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見る影もない凋落ぶり。参院選で惨敗「社民党」の役割は終わったのか

社会党時代は自民党にとって最大の脅威でもあった社民党。しかし今ではすっかり鳴りを潜め、衆参合わせてわずか4議席となっています。同じく党名を変えた民進党もパッとしません。なぜ急激に野党の力が失われてしまったのでしょうか。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、自らの保身の為にブレてばかりいる姿勢に問題があると指摘しています。

存亡危機の社民党。かつては改憲勢力3分の2を止めた党だった

参院選も終わり本日は政党の力についてお話したい。今回の参院選の結果を見ると、野党には存亡の危機を迎えているような政党も見受けられた。また、「改憲勢力が3分の2を超した」と言うけれども、熱気・興奮は感じられず、政党の力が衰弱しているなとも感じた。

今回、特に「社民党」の凋落が際立った。「社民党」はもともとは二大政党であった「社会党」。今回社民党の吉田党首が落選し、比例で1議席、福島瑞穂氏のみが当選。この結果により衆参合わせてわずか4議席となった。我々には社会党というイメージがあるため、この状況に驚きをかくせない。

かつては市民を魅了した社会党

かつての社会党を振り返ってみると、他の党とは違うぶれない主義主張があり、それが市民をひきつけていたように思う。1955年に55年体制ができ、民主党と自由党が合同し自由民主党が誕生した。社会党も左派と右派が合流し、鈴木茂三郎氏、浅沼稲次郎氏、成田知己氏、石橋政嗣氏などが共に闘っていた。

56年の参議院選挙では新聞に「憲法改正是か非か。争点は3分の2」という見出しが躍って、まさに今を丸写ししたような状況。自民党と社会党が真っ向から対立していた。自民党の総理は鳩山一郎氏、幹事長が安倍首相の祖父である岸信介氏。社会党委員長は鈴木茂三郎氏で、書記長が浅沼稲次郎氏だった。今考えても両人とも大物である。

かつての選挙でも改憲を問うていた!

その当時の事象で興味深いのは、自民党は今と同様に「重点政策10項目」に「憲法改正を盛り込まず争点を隠した。それほど憲法の問題は日本人にとってタブーでもあったのだろう。

選挙戦では護憲連合、労働組合、女性団体、学生など、実に72団体が野党を応援。この現象は本当に政党としての力を持っていた表れといえる。全国的に運動は盛り上がり、憲法改憲に反対する有名人のポスター10万枚が全国津々浦々に張られた。結果、社会党は3分の2を阻止し、全体の議席の3分の1を超える80議席と大躍進。改憲勢力が3分の2を獲得することはできなかった。これが、市民に護憲運動が定着したきっかけとなった。

政党の力が拮抗したことも

その後、安保闘争等いろいろあり、社会党も分裂していくが「男女平等」という柱を掲げ、70年代から「男女雇用平等法案」を提出していた。その後ようやく、1986年に「男女雇用機会均等法」が施行される。これは、その当時一つ核となる大きな柱を持っていた表れといえる。

さらに、冷戦終結直前の89年の参院選では自民党の宇野総理(当時)の女性問題もあり、社会党党首の土井たか子氏が「やるっきゃない」と言い、女性候補を次々立て自民を過半数割れに追い込む大躍進を果たした。この結果を受けて土井氏は「山が動いた」という言葉を述べ話題となった。リクルート事件があり金権政治への批判もあったが、社会党を中心とする政党力が一本化し、自民党と対立し合う政党と政党の力がぶつかり合う小気味好い闘いであった。

何事も軸が重要

社会党が凋落するきっかけは、94年の「自さ社連立政権」誕生だ。自民党と社会党の力が徐々に弱まり始めた際、「自民党」は生き残るために「社会党」を取り込み、さらにそこに「新党さきがけ」が合流し村山氏を党首にし村山政権を作った。一旦、権力の味を占めるが、ここで自分たちも権力をとれるという過信により、本来の社会党の本質を見失っていった

これらの過程の中で、護憲政党だったにもかかわらず自衛隊に対する憲法解釈の違う党と組んだことがその本質をさらに見失わせたのだろう。その後、96年に「社会党」から「社民党」に党名を変更。本来、この時、基礎理念が表わされている「社会党」という党名を踏襲すべきだったと思う。さらに、2000年代に入ると、社会主義で一本通っていた大物たちの世代交代が進み、さらにぶれが加速していったようにも思う。

今回の選挙においても、「民主党」は今年3月に党名を「民進党」に変え、参院選に臨み、敗れた。さきほど紹介したように民主と投票用紙に書いたものは無効となっている(※)。結局、市民をひきつける力というのが政党の一番の魅力だと思うが、その力をドンドン失っている。

※ 同日の番組内「現場にアタック」にて紹介

一時しのぎの投機

世界は大動乱で、イギリスのEU離脱、中東の内戦、中国の成長の鈍化といったように世界は大乱の時代に向かっている。日本も財政赤字、イノベーションの進行がみえない、格差拡大、少子高齢化などさまざまな問題を抱えている。その状況下で、株価が乱高下すると安全な日本株を購入する動きが出ている。その現象を日本は、なんとなく良いと思っているけれども、これは一時的なしのぎであって状況が悪化した途端に別に移動するということに気が付いていないように思う。

政党力の復活は…

特に野党は、自分たちの政党力をきちんとアピールするために政策を骨太の力として出すべきだと思う。現在、日本では先に述べたような問題が山積しているが、それを懸命に訴えれば野党は今回勝てる可能性が十分あった。

これまで今と昔の参院選を比較し、同じようなテーマで選挙を闘ったということがあった事を振り返ってきた。憲法に関して何十年も前と同じものを引き継いでよいのかという世論もある中で、今後野党はどうするかが問われている。

今回の選挙戦では、与党による憲法に関する明示がない中で、野党はそこに本格的な論争を挑んでおらずバラバラで収束していない。それらも含め、野党がもう一度一本化できるかどうかが、今後問われるところであろう。今回の総括をきちんとして、力を蓄えて欲しい。

(TBSラジオ「日本全国8時です」7月12日音源の要約です)

image by: Wikimedia Commons

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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