前回の記事では、海外の日本レストランの料理のクオリティを保証するため、日本政府が新認定システムを取り入れることがイギリスで話題になっていることを紹介しましたが、今度はアメリカでも 和食の代表「寿司」についてザワザワし始めています。
アメリカナイズされた寿司は消えてしまうのか?
ご存知の方も多いかもしれませんが、日本国内でもよく見かけるようになった“カリフォルニア・ロール”はアメリカ発祥の“寿司”です。
これまで日本の本格的な寿司とは一線を引いた独自のスタイルで寿司カルチャーが根付いてきたアメリカですが、日本政府による認定システムが取り入れられていくということで、アメリカがざわついています。
米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は「さよなら、寿司ブリトー」という見出しで、「アメリカ全土で色々な風変わりな寿司が作られてきたが、そのすべてが本物の日本食ではない。みんなに愛されているカリフォルニア・ロールさえも。その広く行き渡った誤解を日本政府が正すことになった」と報じています。
近年海外での日本食の人気は高まる一方です。
海外の日本食レストランの数は2年前までは5万5千店だったのに対して、今では8万9千店に増加しており、米国内だけでも約2万2千店にものぼるそうで、世界的にも日本食の人気は高いことがわかります。
同サイトでは和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、星の数でレストランを評価する「ミシュランガイド」によって日本食の評価が高まったことをあげ、このような影響もあり、日本政府が海外の日本食について真剣に受け止めていると報じています。
ちなみに歴史あるミシュランガイドが欧米以外では初めて出版したのが東京版であり、また2008年には日本国内のレストランへの星の累計が191となり世界最多と報道されて、世界を驚かせこともありました。
発想が斬新なアメリカの寿司
ところでアメリカにはどんな寿司があるのか、気になりますよね。先ほどあげたカリフォルニア・ロールの他にも面白い寿司がたくさんあります。
(1)あのバーガーがこんなことに。ビッグ・マック寿司
image by: Youtube
アメリカ在住の日本人シェフが考案した「ビッグマック寿司」。
マクドナルドから買ってきたビッグマックバーガーに、アボガド、トマトを加えて、BBQソースとスパイシーマヨネーズで味付けたしたもの。
この調理の様子を撮った動画はこちらから見ることができます。
(2)食感がサクサク。寿司クロワッサン
カリフォルニア州にあるパン屋Mr. Holmes Bakehouseから発売されていた寿司風クロワッサン。
これを見たユーザーからは「ついにやってくれたね。寿司とクロワッサンの両方を台なしにしちゃったよ」、「実際いい組み合わせかもね。トライしてみたいな」など両方の意見が。
一体どんな味なんでしょうか?
(3)中身がアレ。クレイジー・ケイジャン・ロール
image by: Secrets of Sushi
アメリカ南部ではけっこうポピュラーだと言われている「クレイジー・ケイジャン・ロール」。
一見まともな感じに見えますが、なんと具は“ザリガニのサラダ”。
このザリガニの身は南部ではよく食べられているのだそうです。
これをサーモンで巻いたら出来上がり。
ちょっと抵抗感がありますね。
(4)ジューシーなバーベキューベーコン寿司
image by: Youtube
このなんとも肉肉しいジューシーな寿司は、名づけて「バーベキュー・ベーコン寿司」だそうです。
もはや寿司の形をした違う食べ物ですね。
この動画にも様々なコメントが。
「これって寿司じゃなくて、ただのミートローフじゃない?」、「作り方を教えてくれてありがとう。週末に作ってみようっと」、「なんだか気持ちわるい」など色々なコメントが。
(5)かぶりつきたい大人気のスシ・ブリトー
image by: Sushiritto
メキシコ料理のブリトーと寿司を融合した最強コラボの「スシ・ブリトー」。
メキシカンとジャパニーズの組み合わせがウケたのか、今アメリカで流行しているらしいのです。
ボリュームたっぷりなので、手軽に食べられるファーストフードとして人気だとか。
メニューも「芸者のキス」、「相撲クランチ」、「ブッダベリー」など日本を連想させるユニークな名前が付けられています。
独創的なフレーバーがラインナップされているので、興味を惹かれますね。
どちらかというと「おにぎらず」に近いかもしれません。
本格派の和食と米国流日本食の共存へ
NPRは、「Food Sake Tokyo」の著書として知られる日本人シェフの坂本ゆかりさんのコメントを紹介。
「和食は今世界中で広まっています。しかし、日本国外で広まっているのが常に伝統的な和食とは言えません」と現状を説明し、「でも誤解しないでください。“スシ・ブリトー”はクールなコンセプトです。誰にも食べるな!なんていいません。ただあれは日本食とは言えません。そこには境界線がありますね」とコメントしています。
同サイトは「この新認定プログラムはキッチンのクリエイティビティを潰そうとしているのではなく、往々にして見逃されがちな伝統的なニュアンスや習慣を強調することが目的だ」という見方をしています。
このことについて、アメリカ国内のユーザーからは様々な反応がでています。
「みんな文句を言っているけど、これって良いことだよ。これが導入されたとしても、日本食レストランのビジネスに影響があるとは思えない。ほとんどの人が本物か、そうでないか、については気にしていない。ただ美味しいものが食べたいだけだ。本物の寿司を食べたい人にとってはわざわざ飛行機で日本に行かなくても、食べることができるね」
「僕は多民族グループに属するので、色々な国の料理が混ざり合ったものが好き。でもたまには“本物”を食べてみたい気もするね。どんなものか比較したいから」
「本物に“良さ”というものは必要とされていません。素晴らしい本物の日本食を食べたこともあるけど、まずかったときもあります。寿司にアボガド、パイナップル、クリームチーズを入れたものは“ジャパニーズ・アメリカン”とするべきだよね」
「とにかく、衛生的さとクオリティを保証してくれるこのガイドラインはいいと思うよ。でも、100%本物じゃなければ認定されないというアイデアは好きじゃないな。伝統的な日本食をキープしておくのはいいことだ。けど、新しいことに挑戦しようとしているレストランを罰するのはやめようよ」
「日本も洋食に同じプログラムを導入すべきだよ。99%が本物ではないから」
ユーザーの反応にもあったように、「本物の日本食」が入ってくることによって、「米国スタイルの日本食」がなくなるというよりは、2つの日本食が共存しあっていくことが求められていくのかもしれません。
それにしても、“スシ・ブリトー”は気になります。
みなさんならどれを試してみたいですか?
image by: Sushiritto
Source by: 米ナショナル・パブリック・ラジオ
文/MAG2 NEWS編集部