円安効果もあり、日本企業は、「帰国」しはじめています。過去のメルマガでは、NTTコム、カルビー、パナソニック、エスビー、サントリー、ホンダなどの例を取り上げました。

 なぜ、これが「希望」なのか?

 日本経済が衰退した理由は、日本企業が海外、特に中国に生産拠点を移したことなのです。90年代、日本の30分の1だった中国の人件費に惹かれ、企業はこぞって日本を離れました。彼らは、中国人を雇い、中国で税金を払い、中国経済の発展に大きく貢献した。だからどうのというつもりはありませんが、事実として日本国の雇用も税収も減ったのです。

時は流れ、中国の人件費は、高くなりました。日本企業は、もっと安いインドネシアやベトナムなどに拠点をうつしている。そして、一部の企業は、日本に戻ってきている。

これもしょっちゅう書いていますが、政府は、「日本企業が戻ってきやすい環境」をつくるべきです。具体的には、東日本大震災被災県の法人税をゼロにすれば、大挙して戻ってくるのではないでしょうか?

5.原油、ガス価格の長期的下落

2011年の福島原発事故。これで、日本の原発はすべて停止になりました。そして、火力発電で、その分を補うことになった。結果、高い原油や、液化天然ガスの輸入が激増した。ここでは円安がネガティブに作用し、日本は、「貿易赤字」が深刻な問題になっていたのです。

しかし、今年、エネルギー価格が大暴落した。1年で3分の1になった。しかも、根本理由が「シェール革命による供給過剰」ということで、エネルギー価格の低迷は長期化しそうなのです。おかげさまで、日本の貿易超赤字問題」は解消にむかっています。単月では、黒字になる月も出てきた。

「原油価格下落」

このことは、私の住むロシアや他の産油国には、深刻な打撃をあたえます。しかし、日本には、大変よいことなのです。

というわけで、思いついた5つのポイントをあげました。日本はバブル崩壊から25年の時を経て、ようやくよい方向にむかいはじめた気がしています。

もちろん油断は禁物。

いまも「反日統一共同戦線戦略は「継続中」なのですから。

わかりやすい例はこちら。

日中和解はホンモノか? 豪で進む驚愕の反日プロジェクト

image by:Shutterstock

 

ロシア政治経済ジャーナル

著者/北野幸伯
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