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ポケモンGOの世界的ヒットから、中小企業でも学べること

7月22日、いよいよ日本でもサービスがスタートした「ポケモンGO」。週末、街にあふれるスマホ片手の「トレーナー」たちを目撃した方も多いかと思います。なぜこのゲームはここまで世界中に浸透し大ヒットしたのでしょうか。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、マーケティングの手法を用いた分析がなされています。

ポケモンGO日本上陸に何を学ぶべきか?

今号のテーマは、もちろん今話題の…、「ポケモンGO」です! いよいよ、日本でも国内での配信がされたとの第一報が、日本経済新聞からの速報で来ました。ということで、今号は最初から考えていた特集を変更して、このテーマ中心で進めていきます(次号以降、コラムや書評は復活します)。

ポケモンGOとは?

さまざまな報道でもおなじみの通り、「スマートフォン用のゲーム」です。米国ゲームベンチャー企業のナイアンティックと任天堂、そして、ゲーム企画会社のポケモンが共同で開発したゲームです。Googleマップをベースにしたイングレスというゲームを使っているそうです。昨年の4月1日のエイプリル・フールに、イングレスがそのゲーム上にポケモンをジョークで出したら話題になり、任天堂がのってきて、今回のゲーム化になったといわれています。

スマートフォンの位置情報機能である「GPS」を使って、町中に出てくる、ポケットモンスターを捕まえ、戦わせたりして遊ぶ、という内容です。コンセプトは、通常のポケモンと同じですが、街の中の「仮想空間にポケモンがいるので、それを捕まえる」という点が新しく、面白いのでウケている、ということでしょう。

何がドライブしているのか?

アメリカをはじめとして、世界では30か国以上で配信されていて、ダウンロード数1位になったりと、話題になっています。任天堂の株価が高騰し、さらに、関連株まで上がっているというニュースも連日流れていて、社会現象にまでなっています。20日にはマクドナルドと提携し、テンポでアイテムがゲットできるようになるのでは、ということで、話題には事欠きません。

ポケモンGOが浸透した理由

ではなにが理由で、このようにポケモンGOが一気に浸透したのでしょうか? マーケティング的に「何を、誰に、どうやって」の順で考えてみます。

まず、「何を」にあたるゲームそのものはどんなものか、という点です。注目すべきは「ゼロから開発したコンテンツではない」という点です。ポケモンそのものも、GPSを使ってのVRやAR(拡張現実=Augmented Reality)も既存のものです。今あるモノをくっつけての、新製品開発です。これを、経済学者のシュンペーターは「新結合」と言っています。

身の回りでは、電話とネットと音楽プレイヤーをくっつけた、「スマートフォン」も新結合ですし、大福にいちごを入れた「イチゴ大福」や、私の地元名古屋の名物「ひつまぶし」も、うな丼とお茶漬けの合体です。既存のモノ同士をくっつけると新しい顧客価値ができるのですね。ブルーオーシャン戦略も、この考え方で、新規市場を創り出すと説いています。「シルクドソレイユ」も、サーカスと演劇の合体ですよ。

新結合のよさは、「どちらも既存の製品なので、みんなが知っている」という点にあります。世の中にない、全く新しい製品をゼロから開発すると、誰も知らないので、「その良さを最初から全て教えて」あげなければなりません。企業側も、周知のためのマーケティングコストがかかり大変ですし、ユーザー側もピンとこないため、浸透に時間がかかります。ポケモンGOの新結合を例にとってみると、ポケモンそのものと、ARやGPSを使ったゲームは、どちらも、世の中にあるためキャラをいちから開発する必要もなかったでしょうし、ユーザーも、すぐにこのゲームの楽しさを想像できたでしょう。

新結合による、企業側にとってのメリットは、それぞれの顧客が新しく取り込める、いわゆる新規顧客獲得になるということです。ポケモンGOの場合は、ポケモンファンと、スマホゲームファンがどちらもゲームをするわけですから、ポケモンだけ、スマホゲームだけしかやっていなかった層が来ることが期待されます。

中小企業が参考にすべきこと

ポケモンGOから学ぶべきことは、「顧客価値は、ゼロからの開発ではなく既存の製品の組み合わせ」であることです。そんなに難しく考える必要はなく、肩の力を抜いて考えればよいのです。新結合に大事なのは、

  1. 既存の製品(またはサービス)はどちらも有名なものにすること
  2. 意外な組み合わせにすること

です。「そうはいっても新しい発想ができないんです」という相談をよくいただきますが、それは、「思考が停止するからです。その原因は、「うちの会社は、これまでずっとこのやり方で成功してきたんだ!」という、「過去の成功体験」と、「そんなのこうに決まっている」という、「固定観念」が、柔軟な発想を出すことを邪魔します。固定観念と過去の成功体験を捨てて、自由な発想をしてください(この辺の詳細を拙著『ひつまぶしとスマホは同じ原理でできている』に書きました)!

久しぶりに明るいニュースのポケモンGOに学び、身の回りの製品やサービスを合体させ、新結合を見つけてください。

 

理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』より一部抜粋

著者/理央 周(めぐる)
あのヒット商品はなぜ「ヒット」したのか?あのレストランの予約は、なぜいつも取れないのか?世の中で「売れているモノや人気者」はなぜヒットするのでしょうか?毎号実際の店舗や広告を取り上げ、その背景には、どんな「仕掛け」と「思考の枠組み」があるのかを、MBAのフレームワークとマーケティングの理論を使って解説していきます。1.「中小企業経営者・個人事業主」が売り上げを上げる 2.「広告マン・士業」クライアントを説得する 3.「営業マン」が売れない病から脱するためのメルマガです。
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