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中国戦艦が日本の領海を横切る挑発。なぜここまで追い込まれたのか?

一時はアメリカを押しのけ覇権国家になるとまで言われていた中国ですが、度が過ぎる言動で多くの国を敵にまわし、唯一の頼みだった経済も崩壊寸前とささやかれています。その焦りからか「挑発行動」が止まりません。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが、現在の中国の状況を分析しています。

日米印を挑発し、自滅にむかう中国

先日、中国とロシアの軍艦が、「尖閣周辺の接続水域に入った」というお話をしました。中ロの意図についてはこちら。

尖閣に中国、ロシア軍艦が同時に出現。日本は何を試されてるのか?

ご存知の皆さんも多いと思いますが、実をいうと、中国はこの後、もっと大胆な行動をとっています

中国軍艦が一時領海侵入 口永良部島周辺海域 海警行動は発令せず
産経新聞6月15日(水)11時7分配信

防衛省は15日、中国海軍の艦艇が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に入ったと発表した。同海域の領海に中国艦が入るのは初めて。中国艦はすでに領海を出ている。自衛隊に対して海上警備行動は発令されていない。政府は警戒監視を強めて情報収集を進めるとともに、中国の意図の分析を急いでいる。

防衛省によると、15日午前3時30分ごろ、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が、口永良部島西方の領海を南東に進むのを海上自衛隊のP3C哨戒機が上空から確認した。同艦は約1時間半後の午前5時ごろ、鹿児島県の屋久島(鹿児島県)南方から領海を出た。海自は中国艦に「日本の領海に入っている」と無線で警告した。

どうですか、これ? 中国の軍艦は15日、尖閣周辺の接続水域どころか、鹿児島県のすぐ南の領海に侵入していた!これ、非常に重大な事態ですが、知らなかった読者さんもいたのではないでしょうか? というのも、日本のテレビでは、ほとんど報じられていなかったからです。

確かに、「北海道の地震」「舛添さん辞任」「イチロー偉業達成」など、重大な出来事が他にもあったのは事実です。しかし、「中国の軍艦が日本の領海に侵入した」事実を、ほぼスルーするテレビニュースって、何なのでしょうか? 他の国では、ありえないことです。「メディアが、日本人の『平和ボケ』を助長している」と批判されても仕方ないでしょう。

中国の挑発が激化している。事情を知る人は、日本の未来を心配されていることと思います。もちろん、私も同じです。しかし、実をいうと、日本はどんどん有利になっている」のです(もちろん、油断は禁物ですが…)。

中国は、日米印を挑発する

「なぜ、中国の軍艦は、日本の領海に入ったのだろう?」。この質問に、産経新聞は、こう答えています。

防衛省幹部は中国の狙いについて「10日から同海域で行っている日米印共同訓練『マラバール』に参加しているインド艦艇2隻を追尾した可能性もある」との見方を示している。
(同上)

そうなんです。日本アメリカインドは6月10日から、共同訓練を実施していたのですね。この訓練は、もともとアメリカとインドが行ってきた。しかし、去年から日本も参加することになり、日米印の安保面での連携が、強固になってきた。もちろん、「対中国」です。この訓練がらみで、中国は、インドに対しひどい挑発をしています

中国軍がインド北部に侵入 領有権主張、日米との連携強化に反発か
産経新聞6月15日(水)19時18分配信

【ニューデリー=岩田智雄】インドと中国が領有権を争い、インドの実効支配下にある印北部アルナチャルプラデシュ州に今月9日、中国人民解放軍が侵入していたことが分かった。印国防省当局者が15日、産経新聞に明らかにした。

中国は、インドが日米両国と安全保障で連携を強めていることに反発し、軍事的圧力をかけた可能性がある。

中国兵約250人は、州西部の東カメン地区に侵入し、約3時間滞在した。

さらに中国は、アメリカ軍も挑発しています。ニュースウィーク日本版、6月16日から。

中国艦、領海侵入した日に日米印の共同軍事訓練で米空母を追尾
2016年6月16日(木)10時25分

中国の軍艦が日本領海に侵入した15日、沖縄本島の東方沖で行われている日、米、インドの共同軍事演習「マラバール」にも中国艦の影がちらついた。

3カ国は対潜水艦戦などの訓練など通じ、海洋進出を強める中国をけん制しようとしているが、中国は情報収集艦を派遣して米空母を追尾した。

挑発で、中国の孤立は進む

このように、日米印を挑発している中国。その結果は、どうなのでしょうか?

これ、別に専門家や研究者じゃなくてもわかります。日本、アメリカ、インドは、中国をさらに警戒するようになるでしょう。そして、日本、アメリカ、インドの関係は、ますます強固になる。中国は、ますます孤立していきます。特に、インドを日米の方に追いやってしまうのは中国にとって大きな失敗です。

インドは、伝統的に「自立外交」を貫いてきました。日本、アメリカ、ロシアと良好な関係を保ち、領土問題のある中国とも和解の道を模索していた。しかし、今回の事件で、インドは日米をより重視せざるを得なくなるでしょう。

何が起こっているのか?

最後に、これまでの大きな流れを振りかえってみましょう。

08年、アメリカ発「100年に1度の大不況」が起こる。09年、アメリカは沈み、中国は浮上した。中国は以後、凶暴化していく。10年、尖閣中国漁船衝突事件。中国は全世界で、「尖閣はわが国固有の領土であり、『核心的利益』である!」と宣言する。2012年9月、日本政府、尖閣を「国有化」。日中関係が、戦後最悪に。12年11月、中国、「反日統一共同戦線」戦略を、ロシア、韓国に提案。「沖縄を奪う意志」を明確に示す。証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

2015年3月、「AIIB事件アメリカは、「中国打倒」に動き出す。2015年9月、習近平訪米するも冷遇され、全世界が米中関係の悪化に気づく。

そして2016年。もはや誰も、「中国は、世界経済のけん引役だ」とはいわない。逆にソロスは、「ハードランディングは不可避」と宣言している。中国経済の繁栄は終り、習近平は孤立を深め、ますます攻撃的になっている

1937年、日中戦争がはじまったとき、中国は、アメリカ、イギリス、ソ連を味方につけていました。孤立させられた日本が負けたのは当然だったのです。しかし、日本は今回、アメリカ、インドを味方につけています。ベトナム、フィリピンも味方。オーストラリア、東南アジア諸国も概して味方。欧州は、フラフラし、「AIIB」「人民元のSDR構成通貨入り」問題では、はっきり中国側につきました。しかし、今後中国経済が沈むにつれ、欧州も離反していくことでしょう。

中国側からの激しい挑発は続いています。しかし、孤立を免れている日本はどんどん有利になっているのです。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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