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石油の世紀の終わり。アメリカの次の「支配者」はどこになるのか?

止まる気配のない原油安で、世界の勢力図が一変する可能性が出てきました。『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、このまま迎える石油の世紀の終わりと共にアメリカは衰退すると分析、さらに再生可能エネルギーの技術を抑えつつある日本が、次なる覇権国家となる可能性を説いています。

石油の世紀の終わり

石油を最初に開発したのが、米国である。米国の覇権は石油の覇権でもある。その石油が揺らいでいる。この揺らぎが米国の揺らぎを招いている。その検討。

石油価格の下落

年明けから世界的な株安が続いている。原因は2つであり、1つが中国人民元安であり、もう1つが石油安である。原油価格は30ドルを割り込んで29ドル台になっている。2014年には100ドルしていた原油価格が3割以下になったことになるし、2007年では140ドル以上したので、2割程度になったことになる。

しかし、シェールオイルや深海の海底油田では採算割れになるが、生産停止には成らないで、生産続行で、今の供給過剰が続く。その理由は、米国では州の管理で90日以上生産停止にすると、その井戸の権益が消滅して、権利を失う事であると奥村さんがいう。

この上に、イラン核問題が解決して制裁解除され、中東の資源大国イランが国際ビジネスの場に本格復帰する。イラン産原油の供給増が見込まれ、市場は1バレル=30ドルを割り込んだ原油相場の一段の下落になる。10ドルまで下落するという専門家もいる。

このため、石油で恩恵を受けてきた国は、対応策が必要になる。サウジアラビアでは、ガソリン価格・レギュラーガソリンが67%(リットルあたり14.4円から24円へ)の大幅値上げになるという。同日、政府が2016年予算を発表して油価低迷による赤字削減策の1つとして、ガソリンなどへの補助金を大幅に減額することにした。さらに付加価値税の導入も検討されている。

さらに、約2,000万人のサウジ国民は税金を支払う必要もなく、学費も医療費も国庫負担、何からなにまで手厚く保護されてきた。その時代が終わろうとしている。

サウジより大変なのがベネズエラで、原油安などを背景とした深刻な不況を踏まえ、経済緊急事態を宣言した。マドゥロ大統領の権限を2カ月間強化し、民間活動への介入や為替取引の制限が可能となる。国家的な危機に直面している。

ロシアも同様に石油に依存して、経済的な苦境にある。しかし、シリアへの軍事的援助は止めないようである。

シェールガスや深海油田の開発が、2007年の1バーレル=140ドルで開発が可能になり、開発された結果が石油供給過剰になったのである。

米国の現状

シェールガスは2000年前半に米テキサス州で開発が成功し生産が本格化した。近年はオイルにもその技術が活用されて生産が伸びている。そして、2015年には、米国はサウジを抑えて世界最大の原油産出国になった。

しかし、生産する原油のコストは、サウジが自噴の石油井戸であり、10ドル以下もあるが、平均では20ドル以下である。これに比べてシェールオイルはコストが高い。テキサス州のイーグル・フォードで30ドル~40ドル、ノースダコタ州のバッケンで35ドル~45ドルで、平均は60ドル程度である。ということは、現時点の29ドルでは、全井戸が採算割れになっている。いつまで生産している企業が耐えられるかという状態である。

そして、原油井戸の投げ売りを大手石油会社は待っている。開発しなくて良いので生産コストが低くなるし、10年というスパーンで見ると石油は供給不足になると見ているからである。

また、米国の外交政策では、シェールオイルでほぼ自給できるので中東からの石油に依存しなくて済み、混乱続く中東には米国は関与しなくてよいことになっている。これが中東の混乱の原因でもある。

しかし、ハイイールド債のシェール関連企業の社債組み入れ率は30%であるが、シェール企業の倒産が多発してデフォルトになり、ハイイールド債のファンドも解散している。ジャンク債市場が干上がっている。

逆に、石油が安いので、米国では大型の自動車が売れ始めている。しかし、日本や欧州では低燃費な自動車が売れている。それは石油にかかる税金が高いからである。

米国の衰退へ

パリで開かれたCOP21では、地球温度上昇を1.5℃にしようと二酸化炭素の排出を減らすことが決まった。

中東の産油国UAE=アラブ首長国連邦では、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及について話し合う国際会議が始まりまった。UAEの首都アブダビで16日、世界140か国以上が加盟し、再生可能エネルギーの世界的な普及を目指すIRENA=国際再生可能エネルギー機関の総会が行われた。世界的な再生可能エネルギーヘのシフトが起きることになる。

石油から再生可能エネルギーへの転換で世界は次の経済成長が起きるという専門家もいるが、石油の世紀は終わりが始まったようである。

21世紀のエネルギーは何になるかの競争も起きている。自動車では、空気中の二酸化炭素と水でメタンを作り、それでディーゼル車を駆動するというドイツ、電気で駆動するという米国テスラ、水素で駆動するという日本トヨタとホンダの戦いである。過渡的にハイブリット車というのが日本メーカの考え方である。

米国はIT技術を生み出した国であり、その発展に寄与してきた。次はウェアラブル端末であり、人工知能であるとしてベンチャーが割拠しているが、そのユニコーン企業の投資成績が非常に悪い状態である。人工知能はIBMが取り組んでいるので良いポジションであるが、大型計算機が売れずに、IBM自体は苦戦している。

日本は、繊維に落ち込んだセンサを開発して、ウェアラブルではなくインビジブル化した服を提案している。IT端末は中国企業が米企業を仰臥してきたし、アップルのiPhoneは、とうとう売れなくなってきたようである。

自動車産業では新しいエネルギーに積極的ではなく、ITでの新しい提案がなくなってきた。

石油が20世紀を繁栄に導き、その先頭を米国は走り、米国の覇権を確立したが、石油から再生可能エネルギーになったとき、米国はその覇権を失うことになりそうである。

その過渡期に今あると見えるのであるが、どうであろうか?

サウジがOPECで生産制限をしなかったのも、再生可能エネルギーが今後、普及してくると見えているので、石油の価格を下げて、再生可能エネルギーの台頭を遅らせようとしてるようにも感じる。

日本の可能性

次のエネルギーは、再生可能エネルギーであることは間違えないが、どこの国がそれを抑えるのかは、未定である。米国も再度復活する可能性はある。

しかし、セルロース・ナノファイバーや燃料電池や医療の革新や新薬開発に発酵技術を活用する日本が技術を抑える方向であることは確かであり、日本が次の覇権国になる可能性を感じるのである。

もちろん、経済的な裏付けや人口減少などの問題を解決することが必要であるが、日本に大きな可能性を感じる。

もちろん、そのような日本の台頭を米国は押さえにかかり、中国と戦争をさせて日本を疲弊させる可能性があるので、十分注意が必要である。

しかし、日本の可能性を高めて行くことが政府の役割であると思うがどうであろうか?

さあ、どうなりますか?

参考資料
シェールオイルの現状
シェールオイルのコスト

image by: Shutterstock.com

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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