カルロス・ゴーンの不意打ち。日産・三菱「電撃」提携を各紙はどう報じたか?

 

本当に偶然?

【読売】は1面トップに「資本提携発表記事、関連で2面3面解説記事、8面と9面経済記事、25面はちょっと意外なスポーツ欄、36面社会面にも。見出しを掲げる。

  • 日産「三菱ブランド維持」
  • 計960万台 世界3強に迫る
  • 燃費偽装 重い補償
  • 「軽」以外にも拡大か
  • 三菱自本社 きょう立ち入り 国交省
  • 再建急ぎ電撃提携
  • 三菱自 不正発覚で方針転換
  • 日産 東南アジア拡販にらむ
  • 信用の失墜が招いた再編劇(社説)
  • 業界再編 活発化も
  • 「軽」頼み連合 険しい道
  • 信頼回復・EV開発カギ
  • ゴーン氏 提携に実績 混乱ない
  • 益子氏 近い相手 自然な流れ
  • 「浦和・横浜Mの情報収集」 三菱自再建でJチェアマン
  • 日産傘下入り 三菱自 従業員ら複雑
  • 「ほっとした」「雇用残して」

uttiiの眼

《読売》は、基本的に日産と三菱自の宣伝戦略に乗った形(笑)。1面トップは提携話だけで、しかも世界販売台数を単純な足し算で「960万台」とはじき出し、無邪気に世界3強に迫るとはしゃいでいる。疑惑の全貌も未解明なのに、いつ信用回復が成し遂げられたのか、教えてもらいたいものだ。

2面には燃費偽装に関する記事があるが、《朝日》が詳しく分析しているような中身が全く無い。どうやら、11日の報告書を入手できていないようだ。少なくとも「本社の指示」あるいは「本社社員の指示」という重要な結論はどこにも書いていない

提携話の方は3面の解説記事「スキャナー」。今回の提携に至った理由の解説が興味深い。三菱自はこれまで、他社との資本提携に慎重だったという。それは、「自動車業界では大型提携の失敗例が多く、業務提携にとどめる方が新型車の開発などで柔軟に対応でき、効果が大きい」からだという。ところがその姿勢が一変したのが今回の燃費偽装問題。自力での再建を早々と断念し、日産傘下に入ることになったと。日産側は、「偽装発覚前よりも割安で出資できることも日産の背中を押したとみられる」と《読売》はやけにフラットな書き方をしている。

しかし、ちょっと考えてみよう。そもそもこの燃費偽装の発覚は、提携工場で生産された軽を日産が独自に調査したら、燃費が公称よりも低く、三菱自に調査を求めたことが発端。少なくとも、このことから言えるのは、三菱の不正を暴くきっかけを作った日産は、そのことによって、停滞していた資本提携交渉を驚くほどの勢いで簡単に仕上げることができ、しかも、偽装発覚によって株式取得に必要な資金を4割以上も安くすることができた(日産による三菱自株取得額は一株468円。発覚前日の終値は864円だった)。さらに、政府からも「地域経済、雇用への貢献」ということで歓迎、感謝されるおまけ付きだ。もちろん、これを、“偶然の出来事”とみなす自由は誰にでもあると思うが、読者の皆さんはどう思われますか?

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