アメリカの敵は誰か? アカデミー賞から見る、ハリウッドと政治史

 

共産主義を排除・弾劾

マッカーシーとは、アメリカの50年代の上院議員の名前(Joseph McCarthy)。冷戦最中の1950年代はじめのアメリカで「マッカーシズム」(赤狩り)といわれる共産党活動やその同調者を追及する運動を展開した政治家。この運動はアメリカのみならず、世界中にひろまった。

連邦公務員212人の解雇、2,000人以上の辞職者を出し、共産党員のローゼンバーグ夫妻をソ連のスパイとして告発。真相の究明がされぬままこの夫妻が死刑になったり、国務省内部の共産主義者が告発されるということがあった。アメリカ映画では「13デイズ」「レッド・オクトーバーを追え!」などで共産主義との対立が描かれている。

強い日本を嫉み、不愉快な日本人像を描く

もう1つ気になっているのは、冷戦後の「日本の貿易黒字」に対して、日本を批判してやろうということで日本を茶化したり、馬鹿にするような映画「ガン・ホー」(Gung Ho / 1986年公開)などが出てきた。これは「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind / 2001年公開)でアカデミー監督賞を受賞したロン・ハワード氏が監督し、1986年当時のバブル期の日本を題材に文化・経済面での「日米摩擦」をテーマにした喜劇映画。

この当時、日本人は黒ブチメガネをかけ、出っ歯、低身長、首からカメラをぶら下げているといった様に描かれていることが多かった。日本人から見ると本当に不愉快な日本人像がアメリカではうけ、アメリカは敵対するものに対し溜飲を下げたいという想いがあったのだろうと思う。

「9.11」以降のターゲットはテロリストに

冷戦終結後の問題は「9.11」でのNYのWTCに飛行機によって自爆突撃したのがイスラム過激派だったことから、「9.11」以降イスラム教を批判する映画が相当出てきた。これは「イスラム教」と「キリスト教」の宗教戦争となることが懸念され、その後は「イスラム教」とはいわず「テロリスト」として扱い、そのような映画が増えていった。

2013年のアカデミー賞授賞式にサプライズとして「オバマ夫人」が登場し、夫人が作品賞として「アルゴ」(ARGO / 2012年公開)と発表。この映画は在イランアメリカ大使館人質事件をの作戦を遂行したCIAが題材だが、オバマ夫人を登場させることで差別を払拭しようとしたこともあった。また、サミー・デイヴィスJr.などを映画の中で善人として扱い、批判を抑えるということもやってきたように思う。

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