カルロス・ゴーンの不意打ち。日産・三菱「電撃」提携を各紙はどう報じたか?

 

ようなゴーン氏

【毎日】は1面トップで提携話、3面に解説記事「クローズアップ」、7面経済面とスポーツ面に関連記事。見出しを拾う。

  • 三菱自 日産傘下入り ゴーン氏「好機だった」
  • 燃費不正で急展開
  • 名門・三菱 お手上げ
  • したたか ゴーン流
  • リストラに警戒感
  • メーカー集約加速
  • 開発競争 中堅に厳しく
  • 外部人材登用に説得力
  • 国交省、本社立ち入りへ

uttiiの眼

《毎日》は、偽装問題から提携話、さらにその先の、「ゴーン戦略」にまで関心が飛んでいったようだ。一面記事の見出しが「ゴーン氏「好機だった」」となっているのに照応して、掲載されている写真が凄い。ゴーン氏が鷹のような目つきで前を向き右手で誰かを指さしている。多分、質問者を指定したシーンなのだろうが、写真の印象は、自分が猛禽類に狙われているような気分に陥る。怖い(《読売》の3面も同様の写真を掲載)。で、そのゴーン氏の後ろに、垂れ眉毛で気の弱そうな三菱自の益子修会長がキョトンとした表情で立っている。もう、まるで勝負にならない感じ。解説記事の見出し「名門・三菱 お手上げともシンクロしているような見事な写真使用。

一面記事は、この「好機」について2か所で触れている。1つはゴーン氏の言葉。「日産にとってこれは好機だ。三菱自にとっても好機になる」という“好機”。提携によって、両社にとって良いタイミングだということ。もう一つは、株価急落によって調達費用が激減したことをゴーン氏が“好機”と判断したのだろうという記者の見立て。ゴーン氏にとってのチャンス当来ということ。

3面の記事、前半は、そのゴーン氏のしたたかさに焦点を合わせている。ゴーン氏にとっての三菱自の価値は、SUV、四輪駆動技術、東南アジア市場という表向きの要素に止まらず、プラグインハイブリッド技術なども含まれる。また、軽自動車については三菱の生産体制を回復させた方が得策との判断があったこと、そして、何と言っても株価が安くなり、また以前は支援に回った三菱グループ御三家もそれぞれに苦しい台所事情を抱え、三菱自は他に後ろ盾を見つける必要に迫られていたなどの事情も。最後に、三菱自は「独立路線に限界が見える中、不正問題に背中を押される形で日産の軍門に降った形だ」と述べる。

記事の後半は提携後に何が起こるか、その行く末について書かれている。会見でのゴーン氏は、資材の協同調達や技術開発での協力など、いわば“綺麗事”を述べていたが、三菱自系のメーカーは、ゴーン氏の「コストカット」に警戒感をあらわにしたという。かつて、日産再建中には従業員の14%、2万1千人を削減したゴーン氏は、今回、会長を含む取締役の3分の1を派遣する。益子会長は、記者会見場から退出する際、記者団から「水島製作所の雇用はどうなるのか」との質問に無言を通したという。

実は、今朝の《毎日》、日産と三菱自の提携話の他に、特に大きく扱っているテーマがある。鴻海によるシャープ支配の話だ。「日本人社長」も反故にされ、守るはずの雇用も「7000人削減検討」と後退した。不採算部門もやがて切り離されていくだろう。《毎日》には、日産と三菱自の話は鴻海とシャープの話と見事に二重写しに見えているように感じられる。

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