実家の「墓じまい」、最も多いトラブルは?

2016.05.11
by 横田吉木
墓じまい
 

「墓じまい」という言葉をご存知だろうか。

少子高齢化や、墓守の跡継ぎがいないなどといった理由で、すでにあるお墓を撤去して、遺骨を散骨したり、永代供養などに移すことを、墓じまいという。

ただし、これにも様々な問題が渦巻いており、トラブルが起きてしまうケースもあるという。そこでお墓一筋35年の「まごころ価格ドットコム」の石井代表に話を伺った。

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石井代表

まごころ価格ドットコム」は、日本初のインターネットを介しての墓石のカタログ通販をしかけた会社。今まで不透明だった業界のイメージを覆した、墓石のインターネット専門店だ。

墓じまいはご先祖様や子孫を大切に思った責任感の現れ

ーー今、墓じまいを行う人は増えているのでしょうか。

石井代表(以下・石井):墓じまいはすごく増えていて、一人息子と一人娘の結婚で、50歳になったとき、お墓はどうする? 両方のご両親はどうする? となって、墓じまいを考えるケースが一番多いです。

それに東京など生まれた土地から離れた場所で生活し、地方にご両親がいる場合も、お墓参りに行く、手入れが大変、などの理由で首都圏に持ってくるケースも多いですね。

ーー代々繋いできたお墓をしまうとなると、抵抗感がありそうなものですが……。

石井:私も最初は抵抗がありました。しかし実際に墓じまいを行った方々にインタビューしたところ、決してお墓を軽視しているわけではないということがわかりました。

現在、だれもお墓の管理をする人がいない、無縁のお墓が全国ですごく増えているんですよ。それを無縁にしたくないということで決断なさることが多いので、かえってご先祖様や子孫を大切に思った責任感の現れから、お墓をしまうんです。

宗教観の希薄化などと結びつけがちですが、家族形態が変わってきているために、選択肢のひとつとして出てきただけなんです。

ーーただ、仏事に関わることですから、トラブルなどもおこりそうですが。

石井:和尚さんに「墓をしまうことに加担するなどまかりならん」と言われてしまったこともあります。しっかり話せばわかる方もいらっしゃるんですけどね。

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「まごころ価格ドットコム」では墓じまいのパックも用意している

また解体屋さんもしっかり選んだほうが良いですね。過去に解体している最中に、隣のお墓を傷つけてしまったこともありました。遺骨の管理もポイントで、酷いケースだと、どれがどの遺骨かわからなくなってしまったというケースもありました。

散骨は心に穴を明けてしまうケースも

ーーそれはかなり問題になりそうですね。他にも抑えておきたいポイントなどありますか。

石井:墓じまいといっても、お骨を全て合葬や散骨するのではなく、一部を残すということがポイントです。これをしないで後悔したというケースも有ります。

ひとつは、すべて散骨をしてしまったケース。

お墓をしまって散骨してくれればいいという遺言から、子供はお墓をとじて散骨しました。その時に全部のお骨を散骨してしまったんです。

遺言だから親戚も何も言わなかったが、3回忌を迎え、「『千の風になって』のようには思えない。どこに手を合わせればいいかわからない。海のどこにいるのかわからなくて辛くなった」という思いを抱え、それが一端となったのか、うつ病になってしまった方もいました。

もうひとつは、永代供養で合葬(他の人と一緒の墓あるいは同じ納骨堂に納骨されること)を選んでしまったケース。

東北に実家があり、息子さんが東京で生活している一家で、お父様が「私たちが亡くなったら墓じまいをして、東京の永代供養にいれてくれればいい」と言い残されてお亡くなりになり、息子さんはそのとおりになさった。

ところが永代供養にはいろいろな種類があり、一般的には、一定期間は個別に管理をしてから、合葬する場合が多いのですが、息子さんが選らんだのは最初から合葬をする場合だった。

その後、実は本家だったことがわかり、亡くなったお父様のご兄弟たちから、「どこに参ればいいんだ。勝手に壊して」とすごい抗議を受けたそうで、親戚づきあいがゼロになってしまったということもありました。

ーーお墓じまい・お墓の建て替えで、盲点になってしまうようなことはありますか。

石井:古い石塔の問題ですね。魂抜きをしたからいいと。不法投棄をしてしまうという問題もでています。

それにお墓の引っ越しの場合、今までのお墓がお寺さんだった場合、檀家さんが減ることにすごい抵抗感をしめすので、そこでトラブルになってしまい、離檀料で何百万も請求されたといった ことも。

ただ、普段から、年一回でも行って、管理をしてくれているからとお金を包んだり、お付き合いをしていれば、そんな離檀料とかも言わないんですけどね。

墓じまいは手続きも大変

墓じまいには、上記以外にも、大変な一面が多く存在する。そのうちのひとつが手続き。

お骨を取り出すには、改葬許可が必要になり、改葬許可をとるためには、埋蔵証明(誰のお骨がはいっているか)と、お骨を移す先の、受け入れ証明を貰わないといけないため、労力としてはかなり高い。

このように、先祖を大切に思っていたりする気持ちがあれど、実行に移すのは難しい。現在では、今あるお墓の解体から受け入れ先のお墓まですべて行ってくれるサービスもあるため、そういったサービスを活用するのも手だ。

いつかは誰しも悩ませられるお墓問題だからこそ、元気なうちに情報収集を始めてみてはいかがだろうか。

●information
まごころ価格ドットコム

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