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【京都案内】ファンなら一度は訪れたい。源氏物語ゆかりの名所7選

古典文学の最高峰とも評される「源氏物語」。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、その物語の中に登場する、あるいはモデルになったとされる名所が紹介されています。「文学が大好き!」というあなたも「漫画でちょっと読んだだけ」というあなたも、日本最古のラブストーリーの舞台に足を運んでみませんか?

源氏物語ゆかりの地を巡る

源氏物語は平安時代中期に紫式部によって書かれた恋愛物語です。京都を舞台に主人公・光源氏が数々の女性と恋愛を繰り返す様子が描かれています。後半は「宇治十帖(じゅうじょう)」と題された物語で、宇治を舞台にした光源氏の息子・薫(かおる)の話です。

今回は源氏物語、特に桐壷から竹河宇治十帖までの巻に登場するいくつかの京都の名所などをご紹介します。京都御所、廬山寺、鞍馬寺、葵祭(上賀茂・下鴨神社)、野々宮神社、清凉寺、河原の院を順番に見ていきましょう。

京都御所

源氏物語は、光源氏の生活の場であった御所の内裏(だいり)から始まります。桐壺帝(きりつぼのみかど)の第2皇子として生まれた光源氏は、幼い頃から学問や芸事に優れていた少年でした。光り輝くように美しい源氏という事から光源氏と名付けられました。後に臣下(朝廷の家来)に下り朝廷に仕える生涯を過ごします。源氏物語は美男子だった光源氏が生涯に渡り多くの女性と浮世を流す様子を描いたとても長い恋愛物語です。

最初の恋愛は17歳の時でした。相手は亡き母・桐壷の更衣(こうい=女官)の後に母親となった5歳違いの継母藤壺です。母親と言え血のつながりはないのですが、後に2人の間に子供が生まれます。この時の子供は桐壺帝の第10皇子として扱われました。彼は冷泉帝れいぜいのみかど)として源氏物語に登場しています。

この後、光源氏は葵の上と結婚します。しかし、お嬢様育ちで高飛車の葵の上とはすれ違いの生活が続く事となります。

廬山寺(ろざんじ)

廬山寺は作者・紫式部が源氏物語を執筆した邸宅跡に建てられたお寺です。また光源氏と1度だけ関係を持った空蝉うつせみ人妻)の住まいがこの辺りだったと伝えられています。外見は地味で、小柄な女性だったようで作者である紫式部自身をモデルにして描かれたとの説もあるそうです。京都御苑のすぐ東側にあるお寺で、天台宗第18台座主・良源が創建した寺院で節分祭鬼法楽で有名なお寺でもあります。

結婚生活が上手くいっていなかった光源氏は心のよりどころを求めて様々な女性と恋愛関係に発展していきます。それは光源氏にとってごく日常的なことでした。

ある日、光源氏が乳母の見舞いに行った時に隣の垣根に咲く夕顔の花を気に入りました。すると、その邸宅の住人だったのが夕顔です。夕顔は光源氏にとても素敵な和歌を返したそうです。これに感動した光源氏はすぐに彼女と恋に落ちてしまいます。

ちなみに、夕顔は葵の上の兄頭中将とうのちゅうじょうの側室です。2人は互いに身分を隠したまま逢引を繰り返します。これを知ったかつての恋人の1人、六条御息所ろくじょうのみやすどころ)は面白くありません。彼女は源氏物語ではとても嫉妬深く、プライドの高い女性として描かれています。六条御息所は夕顔に激しく嫉妬し生霊となって取り憑きついに彼女を殺してしまいます。

鞍馬寺

image by:京都フリー写真素材

源氏物語には「なにがし寺」というお寺が登場します。この「なにがし寺のモデルになったと言われているのが鞍馬寺です。光源氏が、なにがし寺で出会ったのが源氏物語のヒロインと言われる紫の君(後の紫の上・当時10歳前後)です。紫の君は初恋の相手であった藤壺にとても似ていました。彼女の面倒を見ていた祖母が亡くなってしまい、自分が面倒をみているうちに寵愛するようになりました。そして、自分好みの女性に仕立てるために引き取り育てたのでした。

葵祭

葵の上と分かり合える夫婦になるまでに10年かかりました。そして葵の上にようやく光源氏との間に子供が生まれることになります。やっとの事で幸せを迎えた2人でしたが葵祭にて事件が起こります。

御禊の儀に光源氏が参列することになります。それを聞いて見物に訪れた葵の上と六条御息所が観覧場所を巡って大ゲンカしてしまいます。六条御息所の牛車のもとに後から来た葵の上の牛車がやって来て強引に割り込み、場所を横取りしたのです。この車争いの場面は源氏物語の有名な場面の1つですね。これに怒った六条御息所は夕顔と同様、激しい嫉妬の上葵の上に生霊として取り憑くのです。葵の上は無事子供を出産しますが、直後亡くなってしまいます。本当に怖い女です。

