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あえて科学者に質問してみた!結局、「結婚」ってした方が得なの?

いつも独自の観点から持論を展開してくれる安井真人さんが、自身の無料メルマガ『科学日誌』で、今度は結婚の損得について語ってくれました。海外では当たり前とされている「事実婚」も、保守的な日本ではまだ十分には受け入れられていません。しかし、安井さんはそれ以前に結婚制度を廃止した方が人々の幸福度は上がると述べています。

結婚の損得論

「結婚して子供を持ちたい」というのは多くの人がもつ願いであろう。そして、多くの人はとりあえず結婚をしようと考える。私もかつて「とりあえず結婚するべきだろう」と安易に考えていた。しかし、よくよく考えてみると「結婚しなければ子供をもてない」という命題は正しくないことに気づく。結婚しなくても子供も家庭ももつことはできる。

「では一体何のために結婚するのだろうか?」

この問について考える。

籍を入れずに(結婚せずに)子供を持つことを「事実婚」という。日本において事実婚のカップルを聞いたことはほとんでない。私自身知りあいで事実婚をしている人を知らない。一方、海外ではどうかというと、日本とは逆で事実婚は当たり前である。

世界各国の婚外子割合:図表2-2-1

データを見ると、婚外子(籍を入れずに生まれた子供)の割合は、2008年における日本では2.1%である。

一方、フランスを見ると52.6%が婚外子である。フランスでは結婚しないで家庭と子供を持つことが普通になっているのである。婚外子割合が少ないイタリアでさえ17.7%なのだから、日本がいかに奇妙な国かがわかる。

日本人はなぜこれほどまでに結婚にこだわるのだろうか?きっと何かメリットがあって結婚しているに違いない。そこで、結婚することの利点についての調査結果を見てみよう。

結婚することの利点:図表2-2-16

主に以下の点についての利点があげられている。

[1] 子どもや家族をもてる(約30%) [2] 精神的安らぎの場が得られる(約30%) [3] 親や周囲の期待に応えられる(約15%) [4] 愛情を感じている人と暮らせる(約10%) [5] 社会的信用や対等な関係が得られる(約10%)
[6] 親から独立できる [7] 経済的余裕がもてる [8] 生活上便利になる [9] 性的な充足が得られる

結婚しなくても(事実婚でも)、子どもや家族をもつことができる。そのため、我々は結婚について何か勘違いをしているようである。この勘違いを除くと

[3] 親や周囲の期待に応えられる(約15%) [5] 社会的信用や対等な関係が得られる(約10%) [6] 親から独立できる [7] 経済的余裕がもてる

となる。

どうやら「周囲の理解」と「経済な点」で結婚に利点があるようだ。前者は偏見・差別に繋がるため、一種の社会的な問題である。今後是正されるだろうから、結婚の利点とは呼べなくなるだろう。後者に関しては結婚に関する法律について理解する必要がありそうだ。そこで、結婚に対する法律についてみていこう。

「一緒に暮らす」と「子供をもつ」という2軸が大事

日本の結婚に関する法律を調べた結果、

・ 一緒に暮らすこと

・ 子供を持つこと

の2軸を中心に法律が書かれていることに気がついた。

この2軸をおさえておくと、結婚におけるお金の損得を計算できるようになる。では、この2軸について順に説明しよう。

一緒にくらすこと

同棲かの区別が難しいが、基本的に男女が一緒に暮らすと「内縁」と呼ばれる状態になる。内縁には事実婚と結婚の両方が含まれる。内縁になると「利益の山分け」というルールが生じるようになる。婚姻費用や財産分与など細かい規定があるが、要するに「一緒に暮らしている男女は仲良く利益を山分けしなさい」といっているに過ぎない。

山分けの意味を理解していただくため、一つ例をあげよう。

いま、A君とBさんが一緒に暮らし内縁関係になったとしよう。そして、

・A君の年収:500万円、年間支出:500万円、利益:0万円

・Bさんの年収:1000万円、年間支出:200万円、利益:800万円

だとしよう(つまり、Bさんは優秀かつ倹約家であり、A君は浪費家というケースである)。

収入と支出は山分けなのでA君とBさんが内縁関係になると

・A君とBさんの年収和:1500万円、年間支出:700万円、利益:800万円

・A君の年収:750万円、年間支出:350万円、利益:400万円

・Bさんの年収:750万円、年間支出:350万円、利益:400万円

となる。

では結婚前後でA君とBさんの利益変化について計算する。

結婚前後での利益差を計算すればいいので、

・A君の利益差 = +400万円

・Bさんの利益差 = -400万円

となる。

わかっていただけただろうか。日本の法律では、内縁関係になると利益に変化が生じるのである。一緒に男女が暮らすだけで、利益を山分けしなくてはいけないのだ。

子供を持つこと

では2つ目の軸である「子供をもつこと」へ移ろう。子供をもつことで「養育費」というものが発生する。養育費は親が子供に対してもつ義務であり、離婚した後でも子供が大人になるまで支払い義務は続く。養育費の計算は少し複雑である。

養育費・婚姻費用算定表

面倒なのでざっくり「年収の10%ほど」と考えていい。細かい話になるが、養育費は親権を持つ親の年収が高いと少なくてすむ。逆に、親権を持たない親の年収が高いと、養育費は高くなる。

式にすると

(比例係数) x (親権を持つ親の年収) / ((親権を持つ親の年収) + (親権を持たない親の年収))

となる。

差ではなく比で決まる」のが特徴である。そのため、いくら親権を持たない親の年収が高くても、

(比例係数) x (義務者の年収) / ((義務者の年収) + (権利者の年収)) = (比例係数)

と、比例係数(15%ほど)が上限となる。

ここで注意だが、認知がないと養育費がとれない。そのため、女性の場合、子供ができたら必ず認知をしてもらおう。

結婚と事実婚の違いは何か?

