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アベノミクスは、このまま「紙クズ」になってしまうのか?

1月25日、日経平均株価は一週間ぶりの高値となりました。しかし、市場は相変わらず不安定な状態で、多くの人は静観しているような状態がなおも変わらず続いています。なぜ、株式市場は世界的に大混乱が起きているのでしょうか? メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんが、その理由と今後の日本経済の先行きについて詳しく解説しています。

日本経済の現状と対策?

1月始めから株式市場は大荒れになっている。ドラギECB総裁が金融緩和を3月にするという発言で、若干戻したが、なぜ世界的な混乱が起きているのかと、その対策を検討したい。

株価暴落の原因

株価の下落が起こった原因は、米国の利上げであり、その利上げによる新興国、特に中国の経済減速や減速による原油価格の下落からである。株価を決めるのは、1つに企業の利益で、特にROE配当率)であり、この部分は実体経済の部分であるが、もう1つが金利であり、これが上がるとより安全な資産である国債などにシフトするので、株価は下がる方向になる。

しかし、中央銀行が金利を上げるのは、景気が良い場合であり、それは企業利益が増えるので、金利上昇はその企業利益との見合いになる。

3つ目が、リスクプレミアムである。将来、企業利益が下がるのではないかという恐れで、ヘッジファンドなどが空売りを仕掛けて、株価を急落させて、それに釣られて投資家が投げ売りをすることで、より株価が下がる局面である。

リスクの恐れがないとなれば、株価は元に戻ることになる。特に金利動向が不透明であり、景気が利上げに耐えられるのかという心配があると、このリスク・プレミアムは大きくなる。今回も、このような原因で株価が急落したが、急落した株価を買う投資家がいるのが普通であるが、その普通の投資家が日本にはあまりいないので、米国に比べて日本異常な下落になったようである。

そのため、原因である米国の利上げがどうなるのか、世界の投資家が注目している。今週の26日、27日のFOMCの結果しだいである。利上げ速度を年4回、0.25%で行うと公式的にイエレン議長は言っていたが、これをどうするのかということである。

投資家の多くが、年2回、0.25%で来年は0.75%になると見ているようであるが、それに近い回数、数値になるかどうかでしょうね。もし、これより、少ない回数、少ない刻みだと米国の株価は上昇するが、円高になり、日本の株価は下がるかも知れない。

そして、続いて日銀金融政策会合が28日、29日にあり、追加緩和があるかどうかが注目されている。米国の利上げスピードが遅く、かつ日銀が追加緩和をしたら、株価の戻り速度は早くなるし、期待値より少ないと、続落になると見える。

現在の経済状況はどうなのであろうか?

量的緩和により日本経済が良くなったのかというと、そうでもないようだ。

厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 平成27年11月分結果確報」では、昨年11月の月間現金給与額は、全体的に前年比で横這い気味ではあるが、名目賃金と、名目賃金指数を消費者物価指数で除して算出した実質賃金の動きを見ると、ここ1年でも下降傾向が目立つことが分かる。

実質賃金が下落しているので、消費も伸びていないし、景気も横ばいになっている。国民の暮らしは代わり映えしない。ディプロマット誌には「Japan Without Ambition」が載り、日本は保守的であり、移民も認めないので停滞社会のままであると絶望している。日本への見方が大きく変化している。

日本経済は、金融緩和だけでは問題を解決できずに、日本社会の構造を変革して、移民を認め女性を認めて多様性のある社会にしないと、経済の停滞状況は解消しないと見ている。イアン・ブレマーも同様な意見を述べている。

日本の企業は、借金を返して内部留保があり、それを日本国内に再投資できれば、日本は経済的な発展ができるが、日本国内で今以上の需要が無いので、投資できない。日本は需要不足であり、供給は今まで通りにあるので、供給過剰な状態になっている。

このため、日本企業は国内投資ではなく、海外に投資したり、M&Aしたりと海外に投資している。そして、デフレにもなりやすい。

このままでは、日本は景気が良くならないと世界の投資家も思い始めているし、株価的にもアベノミクス相場は終わった

株価が1/21に16,017円になり、9/29の16,901円を大幅に下回ったことで、上げ相場はテクニカル的に終わったことが確認できる。当面の戻しは、17,348円で、今後の下値は14、581円となる。

しかし、まだ日本の大企業は、好調である。

このためには条件があり、企業業績が良いのは円安の状態であるためで、円安が続くということである。

日銀の金融政策は

この円安を続けるには、現状では、金融緩和量的緩和が必要である。金融緩和がない原油価格下落で日本の経常収支が大幅な黒字になり、需給面から円高になる。反対に米国が金利を上げると金利差ができて円安になる。しかし、米国利上げスピードを下げると、バランスが崩れて、円高になる可能性が出てくる。

もう1つが、金融緩和でマネーサプライが増えていないので、円安も虚構の1つである。インフレを加速したいなら、銀行に貸し出すのではなく、日銀が直接、マネーサプライを増やす必要がある。

このため、日銀は日経平均指数連動ETFとリートの株を買っている。

この2つは、日銀が直接マネーサプライを増やす行動である。市中に資金を供給できる。

現状の株価は暴落したことで、企業業績に比べて、株価が安すぎる状態であり、日銀が大量に買っても損をしない。株を持っているだけで、企業の配当を受け取れる。

ということは、日銀も株価が安い時に買い高い時に売る方向で、株価調整をすれば、国民の資金を増やして、その資金を国家予算として使うことができる。

今一番、問題なのがヘッジファンドの空売りである。この防止は、空売りをするとをする状態にしないといけない。

空売りは、日経255の先物に出るので、この防止は、現物の日経255で、日銀が介入することである。安い株価の時に集中して、買いを入れれば、そして、買いの情報を提供すれば、無謀な空売りはできなくなる。

日経255のPERが10倍以下になると日銀が介入して買うというような数値を公開すると、その数値以上の空売りはできなくなる。

17倍以上になると、徐々に日銀が売りを出すとなると、それ以上には日経平均株価は上がらないので、異常なバブルも防げることになる。

企業収益が下がってきたら、その数値を見直して、適時公開すればよいのである。不景気時は、倍数を大きく、高景気時には、倍数を少なくして、円供給量を調節すれば良いのである。

儲けが出てくるが、これを国庫に納付するか、株は持っていて配当金を納付して、国家予算に使えば、国民の税金も少なくでき、ヘッジファンドを損させることができる。

株式市場でオーソドックスに国が儲けることが必要になっている。

金融市場化して、株式市場の歪みを増大しているので、それに一定の御目が必要になっているように感じる。

さあ、どうなりますか?

参考資料

China: It’s Worse Than You Think

Japan Without Ambition

Financial collapse leads to war

The New Geo-Economics

 

image by: 首相官邸

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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