悲しみに暮れる光源氏でしたが、すぐに紫の君(当時15歳)に心惹かれるようになります。そして以後彼女と長い間過ごす事となります。ただ紫の上とは身分の違いからか結婚は出来なかったようです。

葵の上と過ごしている間も源氏物語には様々な女性が登場し光源氏はその都度心惹かれていきます。平安時代は一夫多妻制のような時代ですし、女性もより身分の高い人の目に留まることが最重視されていた時代です。権力を持った男性から寵愛を受けることが出来れば自分は元より家族までも面倒を見てもらえるようになり一生安泰となります。

野宮神社(ののみやじんじゃ)

嫉妬深い六条御息所は2人の光源氏の女性を呪い殺すほど光源氏が好きでしたが結婚を諦めます。そして彼女は娘と一緒に伊勢へ下る事を決めます。その前に、娘が伊勢の斎宮になるために野宮神社で禊を行ないました。2人の大切な女性を殺されたにも関わらず光源氏は伊勢へと下る彼女を哀れに思い野宮神社に向かいます。嵯峨野の森の野宮神社に籠もっていた六条御息所に会いに行ったのです。源氏物語の名場面の1つです。

今でも嵯峨野の竹林の小径(こみち)の側にある野宮神社は往時の姿を留めています。境内の小柴垣や黒木の鳥居などは源氏物語に描かれている描写のまま残されています。野宮神社はこの有名な源氏物語「賢木さかきの巻」にちなんで縁結びスポットとして人気があります。そのためいつも多くの女性参拝客で賑わっています。

清凉寺

image by:京都フリー写真素材

光源氏のモデルの1人と言われているのが嵯峨天皇の皇子源融みなもとのとおる)です。この清凉寺は、彼の別荘跡地に建てられたお寺です。一時期左遷させられ須磨などに住んでいるのですが、数年ぶりに帰京した光源氏は嵯峨に御堂を建てます。葵の上との間に出来た息子夕霧が元服します。養女として迎え入れていた六条御息所の娘は冷泉帝(藤壺との間に出来た息子)と結婚するようになります。光源氏の周囲は賑やかになものとなり自身も太政大臣に出世します。光源氏が最も栄華を極める頃です。

河原院跡

河原の院は、源融の理想郷の邸宅があった場所です。源氏物語の中では六条院(六条御息所から拝領した敷地に建てた邸宅)の名前で登場しています。この六条院の池に鷁首舟(げきしゅせん)を浮かべ皆と宴を楽しんだと描かれています。春夏秋冬の4つの庭をしつらえ、紫の上・花散里・秋好中宮・明石の君をそれぞれの季節の邸宅に住まわせたと伝えられています。その豪快で壮麗なお屋敷は当時から広く世に知れ渡り、「河原の左大臣」と呼ばれていたほどでした。

鴨川から水を引き入れて池をつくっただけではなく、陸奥国の塩釜の浦の景色を庭に取り入れました。なんと難波からわざわざ海水を運ばせて池に湛え、塩焼をさせてその景色を楽しんだそうです。そして、水底には海に住む魚や貝が飼われていたという本格的なものでした。

そんな光源氏が残した一句は百人一首にも選ばれています。

「陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰(たれ)ゆゑに乱れそめにし われならなくに」

現代語訳
陸奥で織られる「しのぶもじずり」の摺り衣の模様のように乱れる私の心。いったい誰のせいでしょう。私のせいではないのに(あなたのせいですよ)。

心に秘めた片思い、「忍ぶ恋を詠んだ歌です。恋してもかなうはずのない高貴な人や他人の妻への慕情に心を乱す男のことを歌った歌です。作者名は光源氏でも源融でもありません。ご存知「河原の左大臣」です。彼は太政大臣まで上り詰めた男ですが、やはり河原の左大臣としての方が有名なのです。

どうしようもない男と言えばそれまでですが、当時の貴族社会では特別珍しい生き方ではなかったのでしょう。平安時代、400年と言う長い間貴族中心の穏やかな時代だからこそそのような暮らしが出来たのでしょう。894年に遣唐使が廃止され、国外との交易がなくなると一気に国風文化が花開く時代でもありました。日本的な和の文化がとても華やかに発展する時代に優雅に生きた貴族の物語・源氏物語は日本文学の最高峰の作品です。

とても長い作品ですが、私は是非漫画で読んでみることをおススメします。私が源氏物語を夢中で読んだのは「あさきゆめみし」という漫画でした。平安絵巻のごとく描かれた宮中の様子や十二単などの衣装を目にしながら楽しめるのでとてもリアリティーがあります。

古典文学だからといって重く考える必要はありません。文学もエンターテインメントの1つなので楽しむものであり、楽しいと思える方法で接すればいいのです。日本人であるならば是非とも一度は源氏物語の面白さを味わって頂きたいと思います。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock

 

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