MAG2 NEWS MENU

意外にも日本と似ている?イギリスがEU離脱で見せつけた「島国根性」

世界中が驚愕したイギリスの「EU離脱」という選択。今回の結果は、移民問題をはじめ昨今の英国をとりまくさまざまな問題が複雑に絡み合った末に出された答えだと考えられますが、無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、その原因のひとつとして「ジョン・ブル精神」と呼ばれるイギリス独自の精神論も関係しているのではないかと分析しています。

イギリスのEU離脱。土壇場に出てきたジョン・ブル精神

このところイギリスのEU離脱で世界中が大揺れに。乱れるのは予想通りという感じがするが、おそらくまだまだ乱高下は続くであろう。6月27日の東京市場は一旦落ち着きをみせたが、週末は急落した反動により357円高。流れとしては今後もまだまだ乱高下が続く見通し

特に日本の株式市場では、ヨーロッパ事業を手掛ける金融機関自動車関連銘柄が下落した。また、投資家のリスクを回避する目的で円が1ドル101円台の円高に進んだが、米欧と比較すると何となくおよびではなく、端の方で動いているという感じだ。

イギリスには日本の企業も1,000社近くともいわれるほど多数進出している。ヨーロッパやニューヨークは相当荒れ、フランス、ドイツ、イギリス市場では2~3%のマイナス、6月28日のニューヨーク市場はダウが300ドル以上も下落した。これは、イギリスとEUの協定の形がはっきり出るまでは、このような乱高下が続くとみていいだろう。

混乱の極地

イギリス自体離脱を選択したものの、国民の反発も多く、現実に票がほぼ半々。これまで離脱を叫んでいたが「EU市場とのアクセスは維持する」「EUからの離脱を急ぐことはないが人とモノの移動はできない」など様々な妥協的なことを言い出している状況。

他方、EUもイギリスとうまくいかなくなるのは得策ではないことから、イギリスをEUの準加盟国にしてはどうかというようなことをドイツが言い出している。この納め方については、まだまだもめそうである。

EUはともすると離脱のドミノ連鎖が起こることを恐れており、今後どこかでうまく妥協できないかということを探っていくであろう。イギリス国内においても分裂の危機があり、スコットランド、アイルランドではEUの残留を希望、金融・経済界でも残留を希望している。さらに、ロンドン単体がイギリスから独立するのがよいという意見も出てきているという状況で混乱の極地。

スコットランドの動きにも注目

スコットランドでは住民投票の声も上がっており、今後自分たちが独立してEUへ加盟することも考えられる。他にもオランダの極右政党の続伸なども出ている。オランダでは今回のことは「イギリスエリートたちの敗北」という声も出ている。デンマーク、スェーデン、フランスも同様に極右政党が伸びてきているなど、非常に混乱しているように思う。

これらの動きを見ていると、イギリスの今回の選択はいろいろ考えさせられる。国民投票前の世論調査では拮抗し、どうなるか未知数だった。しかしながら、イギリスの人たちは最終的に離脱を選んだ。最後の最後はイギリスの人達の中では「残留するだろうという声が多かった。私自身も経済の損得を考えたら残留するだろうというように以前の放送でも話した。私は、甘くみていたなというように思う。

太陽の沈まぬ国も…

なぜ、こういう離脱に傾いていったのかというと「ジョン・ブル精神」のようなイギリスの精神論が1つの要因としてあったように思う。

ジョン・ブルは典型的イギリス人で、頑固で不屈で誇り高いイギリス人魂。ノブレス・オブリージュ(身分の高い人が果たすべき役割)やジェントルマンシップとならび評される言葉である。

イギリスは、15、16世紀の大航海時代以降スペイン、オランダ、ポルトガルといったところをおしのけ世界の覇権をにぎり、20世紀まではイギリスが世界を支配していた。それは、「イギリスは太陽の沈まぬ国」とまでいわれていた。しかしながら、ドイツが台頭し、結局ヨーロッパを席巻。イギリスはアメリカに頼んで救済してもらった

ジョン・ブル精神を発揮!?

そういったイギリスからすると、ドイツとフランスが中心となって作ったEUに対し、もともと我慢ならなかったところもあるのだろう。特にサッチャー元首相は、元々ドイツが大嫌いだった。その中でどんどんドイツが強くなり、今回の離脱の話が出てきて、よし、ジョン・ブル精神を発揮してやろうというようなこともあったように私は思った。

これまでイギリスは、EUに加盟してもユーロには加わらずシェンゲン協定は拒むというような中途半端なところで抵抗してきた。EUへは経済損失が大きいことから加盟したが、これは妥協の産物のようにみえる。イギリスの国内が半々に割れたことは、生まれた時からEUに加盟している若いEU世代、金融街、経済界など経済面での損得することを重んじた人たちは残留を選択した。他方、中産階級のような自分たちで生きているようなところは離脱を選択といったように票が分かれたのではないだろうか。

タイタニック号にまつわるエピソードも

「ジョン・ブル」も当初は田舎の人を象徴する言葉であったが、そのオリジナルの人達がやるんだということも考えられる。オリジナルは立派な人を示す言葉ではなかったが、200、300年経て世界を覇権している間に、先に紹介したイギリス人を表わす言葉に変遷を遂げていった。

「ジョン・ブル精神」にまつわる有名な話として、こんな有名な話がある。タイタニック号の沈没の際にイギリス人の犠牲者が平均よりずっと多かったのは、われ先に救出ボートに乗ろうとした他国人に比べ女性や子供の救出を優先するイギリス人魂を発揮したということを誇りとしていたというのだ。

今回の場合には、ジョン・ブル精神を貫くのかという票と徳、若者のEU世代の票に割れたようにも思う。移民排斥などの理由で今回の離脱を決めたという側面も含まれるなら、本当のジョン・ブル精神はどこにいったのかという矛盾もあるのではないか。

今後の行く末もジョン・ブル精神に!?

本当のジョン・ブル精神を発揮するなら、この状態からどう立ち直るのかというところを見せて欲しい。これで間違いなくイギリスの経済は落ち込む。単に俺たちは勝ったというだけでなく、今後それを本気となってどうやって立て直すのかというところでその精神を試されるところがあるだろう。それは日本の失われた20年からどうやって立ち直るのかということともつながってくるように思う。

今後2年間でいろいろと決めていかなくてはならないが、長いようで短い。ここでお互いに妥協を求めていくのか、さっき述べたようなジョン・ブル精神を発揮して立て直して見せるといってやっていくのかここが見ものである。

今後の行く末に注目

気になるのは若い人たちが自由な空気の中にいたのに、それが閉ざされるということを思っている気持ちを今後どうくみ取っていくのも重要である。

今の日本の若者も高齢者がドンドン決めて、将来への不安を持っている状況であり、東と西の島国の状況が非常に近いというような気がしないでもない。

これから先のイギリス、EUの方向、他の国の選択などさまざまなことがあるのでしっかりと注視していきたい。

なお、ブログにはジョン・ブルの絵を掲載中です。ご興味のある方は合わせて参照ください。

時代を読む

(TBSラジオ「日本全国8時です」6月28日音源の要約です)

image by: Shutterstock

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け