グルテンフリーダイエットに科学的根拠なし。そもそも誤解だった

 

そもそもグルテン除去食はグルテンを食べると体調が悪くなってしまう特定の体質の人たちに向けに作られたものです。つまり、グルテンフリーは健康に良いからという理由ではなくて、 そもそも食べることができない人たち向けの食品ということなのです。その筆頭がセリアック病という免疫疾患を持っている人たちです。少し細かい話になりますが、免疫学的にはセリアック病患者は独特なHLA(人白血球型抗原)の型をしています。彼らのHLA はグルテンの構造であるグライアジンに強く結合します。するとT細胞を始めとした免疫反応が惹起(じゃっき)され、炎症性サイトカインという因子が分泌されます。

ひらたく言えば、免疫がグルテンのことを病原体のように勘違いしてしまっている状態です。体の中に病原体がいれば炎症が起きるように、セリアック病患者の体の中にグルテンがあると炎症が起きてしまうのです。その結果、腸内粘膜がダメージを受けてしまいます。結果的に腹痛や下痢、腸内粘膜の破壊による栄養失調などが起きます。

一方で、セリアック病との診断はされていなくても、グルテンを摂取することによって下痢などの症状が出てしまう人もいます。こういった人たちは「グルテン不耐症」と最近分類されていますが、医学的にはまだデータが整っていません。さらに、セリアック病でもグルテン不耐症でもないけれども、小麦アレルギーの人もグルテンを含む食品を避けると症状が改善する場合があります。加えて、最近では腎疾患のある小児がグルテンフリーの食事にすると症状が改善するという臨床報告もされています。まだまだ研究が必要な段階ではありますが、グルテンはセリアック病以外の自己免疫疾患やアレルギー疾患においても炎症を引き起こすケースがあるようです。

誤解のないように付け加えておくと、「グルテンを食べるとセリアック病やアレルギーになる」という意味ではありません。特に自己免疫疾患に関しては遺伝的な要素も大きいので、今まで小麦製品などを食べても大丈夫なのでしたら、グルテンフリーを選ぶべき科学的根拠はありません。また、選んだことで健康上の利点があるかということも実証されていませんし、ましてや減量効果があるということも科学的には報告されていません。グルテンフリーで減量に成功したという体験談も、グルテンを摂らないように小麦製品を避けることによって炭水化物の摂取量が減り、その結果糖質や摂取カロリーが落ちたので減量に繋がったという可能性も否めません。グルテンフリーが減量に本当に効果があるのかどうかを検証するならば、グルテン以外の栄養素やカロリーをそのままに、グルテンを除去するだけで減量できるのかどうかを調べなければ結論は出せないのです。

ということで、ハリウッドのセレブの影響でブームになったグルテン除去食ですが、本来は特定疾患のある人用のもので、一般的な減量目的として取り入れるには根拠がないということがお分かりいただけたかと思います。加えて、小麦製品にも様々な栄養価や健康促進効果があるので、むやみに避けることでそれらの栄養を摂り損なってしまう可能性もあります。

 image by: Shutterstock

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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