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二番煎じでない二番手の強み。アラジン高級トースターが売れている訳

近年、新たなマーケットとして注目を集めている高級トースター市場。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、そのパイオニアを意識しながらも、先行者の引けをとらない「2番手の戦略」を発揮し業界を賑わせている「日本エー・アイ・シー」を紹介しています。

2番手の戦略

今回は高級トースターで人気の企業を分析します。

日本エー・アイ・シー(ヒーターメーカー)

今回は日本エー・アイ・シーが作る「アラジン グラファイト グリル&トースター」にフォーカスをあてます。

戦略分析

■戦場・競合

■強み

1.パンがおいしく焼ける(通常のトースターと比べて)

2.メニューいろいろ(「バルミューダ」のトースターと比べて)

3.調理が速く済む(競合全体と比べて)

⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス

★世界初・業界唯一の特許技術「遠赤グラファイト」搭載

上記のような独自の技術があるからこそ、強みを実現できているといえます。

■顧客ターゲット

戦術分析

■売り物

 ● アラジン グラファイト グリル&トースター

■売り値

■売り方

■売り場

まとめ(戦略ショートストーリー)

トーストの味にこだわる方をターゲットに、世界初・業界唯一の特許技術「遠赤グラファイト」ヒーターに支えられた「パンがおいしく焼ける」という強みで差別化を実現しています。

付属のグリルパンによりグリル調理などが可能になるため、レシピサイトでさまざまなレシピを紹介する(売り物と売り方を整合させる)ことで、消費者の支持を得ています。

分析のポイント

「2番手の戦略」

高級トースター市場は「バルミューダ」が切り拓いた市場で「バルミューダ」の一人勝ちともいえる状況でした。「バルミューダ」については、本メルマガでもVol.24で分析しています。

●「今回は『バルミューダ』を分析します

その高級トースター市場に後から(2番手として)参入したのが、「日本エー・アイ・シー」です。

「バルミューダ」の人気が高いため、似たような(真似したような)商品では注目を集めることは難しいですが、対抗できる商品が現れれば、自ずと注目を浴びることになります。その状況の中で、「日本エー・アイ・シー」はバルミューダに対抗できる新しいアプローチの商品をリリースしました。

美味しくパンを焼く秘訣は「パンに水分を残す」ことであり、「バルミューダ」も「日本エー・アイ・シー」もパンに水分を残すということを目指しているのは同じですが、アプローチが異なります。

「バルミューダ」は独自のスチームテクノロジーでパンの中の水分を確保するのに対して、「日本エー・アイ・シー」は特許技術「遠赤グラファイト」により、トースター内を急速に温めることでパンの中の水分を確保しています。結果として、「パンがおいしく焼ける」という価値の比較では、甲乙つけがたい、かなり近い水準のようです。

一方で、「日本エー・アイ・シー」は「グリル」「オーブン」「蒸し料理」など多彩な調理が可能なことやパンを同時に4枚焼けるといった、バルミューダにない価値を付加することで価値を高めています。

そして、「バルミューダ」の特徴でもあり弱点ともいえる、パンを焼く前に水を入れるというひと手間が必要ないということも、差別化の一つの要素になっています。

さらに、売り値もトースターとしては、高級カテゴリーに入りますが、「バルミューダ」よりも2割くらい安い設定としています。

このように、「日本エー・アイ・シー」はトースターの本質的な価値である「美味しく焼ける」という価値では引き分けに持ち込み、それ以外の「バルミューダ」が持っていない価値で勝負しているわけです。

やはり、「美味しさ」というのは目に見えないものですので、目に見える「多彩な調理機能」や「売り値」などは価値をアピールしやすい部分ですし、この部分をアピールしているということから、バルミューダを意識していることが感じられますね。

要するに、同等レベルの価値を提供するだけでは、パイオニアに対抗することは難しいということです。例えば、ペットボトルのお茶飲料などもそうですが、パイオニアである「おーいお茶(伊藤園)」の牙城を崩すのは簡単ではありませんね。ですが、パイオニアが強みをもっていない部分をうまく突ければ優位に戦うことができるのです。

それを実践してみせてくれたのが、「日本エー・アイ・シー」ということです。新しい市場を開拓した「バルミューダ」も素晴らしいですが、「日本エー・アイ・シー」のように後から参入してきて、その市場を盛り上げる存在も重要です。なぜなら、競争の渦中の企業にとっては、素直に喜べないとは思いますが、競争があるからこそ、新しい価値が生まれるともいえますし、選択肢が広がることになりますので、顧客にとっては嬉しいことですからね。

image by: 「日本エー・アイ・シー株式会社」 HP

 

MBAが教える企業分析
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