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ネットで「爆買い」されるメイド・イン・ジャパンの弱点

世界中でこれだけ「品質が良い」と認識され、「高くても欲しい」という外国人も相当数存在する日本製品。しかし、無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』ではその世界にモノを売るネット通販の分野において「日本は完全に乗り遅れている」とした上で、今後の見通しについて詳しく分析しています。

東南アジアで急伸するネット通販 ─日本は完全に出遅れ─

中国人訪日客の「爆買い」をきっかけに、日本商品の中国通販サイトのビジネスも急速に伸びている。日本に来た中国人買い物客が日本の品物の品質、安全性、価格などを知って、帰国した後も通販を通じて日本商品を買う人が急増しているのだ。来日して日本商品の良さを確かめているので、わざわざ来日しなくとも通販で日本商品を取り寄せる人々が増大、日本側も通販で中国に品物を提供する企業や商品を届ける配送会社が忙しくなっているという。

日本商品を中国にインターネット販売する電子商取引の人気商品は、日用品や食品、化粧品、子供服、かつら、サプリメントなどで、マツモトキヨシは中国のアリババ集団の通販サイトに出品している。昨年9月から約100種類を売り出したが、現在は300種類に増やし、順調に伸びているという。ライオンは、今年からアリババのサイトで健康食品の販売を始め、食べ方などのレシピや問い合わせにも応じており人気上昇中だ。

ヤマトと配送システム構築へ

中国で通販サイトを扱っているのは、トップのアリババだけでなく、第2位の通販市場で2割のシェアを占める京東も、最近になって日本商品専用サイトを設け始めた。「世界で最も信頼感がある日本商品への要望は強く、今後も需要拡大は間違いない」と通販事業担当者は述べている。京東は、ヤマトホールディングスと組み日本の中小企業の商品もサイトに載せ、ヤマトに配送してもらう仕組みまで作り始めている。

中国では中間層が増え、来日観光客が増大。日本で買い物をし、満足した人が中国に戻ってから今度は通販サイトで購入するという循環ができ始めている。これなら、日本で爆買いし大きな荷物を持って帰らなくてもすむし、日本に行った時は通販で売ってないものを探せば、より買い物が楽しくなるという。

2018年には1兆4,000億円規模

2015年の訪日中国人の買い物、消費は8,000億円を超えたとされるが、中国国内の電子商取引の販売額もほぼ同額で、今後はさらに増大が見込まれ、2018年には1兆4,000億円に達すると予測されている。このため、アリババや京東集団は日本企業の通販サイトへの出店に協力しているほか、まだ知られていない日本の中小企業の広告を交流サイトで無料発信し、日本の新商品を探しているという。

中国のサイトに注目しているのは、商品を売る企業だけではない。アジア配送に力を入れ始めているヤマトや日本通運日本郵便などの配送事業者がコンビニと組んで海外配送にどんどん乗り出しているようだ。

ファミマと日本郵政と企業連合

たとえば、ファミリーマートは日本郵政グループと提携して海外配送に参入している。国内の店舗で荷物を預かり、ファミマの海外店舗で受け取るシステムを整備している。海外からの訪日客が買った品物をファミマの日本店舗で預かり、母国に配送する。

ファミマは国内に約1万2,000店を持っているが、海外に約6,000店(このうち台湾は約3,000店)ある店舗を、荷物の受け取り拠点に活用しようというのだ。国内から海外までの荷物の物流は日本郵便が担い、訪日客は母国の店舗で荷物を受け取るというわけだ。ちなみに、2015年の台湾からの訪日客の消費額は約5,200億円で中国に次いで第2位。また、荷物の受け渡しだけでなく、ゆうちょ銀行とファミマはATM事業でも協力する予定で、現在500台あるATMを2017年度から2年で3,000台増やす計画だという。

東南アジア通販のトップはドイツ・ロケットグループ

実は東南アジアのインターネット通販市場は、いまや地場企業もからんで猛烈な競争になってきたと言われる。日本やアジア系だけでなく、欧米系もどんどん参入しているのだ。なかでも、ドイツのロケット社が2012年に東南アジアに設立したLazada(ラザダ)はずば抜けており、タイの通販市場規模14.4億ドルのうち17.1%を占め1位。以下同様に、6.9億ドルのベトナムでは9.3%、16.8億ドルのインドネシアでは29.2%、9.7億ドルのシンガポールでは6.3%、5.1億ドルのマレーシアでは27.9%、3.5億ドルのフィリピンでは34.0%のシェアを占めている。

シンガポールを除くと、他の5カ国ではいずれもLazadaがシェア1位で、同サイトへの月間訪問者数はインドネシアが1,027万人、ベトナムは473万人に達している。2位以下の外資ではアマゾン(米)、アリババ(中)、アップル(米)などが目立つが、上位にはインドネシア、ベトナム、タイ、シンガポールなどでの通販が健闘しているのだ。

売上げ規模は、東南アジア6カ国を合わせて60億ドルに上ろうとしていて、月間訪問者数も3,000万人に達している。こうした通販大手に対し日本は完全に出遅れており、ようやくアジア通販に気がつき始めたと頃と言えようか。

爆買いブームの後を狙え

しかし、アジア通販でシェアを取るには、物を運ぶ物流インフラを整えないと勝てない。ヤマト、日本郵便、海外のコンビニなどとの連携が急がれよう。日本の製品、デザイン、安全性、品質には絶対の信頼がある、ここ23年が勝負時だろう。

外国人のインバウンド観光客の伸びに満足していると、買い物は通販、旅の楽しみは旅館や日本の四季や文化、おもてなし、などになっていくだろう。爆買いブームはせいぜいオリンピックまでの4、5年で終わるのではないか。大きな荷物を持って帰る旅行には、いずれ飽きが来るだろう。ネットの買い物増大は日本だけではないのだ。日本の企業地方のユニークな製品を作っているところは、アジアのネット通販に挑戦してみてはどうか。

image by: Shutterstock

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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