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シルバーデモクラシーを回避するには1票に軽重の差をつけるしかない

先日の大阪都構想を巡る住民投票でも話題となった「シルバーデモクラシー」に関して、「若者が投票にいかないのも問題」という意見が聞かれます。しかし作家の大石英司さんはメルマガ内で「そもそもそういう次元の問題ではなくなりつつある、このままいけば日本に恐ろしいことが起こる」と指摘。その事態を避けるためには1票に「軽重」をつけるしかないと言います。

日本でシルバー・デモクラシーから逃れられる地域はどこにもない

「投票に行かない若者が悪いだけ」という言説の恐ろしさ

昨日、私が書いたことで若干誤解があったようで補足しておきます。私が70歳でまだ現役だったら? というのは、自営業だからそれが出来るというお話ではなく、つまり世間から老人だとみられる年齢になった時、それでも仕事をして納税していたらどうだろう? という話です。どうだろう? という意味は、税金を納めるからには、当然その税金の使い道に関しても発言する権利があるということでしょう。発言したくなる。その権利を行使することを当然だと私自身が思うか否かです。ここでは、じゃあ納税していなければ発言する権利はないのか? という議論はしませんが。

で、シルバー・デモクラシーの問題ですが、私が深刻だと思うのは、問題が、若者が投票にいかないからだ、若者が投票すれば良いだけの話だという次元ではすでになくなっているこの状況です。よしりんも、投票に行こうとしない若者が良く無いと言っているけれど、もうそういう次元の問題ではなくなりつつある

>>次ページ 世界のどの国も経験したことのない未曾有の現象

たとえば地方の郡部。そもそも若者がいないから、若者の権利もクソも無い。単に東京から降りて来る交付税と地方債で食いつなぐだけ。ここで若者の権利、年寄りの権利を議論しても虚しい部分はある。

しかし、国全体を見ると、そもそもシルバー・デモクラシーに互して、若者の意見を政治に反映させられるだけの若者がこの国にはもういなくなりつつある。それはもう都会でも全くその通りで、確かに都会は若者も多いけれど、実はそれ以上にお年寄りも多い。この日本で、シルバー・デモクラシーから逃れられる地域は最早何処にもない

これは、人類の政治史の中で、自由選挙が民主主義と供に発展し始めてから、世界のどの国も経験したことが無い未曾有の現象です。納税もしていなければ、働いてもいない、そして福祉予算の大半を食いつぶしてしまう老人が、政治に対して最大の発言権を持ち、それは拡大する一方にある。こんなことは文明の歴史上一度も無かった。

何が起こるか? 恐ろしいことが起こりますよ。今は、お年寄りには戦争の記憶があり、戦後のひもじさも経験し、いかなる海外派兵もダメだと判断するだろうけれど、やがてはその記憶も無ければ、戦争の悲惨さも知らないお年寄りが、シルバー・デモクラシーの中核を成すようになる。その時、地球の裏側で何かが起こって自衛隊を出す出さないと議論になったら、そのコア層は、どうせ自分が行くわけじゃないから(ついでに自分の息子もとっくに徴兵年齢は過ぎ&結婚しそびれた息子には孫もいない)、日の丸を立てて来い、と気軽に自衛官を送り出すかも知れない。

これは明らかに正常な事態ではない。極めて異常な事態です。その状況下で、自由選挙の精神を守りつつデモクラシーを回して行くには、1票の重さに軽重を付けるしかないでしょう。最早、1票の重さは平等であると呑気なことを言っている場合では無い。お年寄りがどうしても選挙権を失いたくないというのであれば、現役世代の1票を重くするしかない。

image by:Wikipedia

『日刊 大石英司の代替空港』2015.5.20号より一部抜粋

【2015.5.20号の目次】

著者/大石英司
作家、鹿児島県出身、川崎市高津区在住。国内外の注目ニュースに関して alternative な視点を提供するメルマガはビジネスマンなら必読です。
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