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ここにきて中国3大都市が謎の「バブル」。不動産市場の最後の狂乱か

経済成長率が7年ぶりの低水準となったことを公に認めた中国政府。しかしそのさなか、中国3大都市の不動産は未曾有の「価格急騰」を記録しています。いったいなぜ? この不可思議な現象について無料メルマガ『石平(せきへい)のチャイナウォッチ』の著者・石平(せき・へい)さんが独自の見解を述べています。

大都市で未曾有の急騰…中国不動産バブル、不可思議な「最後の狂乱」

中国政府公表の今年第1四半期(1~3月期)の経済成長率は6.7%である。2015年の成長率より0.2ポイント落ちて、7年ぶりの低水準となった。昨年の中国政府公表の成長率自体が「水増し」の結果であった。今年第1四半期は、さらに低くなっているから、中国経済はかなり低迷していることがよく分かる。

だが、同じ今年第1四半期、経済低迷の最中に、「一線都市」と呼ばれる北京、上海などの大都会で不動産価格が未曽有の急騰を記録したという不可思議な現象が起きていた。たとえば1月、北京、上海、深センの3大都市の不動産平均価格は前年同期比でそれぞれ11.3%、21.4%、52.7%も上昇した。

2月にも上昇が続いたが、3月になると、北京と上海の不動産価格の上昇率は前年同期比で、それぞれ17.6%、30.5%と拡大し、深センのそれは何と、62.5%という驚異的な数字となった。

3大都市の不動産価格暴騰は当然、全国的な波及効果を持つこととなった。国家統計局が発表した3月の新築住宅価格指数は、主要70都市のうち62都市で前月と比べて上昇した。

問題は、経済全体の成長率が低落し実体経済が沈没している中で、どうして不動産価格が急騰したのかである。その理由の1つは、昨年末以来、中央政府と各地方政府が実施した住宅ローンの頭金比率の引き下げや不動産取得税、営業税の減免措置など一連の「不動産振興策」にある。一部の地方政府に至っては、無一文でも不動産が買えるようなむちゃな「頭金0政策」まで打ち出した。

それでも不十分だと思ったのか、今年に入ってから中国政府はもう1つ、それこそ究極の「不動産市場振興策」を断行した。

それは、紙幣をむやみに増刷し、それを湯水のように市場に放出するという伝統の「経済救急策」である。今年の第1四半期、中国の各銀行が放出した新規融資の総額は何と4.61兆元約78兆円中国経済史上最高記録となった。その22%に当たる約1兆元分の融資が個人の不動産購入への融資となって不動産市場に流れ込んだ。

その結果、各大都会の不動産価格が急騰し、往時の不動産市場の「繁栄」が再びよみがえったのである。もちろんそれは、実体経済の沈没を食い止めるために、あるいは単に実体経済の沈没を覆い隠すために、中国政府が行った「カンフル剤注射」の結果にすぎない。いわば不動産市場の官製バブル」そのものであった。

もちろんバブルがバブルである以上、それはいずれはじける以外にない。3月下旬になると、「一線都市」での不動産価格のあまりの暴騰ぶりに恐怖感を覚えた中国政府が一転して、住宅ローンの頭金比率の引き上げなどを中心とした「抑制策」を実施し始めた。

その結果、4月24日までの1カ月間において、深センの新規分譲住宅の成約件数は前月比で半減した。北京、上海でも数割減となったから、価格が再び下落に転じていくのはもはや時間の問題である。中国政府の手によって作り出された「不動産官製バブル」は同じ中国政府の手によって引導を渡される見通しだ。

在野の著名な経済学者、馬光遠氏が「不動産市場の最後の狂乱」と称した今春の中国不動産バブルはこのように春の終焉と同時に破滅していく運命にあろう。

問題は、「最後の狂乱」が収まった後、中国政府は一体どうするのかだ。昨年の「官製株バブル」の破綻に続いて、今年の「官製不動産バブル」もはじければ、習近平政権にもはや、中国経済を垂死から救い出す手は何も残されていないのではないか。

image by: TonyV3112 / Shutterstock.com

 

石平(せきへい)のチャイナウォッチ
誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。
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