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また中国人が失踪。習近平に辞任を迫る怪文書は誰が書いたのか?

先日、中国の政府系ニュースサイトに習近平氏の辞任を求める記事が掲載され大騒動となりましたが、その件に関与したとして中国人コラムニストが当局に拘束されたことが明らかになりました。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、衝撃的な記事の内容を詳しく紹介、さらに豊かさも自由もない状態となった中国の行く末について論じています。

習近平辞任要求事件

中国政府、特に習近平を批判する人が失踪」するケースが増えています。

中国著名コラムニスト、行方不明に 香港向かう途中

BBC News 3月18日(金)17時53分配信

 

中国の著名コラムニスト、賈葭氏が行方不明になっていることが明らかになった。同氏の弁護士がBBCに語った。

 

賈葭氏は15日夜以降、連絡が取れなくなったという。同氏は同日に北京から香港に飛行機で向かう予定だった。賈葭氏の妻は、夫の行方が分からなくなったと当局に訴えている。

 

政府系ニュースサイトに掲載された習近平国家主席の辞任を求める匿名の手紙をめぐって、賈葭氏に対する当局の懸念が高まっていたとみられる。手紙はサイトから間もなく削除された。

 

今回の失踪も、習主席のイメージを守ることを目的とした、最近注目を集めるメディア関係者への締め付けの一環だとみられる。

「政府系ニュースサイトに掲載された習近平国家主席の辞任を求める匿名の手紙」とは、何でしょうか? 気になります。

人々を驚かせた習氏への手紙は、政府系のニュースサイト「無界新聞」に今月4日に掲載された。

 

習氏が「過大な権力」を手に「個人崇拝」をさせているとして、辞任するよう求めたほか、外交政策から経済運営にわたり習政権の批判を展開した。

 

執筆者は「共産党の忠実なる支持者たち」としている。
(同上)

なんと、「政府系」のニュースサイトが「習近平」に辞任要求とは! もう少し詳しく。「無界新聞」とはなんでしょうか?
日本戦略研究フォーラム・澁谷司先生のブログに、こうあります。

昨年4月、雑誌『財経』の親会社、財訊集団と新疆ウイグル自治区とアリババグループ(創始者はジャック・マー)の3者が立ち上げた「無界新聞」

アリババグループ」は、時価総額で世界23位(2016年2月時点)。トヨタ(26位)を上回る巨大企業です。もちろん、「無界新聞」側は関与を否定しており、「ハッキングされた」と主張しています。しかし当局の調べではハッキングされた形跡はなく、「内部犯行」である可能性が強いそうです。

何が書かれていたのか?

ところで、「無界新聞」に掲載され、大騒ぎになっている文章の中身はなんなのでしょうか?興味があります。前述渋谷先生のブログに、要旨が載っていました。

習近平政権が誕生して以来、習主席は政治・経済・思想・文化で権力を集中させてきた。その結果、あらゆる方面で危機が生じている。

 

元来、民主集中とは、政治局常務委員会で決めるのがスジである。ところが、習主席はその民主集中をないがしろにした。本来ならば、経済担当の李克強首相の権限まで自らが握っている。

中国は「共産党」の「一党独裁」。習近平は、それを「自分一人独裁」にしている。それで、様々な問題が生じていると。

習近平体制になると、北朝鮮は勝手に核実験やミサイル試射を行っている。トウ小平が「養光韜晦」(能ある鷹は爪を隠す)政策を採ってきたにもかかわらず、習政権は東シナ海や南シナ海で摩擦を起こした。だから、ベトナム・フィリピン・日本等を対中国で結束させている。
(同上)

北朝鮮の話はともかく、習近平政権が、東シナ海、南シナ海で強気なのはそのとおりですね。それで、日本、ベトナム、フィリピンが「反中で結束しつつあるのもそのとおり。

ここには書かれていませんが、「アメリカを反中にしてしまったのが習近平最大の失敗だろうと思います。

香港では「一国二制度」が建前のはずだが、習主席はそれを無視している。他方、台湾では民進党政権が誕生した。
(同上)

確かに、香港では大規模な「雨傘デモ」が起こり、台湾総統選挙では、(独立も視野に入れている)民進党の蔡英文さんが勝ちました。

習主席は経済まで首を突っ込み、株式市場を混乱させている。また、サプライサイド改革や脱過剰生産(能力)で、国有企業や中央(直轄)企業のレイオフを行った。また、民間企業から大量の失業者を出している。
(同上)

ここでは景気の悪化と、「大量リストラ」を批判しています。

習政権の「一帯一路」戦略では、巨額の外貨準備を使用しながらも、他国からそのカネを回収できていない。同様に、外貨準備高を使っても人民元の下落を止められない。
(同上)

習政権下、日夜「反腐敗運動」が行われている。そのため、政府職員らは行動が消極的になった。
(同上)

「反腐敗運動」で、政府職員は「怖がって」、行動が「消極的」になっていると。

習政権は、政治、経済、外交、イデオロギー等、全てにわたり失敗した。人民の間には怨嗟の声が起きている。したがって、習主席は辞任すべきだ。
(同上)

言っていることは、ずいぶんまともですが、「衝撃的」な内容ですね。

「正統性」を失いつつある「共産党一党独裁」

民主国家の政権は、「国民が選んだ」という正統性があります。民主党政権は、日米関係をメチャクチャにしました。しかし、それでも「国民が選んだ」という正統性はあります。

ところで中国共産党の正統性」はなんでしょうか? 中国全土を統一し、「中華人民共和国」を「建国した」という正統性があります。しかし、中国国民が、「国民党にしようか? 共産党にしようか?」と選挙で決めたわけではありません

次に共産党は、「一党独裁のおかげで中国は経済発展している」という正統性を持ち出しました。実際、中国は1970年代末から2010年代半ばまで、「世界一」と言っていいほどの成長を遂げてきました。それで、国民も、「まあいいか」ということだった。

しかし、2015年の半ば、特に今年に入ってから中国経済はボロボロになっています。国民は、貧しい時「豊かさ」(金)を望み、豊かになると「自由」を望むようになります。共産党は、「豊かさ」を餌に、中国に「不自由」を強いてきた。ところが、経済がダメになってきたので、「豊かさも自由もない状態になりつつあります。つまり、「共産党の一党独裁だから経済成長できる」という「正統性」は、もはや失われつつあるのです。

もちろん、今回の「無界新聞事件」で、習近平がどうのこうのという話にはならないでしょう。しかし、「人民の間には怨嗟の声が起きている」というのは事実。これからのさらなる景気悪化で、ますます「怨嗟の声」は大きくなっていくことでしょう。

「皇帝」と呼ばれる習近平ですが、「裸の皇帝」と呼ばれる日がくるかもしれません。

 

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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