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マヨネーズのキユーピーが、「医薬品」でガッチリ儲けているワケ

キユーピーと聞いて多くの人が思い浮かべるのは「マヨネーズ」ではないでしょうか。しかし現在、同社のこれまでの柱とも言える「調味料事業」と「タマゴ事業」は良く言えば成熟状態、悪く言えば飽和状態となっています。もちろんキユーピーが手をこまねいていたはずもなく、その状況をいち早く見抜き、次なる事業に参入して成功を収めています。店舗経営コンサルタント佐藤昌司さんの無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では、このキユーピーの新事業を分析、さらに今後の展開についても言及しています。

キユーピー、好業績の裏にある隠し味とは

マヨネーズでおなじみ「キユーピーファインケミカル事業」が好調です。実は、キユーピーは国内有数のヒアルロン酸メーカーでもあり、ヒアルロン酸を由来とした美容商品や医薬品などを扱うファインケミカル事業を推進しています。

2016年11月期第2四半期(12~5月)のファインケミカル事業の営業利益は6億円弱で、前年同期比で478.4%にもなっています。主力であるマヨネーズなどを扱う「調味料事業」の営業利益は-1.1%となっている点に鑑みると、ファインケミカル事業の躍進ぶりがわかります。

マヨネーズとヒアルロン酸を結びつけたものとは

マヨネーズとヒアルロン酸には何の関連性もないように思えますが、その実、「ニワトリ」という共通点が存在します。キユーピーは、マヨネーズの主原料のひとつである卵の研究を進めてきました。やがて、対象はニワトリにまで広がり、トサカからヒアルロン酸を抽出するに至りました。

ヒアルロン酸はムコ多糖の一種で、水分保湿機能などを有しています。生体内のあらゆる臓器や結合組織に存在しますが、加齢により体内ヒアルロン酸は減少していきます。ヒアルロン酸はヒトの皮膚にも存在し、加齢とともに皮膚にあるヒアルロン酸も減少していきます。そして、皮膚の保水力も低下していきます。

キユーピーは、女性を中心とした皮膚の保水に悩む人のために、ヒアルロン酸由来の美容商品を開発、販売してきました。14年11月期には、美容商品や健康補助食品などを通信販売をはじめとした無店舗形式で販売を行うトウ・キユーピー」の株式を追加取得することで連結子会社化し、ヒアルロン酸由来の製品の販売を強化していきました。

15年4月に始まった「機能性表示食品制度も追い風になっています。機能性表示食品は、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品のことで、消費者庁に届け出られたものです。特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品に続く新しい食品の機能性表示制度として期待されています。機能性表示制度の活用により、定期顧客数が15年11月から6カ月で1.5倍に増加したとしています。

医薬品が利益の隠し味に

ヒアルロン酸は美容商品のイメージが強いのですが、キユーピーはヒアルロン酸由来の医薬品の開発にも注力しています。同社の医薬品はEPA(エイコサペンタエン酸)が主力でしたが、競争の激化により収益は伸び悩んでいました。そこで目をつけたのがヒアルロン酸由来の医薬品なのです。

ヒアルロン酸由来の医薬品には、白内障の手術で人工レンズを挿入する際に使用される補助剤や、膝の軟骨の損傷で痛みがでる「変形性膝関節症」の治療薬などがあります。ヒアルロン酸は、軟膏やパップ剤などの外用剤原料としても利用されています。さらに、キユーピーはヒアルロン酸を中心とした医療領域向けの製剤開発に着手し、18年度中の販売を目指しています

ヒアルロン酸由来の美容商品や医薬品を主体とするファインケミカル事業は今のところ規模は小さいものの、利益の面においては大きな伸長が期待できます。主力の調味料事業やタマゴ事業は、国内においては成熟産業であり、規模の面においては大きな伸長は期待できません。

利益重視の戦略を推進

キユーピーは、ファインケミカル事業を中心に利益重視の戦略を進めていくものと思われます。中期経営計画では、18年11月期の売上高の目標が6,250億円で、15年の5,520億円(新会計方法による影響を補正した数値)から13.2%増にとどまるのに対し、18年の営業利益の目標は355億円で、15年の264億円から34.4%増となる大幅な増益を目指していることからもわかります。

キユーピーは、既存製品の販売の強化に加え、原材調達体制の再構築によるコスト改善やヒアルロン酸の新機能の創出、海外での販売体制の構築により収益の向上を目指していくことでしょう。どのような「隠し味」を加えていくのか、今後に注目です。

image by: キユーピーホームページ

 

店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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