以上のことは事実婚であっても結婚であっても成立することである。つまり、事実婚と結婚においてこれまでの解説において差はない。では事実婚と結婚の差は何なのだろうか?

結論から述べると、結婚と事実婚との差は「結婚では別居していても内縁となること」にある。

事実婚の場合は、別居すれば内縁も解消される。しかし、結婚すると離婚するまで内縁関係は続くのである。この点に結婚の特徴がある。

収入の多い人と結婚し、別居すれば働かなくても収入の半分を取得できる。離婚が簡単にできればいいが、両者が離婚に同意しないと裁判になり時間がかかるのだ。(歴史上、離婚しないことを前提に制度がつくられているので仕方ない)

そのため、別居して離婚が成立するまで収入の半分を払い続けるという「婚費地獄」が始まる。

結婚と事実婚のどちらを選択すればいいか

では、結婚と事実婚のどちらかを選択すればいいかについて考えよう。

上記の考察から、結婚のメリットは

[1] 社会的偏見にあわない [2] 別居しても利益の山分けができる

ということになる。

日本では事実婚に対する偏見が大きいように思われる。もしも両親や会社が事実婚に対して冷たく、収入差もそれぼどないならとりあえず結婚しておくのが正しい選択だろう。

また、相手方の収入が自分より高く節約家の場合は、必ず結婚するようにしよう。利益山分け制度により、婚姻期間中の自分の利益を大幅に上げることが可能だからである。一方、相手方の利益が自分より大幅に低い場合は事実婚の選択をおすすめする。婚費地獄という悲劇を避けるためである。

さて、つい最近、以下のようなアンケート調査の結果を見つけた。

「これだけは譲れない!」女子がこだわる結婚相手の条件3つ

3つの条件は以下の通りである。

[1] 安定した収入 [2] 思いやり価値観 [3] タバコを吸わない・金銭感覚が合う

女子は利益の高い男性と結婚することのメリットを理解していることがわかる。

今後、結婚制度はどのようにすべきか

最後に結婚制度を今後どのようにすれば最適なのかについて私の考えを述べる。

その前に結婚制度が生まれた過程について考え、結婚制度の意義を再確認する。上記の議論から、結婚の制度は「利益山分け」、すなわち扶養にすぎないことがわかる。なぜ扶養の義務があるかというと、昔は力仕事の価値が高かったことに起因する。昔は力のある男性が力仕事をし、女性が家の仕事をすることが主流だった。この役割分担により、狩猟の効率化を行っていたわけである。狩猟は家仕事と比べ生死に関わるため、男性の方が社会的地位が高かった。狩猟は一人でやるのではなく協力して行うものである。そのため、男性同士仲がよくないといけない。チームプレイがうまくいかないと最悪の場合、生存の危機に陥るだろう。恋愛はトラブルのもとを引き起こす厄介なものである。そこで、結婚というルールを用いて、自分のパートナー以外との付き合いを絶って秩序を保ったのである。そのため、婚姻中の浮気慰謝料という形で厳しく法律により罰せられる。一度、結婚すると基本的に破棄(離婚)は許されない。なぜなら、離婚は女性側の死を意味するからである。この結果、利益山分けという扶養義務が生じたのである。

以上のことから、結婚の意義は「社会的弱者の救出」にあると考えることができる。では、結婚制度を今度どうするかについての私の考えを述べる。

結論を先にいうと

結婚制度を廃止しベーシック・インカムに統一する

というのが私の考えである。

ベーシック・インカムとは「基礎収入」という意味で、生活最低限の収入を全員に与えようという考えである。簡単に言うと全員に毎月10万円ほど普及しましょうという考え方である。一見不可能のような話だが、実はベーシック・インカムの実現は可能である。なぜならテクノロジーによって生産性が格段に向上したからである。昔は畑仕事を人がしていたが、現在は機械が代行してくれ、最低限の食料確保を可能にした。これはもはや働かなくても生活できること(ベーシック・インカムの実現)を意味しているのだ。実際に海外ではベーシックインカムの社会実験がスタートしている。

“ベーシック・インカム”必要最低限の給付をオランダで実験「幸福度が増す」

結婚制度というのは、社会的弱者を助ける制度である。利益山分けも養育費も社会的弱者救済のために存在する。
一方、ベーシック・インカムも社会的弱者救済のためのものである。よって、結婚制度を廃止ベーシックインカムに一元化すればいいというのが私の考えである。もちろん、浮気に対するペナルティも必要ないと考えている。恋愛でのトラブルに国が口をだすべきではない。ベーシックインカムによる一元化により、離婚の際にかかる費用(離婚の手続き、弁護士の仕事など)を削減できる。より無駄がなくなり私たちの暮らしはよりよいものになるだろう。生産性の劇的な向上が私たちの生活習慣に大きな影響を与える。結婚制度の破綻は、その一例にすぎない。

image by: Shutterstock

 

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