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機械が握る「寿司ロボット」は、寿司職人を殺すのか?

人気コンサルの永江一石さんが、さまざまな質問に答えてくれる人気メルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』。今回の質問は寿司職人について。「2ヶ月で寿司職人になれる」という謳い文句で話題の専門学校「東京寿司アカデミー」の人気や、ロボットの握る寿司の品質向上もあり、昔ながらの寿司職人という存在はいなくなるのではないか?という質問者からの疑問に、永江さんがコンサルらしい視点で、目からウロコの回答をしています。

たった2ヶ月で寿司職人になれる?

Question

短期で寿司職人になれる東京寿司アカデミーという学校があります。

こちらによると2ヶ月で職人になれるとのことですが金額が86万円とかなり高額です。現在寿司といえば人が握らなくても回転寿司など機械で代替しておりますし、今後人間が寿司を握ることはなくなるのではと思っております。

ようは、ここで高額のお金を払って頑張って寿司職人になったとしてもすぐに寿司職人の仕事がなくなるのでは?と私は思っております。これに関して、今後の寿司業界についてのお考えと、この2ヶ月で職人になれるという寿司アカデミーは永江さんはどうお考えでしょうか? よろしくお願いします。

永江一石さんの回答

寿司アカデミーについては、以前ホリエモンの発言が話題になりましたね。
初めに結論を申し上げますと、いくら機械が発達しても将来寿司職人がいなくなることはあり得ないと思います。なぜなら、これは「レトルト食品があるからカレー屋は潰れるか」や「ユニクロがあるからオートクチュールはなくなるか」という質問と同義になってしまうからです。

失礼ながら、質問者さんはお若いのでもしかしたら回転寿司しか行ったことがないのかもしれませんが、本物の高級寿司店というのはただ食欲を満たすためだけに行くのではありません。一人単価が一万円を超えるような寿司屋さんでは、寿司を握る動作や魚をおろす手さばき一つ一つが芸術的で、それを見ることも一つの楽しみなんです。

また、機械では全ての寿司を均一に握りますが、本物の職人さんはシャリの大きさもお客さんによって変えてくれます。こちらから特に何も言わなくても子どもやお年寄りに合わせてシャリを小さくしたり、二つに切って食べやすいサイズにしてくれたりもします。そういったおもてなしの心は、機械では決して代替できません。

実は寿司アカデミー的なものは30年以上前からあり、わたしも物凄く前に取材に行ったことがあります。このビジネスモデルはどういった層をターゲットにしているかというと、回転寿司店を始める会社が社員を研修に出したり、海外に出店したい人向けでしょう。つまり、お客さんが寿司に高い品質を求めていないところではアカデミーに通うことである程度の経験を積めると思います。

ただ前述の通り、たった二ヶ月の講義では寿司職人の一番大切な要は学べません。すなわち、魚の目利き、仕入れです。魚の旬の時期や脂の乗り方、美味しい魚の見極め方は座学じゃ決して学べないんです。何年も掛けて市場で実際の目利きを学びます。2ヶ月じゃ魚の旬も、旬の味とほかの季節の味の違いも分からないですよね。

また高級寿司店では、プロの職人さんとカウンター越しに会話をするのも醍醐味ですので、そのためには魚に関する豊富な知識が必要です。二ヶ月限定の寿司アカデミーでは年間を通した魚の旬も学べませんので、何十年も修業を積んだ職人さんの経験値にはとても敵いませんよね。

一言でいえば、寿司アカデミーは単に機械と同等の技術を身に付けるには適していますが、それ以上のことは学べないというのがわたしの考えです。

極端な話をすると、単に魚をおろして寿司を握るだけなら、将来的にセンサーを備えたロボットが代行できるようになると思います。いまの回転寿司のロボットがおもちゃに見えるくらいのものはできるでしょう。しかし、卓越した技術の人間の握る本物の寿司はそれとは別の物だと思いますよ。

image by: Shutterstock

 

永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ
著者:永江 一石
商品開発や集客プロモーションを手がける会社を設立し多くの企業のマーケテイングを行う。メルマガでは読者から寄せられたマーケティングのお悩みに対し具体的な解決策を提示。ネットショップや広報担当を中心に多くの購読者から支持されている。
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