MAG2 NEWS MENU

信長から学ぶ、企業「戦国時代」統一のための正しい「仕事の流儀」

社長であれば社員を、上司であれば部下を正しく導くため、「マネジメント」を学ぶことはある意味当たり前と言えますが、実は戦国武将も自らの兵を率いて戦に勝つため、マネジメント能力を磨く必要がありました。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』の著者・浅井良一さんが、織田信長を例に「正しい仕事とは何か?」を考えます。

正しい仕事の話

織田信長が「天下布武」の端緒を開くのは、永禄3年(1560年)尾張国桶狭間で行われた今川義元との合戦に勝利したことによります。そのときの兵力は義元が2万で、一方の信長の兵は10分の1以下のわずか2,000でしかなかったのは誰もがよく知るところです。毛利元就も、数倍する敵を天文24年(1555年)厳島戦で破っています。

寡兵で数倍する敵を打ち破る賭けは敵の虚をついてなした快挙ですが、命がけのぎりぎりの計算のうえでなされた行動でしょう。毛利元就は孫氏の兵法をはじめとする兵学書を徹底的に読み浸っていたそうで、信長は兵学書を読んでいないような雰囲気があるのですが「うつけを演じた様子などは楚の荘王の故事そのままです。

兵法書はマネジメント書に通じるものですが、生き死の修羅場を経験してきた武将にとってはその理解は「生もの」の知識だったと思われます。戦国武将にとって、戦に勝つことは命がけの成果です。しかし、この戦を行うこと自体は成果を得るためには下策であり、調略などの兵を損じない手立てこそが上策と言えます。

事実、信長にしろ元就にしても、合戦は「苦肉の策」で勝利後は勢力拡大のために手法は違うものの周辺の武将の取り込みに全精力を傾けています。ここで確認しておかなければならないのは命を懸けての「大ばくち」の目的ですが、それは周辺の武将が自身の保身と領地の保全のために駆け参じて来る「成果」がもたらされる「効用」があると見越してのことです。

大きな成果を実現させるには、いつの時代にも飛躍をかけた「大ばくち」つまり最大の成果を得られるための知恵を絞った仕事が必要です。今も、原理は同じで「画期的で顧客が喜ぶ」「未だ誰も行っていない」「初めて」の「仕事」を実行しなければチャンスはありません。「活動」は「成果」が実現できる「効用」があるからこそ実行するものです。

「仕事」のあるべきあり方とは「成果」つまり現在では「顧客満足」させる「効用」があり「従業員満足」も併せて実現させられる「活動」とします。もちろん、顧客の欲求は少なからずやってみなければ分かり得ないものであり、さらに「競争」と「変化」がその困難さを加重させます。だからこそ、正しい仕事の意味の理解は経営者にとっての基本教養です。

桶狭間の合戦に戻って「正しい仕事」であるかどうか吟味すると、その目的は東海地方の武将を自分の傘下に引き入れることであり、今川義元一人させ倒せば適えられものでここに目標を絞るのは正しい判断と言えます。切羽詰まった選択であったもののこれさえ実現すれば大きく飛躍ができるもので、翻って考えると願ってもない好機であるとも言えます。今川義元の首には、そのような「効用」があったと言えます。

今の時代の企業は命のやり取りこそないものの「良い企業」となり「社会に貢献」するためにはいつもギリギリの命がけのチャレンジが求められます。ただありがたいのは血を流すのではなく、顧客が喜んでくれる新たな効用の創造イノベーション)をもってして成果が得られることです。

ウォルト・ディズニーやスティーブ・ジョブズのように顧客が望むことをイメージ化し信念を持って実行することで「真の仕事」をする人もいます。しかし、これは稀でイメージに秀でた人は実行力があるとはいえず、実行力のある人はイメージ力に乏しいのが一般的であるようです。とは言え、成果実現のための何すべきか知る卓越した経営者は多くいます。

卓越した経営者が行っている「正しい仕事」について振り返り確認します。もともと企業という組織では顧客満足を実現するために、一人ではできないことを多くの人たちが持つ能力・活力を巧みに制して「仕事」を実現します。仕事は顧客の欲求を適えることが目的なので、そのためのみに焦点を絞り専門家を最適活用します。これが「仕事マネジメント)」の意味です。

合気道の達人は、自分の力で相手を倒すことをしないそうです。相手の力の流れの一点を策して、指一本でまた合気で目的を達します。塩田剛三という類稀な達人は「自然の理にかなっているということ。向こうが強い力で来ても、それに対応してフワッと自分の力にしてしまえば、ちっとも苦労はいらない」と言われています。

NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」は『暮しの手帖』の創業者・大橋鎭子と天才編集長花森安治をモデルにしていますが、この雑誌が成功するかどうかは、編集長をどう取り込むのかの一点にかかっていました。取り込む決め手となったのは、常子の揺るがぬ直向きさと「女性に役立つ、明かり灯す雑誌をつくる」という訴えでしたと語られています。

 

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
<<登録はこちら>>

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け