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「EU離脱」で変わった潮目。世界は今後「二極化」し対立する

いまだ沈静化する気配のないイギリスの「EU離脱問題」ですが、多くのメディアが「移民に不満を抱いた人たちが声を上げた」と報道しています。しかし、高城剛さんは自身のメルマガ『高城未来研究所「Future Report」』で、移民の多いロンドンは「EU離脱」をそれほど強く望まなかったと指摘。最もEUに不満を抱えているのは、イングランド地方に多く住む「ある層」の人たちであることを明かしています。

英国のEU離脱で欧州は分裂する

今週は、先週に引き続き英国のEU離脱につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。

先週金曜日2016年6月23日、「欧州連合離脱是非を問う国民投票」が英国で実施され、結果は残留48.11%離脱51.89%となりまして、英国はEUから離脱することが決定しました。

この結果を受けまして、フランスでは国民戦線代表マリーヌ・ルペンが、オランダでは自由党の党首ヘルト・ウィルダースが、EUからの離脱の是非を問う国民投票の実施を求めており、今後ドミノ倒しのようにEUが崩壊するのではないか、と言われています。

この英国の国民投票の明暗を分けたのは流入する移民で、2004年以降EUが拡大するに従い、英国に移住する移民の数が急上昇し、その移民に国内労働力が移転し、公的サービスにも大きな負荷がかかったことが要因だとされています。

今週、Newsweekのコラムにも書いたように、僕自身の経験からしても、英国は様々なキャパシティを超えているように感じていますが、実はその要因は移民だけではなくグローバリゼーションとロボティックスに職を奪われた中間層の喪失」に、問題の本質があると僕は考えています。

まず、今回の「欧州連合離脱是非を問う国民投票」の分析データを見てみることにしましょう。

このデータを見る限り、イングランドの地方が、特に強く離脱を望んでいることが良く理解できます。
彼らは郊外に住む「先進国の中間層」と呼ばれていた年配者で、確かにロンドンは移民でいっぱいですが、グローバリゼーションによる恩恵が多いのも確かで、離脱を望まないのも納得できます。

また、次に「先進国の中間層」の現状を考えるために、世界的な所得の伸び率のデータを見ますと、やはり「先進国の中間層」だけ、過去25年で相対的に没落しているのが、よくわかります。

このようなことから僕は、グローバリゼーションと情報化、さらに今後はロボティックスによって、もっと二極化するだろうと考えているのです。

今回のEU離脱の声を高らかに上げていたのは、主には変化を拒んだ地方の年配者ですが、必ずしも年配だとは限りません。

東西冷戦が終わって四半世紀、現在は、グローバリゼーションと情報化が「出来なかった人たち」と「出来た人たち」の戦いへと世界は変わったことを教えています。

これが米国ではトランプ躍進の背景にあり、日本の未来の光景とも言えます。

世界は、あたらしい時代に入りました。

それは、先進国と言われた国で暮らす人たちの二極化による対立で、今後ある程度までは新興国の成長が続きますが、どこかでそれも踊り場に差し掛かる可能性が高くあります。

そこが、世界の大きな分岐点となるでしょう。

この問題は、当面解決しません。

それゆえ、一時的には沈静化したように見えても、再び必ず噴出することになるはずです。

なぜなら、なくなったのは経済的な意味での「中間層」だけでなく、それを支えていた「みんな」という意識だからなのです。

image by: Shutterstock.com

 

高城未来研究所「Future Report」』より一部抜粋

著者/高城剛(作家/クリエイティブ・ディレクター)
1964年生まれ。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。毎週2通に渡るメルマガは、注目ガジェットや海外移住のヒント、マクロビの始め方や読者の質問に懇切丁寧に答えるQ&Aコーナーなど「今知りたいこと」を網羅する。
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