MAG2 NEWS MENU

マクドナルドが1000通りのメニューを用意しても復活できない3つの理由

前回の記事で、瀕死のマクドナルド復活のために必要な2つの要素を指摘してくださったMBAホルダーの安部徹也さん。今回は、先日マクドナルドが発表した「1000通りのメニューを提供する」という作戦で再びお客さんを取り込めるかについて分析しています。結論を言うと、多分無理、だそうです。そのワケは?

マクドナルドは1000通りものメニューで復活することができるのか?

マクドナルドは5月21日、サラ・カサノバ社長が新商品説明会の席上で、1000通り以上のメニューを提供することを発表しました。

最近は昨年から続く不祥事-期限切れの鶏肉原料の使用問題や異物混入事件-などで顧客離れが深刻なマクドナルドですが、みなさんは1000を超す豊富なメニューで顧客を呼び戻し見事復活を果たすことができるとお思いでしょうか?

私自身は残念ながら、恐らく1000通りのメニューを提供しても、今の顧客流出に伴う売上減の流れは食い止めることはできないと感じています。

それは主に次の3つの理由によります。

>>次ページ 1000通りのメニューに迷った客が取る行動とは?

1.品揃えを豊富にすれば逆に売上が下がる

一般的に品揃えを豊富にすれば売上がアップすると考えられがちですが、実のところマーケティングの実験で品揃えを増やすと売上減少につながることが証明されています。

この事実を証明したのが、コロンビア大学のアイエンガー教授。

アイエンガー教授は、アメリカのスーパーマーケットで、6種類のジャムと24種類のジャムを陳列し、販売する実験を実施しました。

もし、一般的なイメージ通りに品揃えが豊富な方が売上が上がるのであれば当然24種類を陳列した方が売上アップにつながるはずです。

ところが結果は予想を大きく裏切るものでした。

6種類のジャムを陳列した場合、立ち止まった顧客の29.8%が購入した一方で24種類のジャムを陳列した場合はわずか2.8%に留まったのです。

売場で顧客を観察すると、6種類のジャムの陳列の場合は、顧客が特定のジャムを手に取ってレジに向かう反面、24種類のジャムを陳列した場合は、顧客が売場でどれを買おうか長い時間悩んだ挙句、結局は購入せずに立ち去ったそうです。

つまり、顧客は品揃えが豊富になればなるほど迷いが生じ、結局は購入しなくなることがこの実験から明らかになったのです。

ですから、マクドナルドの場合も1000種類もメニューがあれば、顧客はどの組み合わせにしようかと悩んだ挙句、結局は購入しないという選択を行うことも十分に考えられるのです。

>>次ページ 残る2つの「かならず失敗する」理由は?

2.マクドナルドに健康を求めている人は少ない

今回の新メニューの目玉は健康を意識したハンバーガーです。

メインメニューでは、野菜がたっぷり取れる『ベジタブルチキンバーガー』、そして朝メニューでは『ベジタブルチキンマフィン』、また子供向けには3種類の野菜を練り込んだチキンパティを使った『モグモグマック』を投入し、最近の健康志向の顧客の取り込みを図ろうとしているのです。

ただ、このような新商品は、誰もマクドナルドに健康など求めていないという事実を踏まえれば、失敗する確率が非常に高いと思われます。

現に2009年、原田社長の時代にサラダなど健康志向のメニューを取り入れましたが、結局は失敗に終わっています。

≪参考資料≫

マクドナルドに健康を意識したメニューを求める声は少なからずあり、一時期、生野菜を使用したサラダ関連商品を充実させたが、多額の投資に関わらず売れ行きは芳しくなかった。2009年(平成21年)に行われた株主総会の質疑の中で、原田COOは「消費者はマクドナルドに、そういうものを求めていないのではないか?」と回答している。 (出典:Wikipedia)

3.1000通りもメニューがあると現場が混乱する

最後に現場でのオペレーションの問題です。

1000通りものメニューがあれば、現場のスタッフはより高度な対応を求められるようになります。

特に昼食など混雑した時にはミスが起こりやすくなり、注文の間違いや待ち時間の長さなどから印象が悪くなり、マクドナルドをもう2度と利用したくないという顧客も現れてくることも十分に考えられるのです。

>>次ページ 復活のために「メニューの豊富さ」よりも優先すべきものは?

マクドナルドは復活のためにどうすべきなのか?

それでは、マクドナルドは復活のために1000通りのメニューを提供するのではなく、一体どうすればいいのでしょうか?

私自身は、マクドナルドに今必要なのはメニューの豊富さではなく、「売り」となる看板メニューだと思っています。

何でもあるは、逆に何にもないに等しいといっても過言ではありません。

やはり「マクドナルドといえばこれだ!」という看板商品に力を入れてコアなファンの期待に応え、利益が上がる体質になってから他の客を取り込むメニューを投入して売上に拍車をかけていくべきだと感じています。

image by: Wikipedia

ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座
テレビ東京『WBS』への出演など、マスメディアで活躍するMBAホルダー・安部徹也が、経営戦略やマーケティングなどビジネススクールで学ぶ最先端の理論を、わかり易く解説する無料のMBAメルマガ。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け