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なぜ少女はついていったのか? 探偵が見た「悪徳AVスカウト」の生現場

探偵の目線から子どもの「いじめ」の実態に迫るメルマガ『伝説の探偵』。今回は、社会問題になりつつある「悪徳スカウト詐欺」の実態を、メルマガ著者のT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚さんが暴きます。夏は「出逢いの季節」でもありますが、その開放的な気分になったところを狙った、AVスカウトや詐欺、ナンパのトラブルが後を絶ちません。子どもたちを守るために親が知っておくべきこととは…?

この夏の危険地帯と違法な組織

夏休み真っ只中のトラブルといえば、繁華街にいる「キャッチの問題」と「海水浴場などでの出会いから発展する問題」である。

特に少女が狙われている。

私は時折、繁華街を自主的なパトロールをしている。

忙しく働いていると、頭がフリーズしてしまうことがある。

こうした時、私はよく散歩をする。歩きながら、ブツブツと考えていると、次第に頭が整理されてくるのだ。

だから、頭を整理するための散歩に出るついでにランチをしたり、文房具や工具、物を作る道具を見たり買ったりする。こうなれば、意外と効率的に動くことができる。

つまり、パトロールはついでと言ってもいい。

というより、普段から観察力と周辺認識力が仕事道具となっている私は、普通に歩いているだけでも周辺の異変に気が付きやすい。

特に夏はトラブルが多い時期でもあるので、ランチのついでにブラブラとキャッチなどが出没しやすい通りを歩いてみるのだ。

また、現場の警察官にも知り合いが多いので、警察として関わりが難しいことであったりすると、私が紹介されているということもあるし、なぜかネットの検索で連絡が入ることもある。

キャッチが良く出没する場所は下記の通りだ。

新宿歌舞伎町

渋谷区道玄坂、宮益坂、文化村通り

渋谷区原宿駅前、竹下通り入り口、表参道までの通り

キャッチは複数のグループに「AV系」、「風俗系」、「詐欺系」と分かれている。悪質なのは、AV系のキャッチである。

掛け持ちのキャッチもいるが、3つの系統を全て足したようなキャッチもいるから、これが最もタチが悪いと言えるであろう。

代表的な事例

千葉県東部の高校に通うA子さんは、17歳で友人と2人で、渋谷の道玄坂あたりをブラブラ歩いていた。

すると、突然、声をかけらた。

ナンパかと思い、無視をしていると、アイドルや芸能人の名前を出してきて、思わず立ち止まってしまった。

男は近くにいたもう一人の男に声をかけた。

そして、こういった。

男:「芸能界に興味ない?話だけでも聞いてよ。」

Aさんと友人は、”話だけくらいなら聞こうかな”と思ってしまった。

また、二人であったから、何かあったら逃げれば良いと思っていた。

しかし、キャッチは二人組の方が落としやすいと踏んでいた。

まず、二人組は背景では互いのライバル心が少しある上、互いの意見がバッチリ一致することもない。

心地よい褒め言葉をのせて、その気にさせれば、容易に説き伏せることもできると踏んでいる。

また同時に、二人でいることで安心感があって、警戒心も薄くなりやすい

”まさにうってつけのカモであった。”

Aさんと友人が、案内されたのは、渋谷駅を横切った先にある雑居ビルの一室であった。

中には芸能人のポスターが壁に貼ってあり、少し汚れたパーティーションに薄い段ボールが積み上げられていた。デスクは紙の資料やタバコの吸い殻などがあり、ビジネスフォンが各デスクに備えてあった。

見た感じ、確かに芸能事務所だとも言える。

A子さんは、年齢の質問に「18歳」と答えてしまった。実際は17歳であったが、自分を少し大きく見せようと嘘をついてしまったということであった。

奥の部屋に案内されると、そこは応接間になっていて、しばらくすると、女性が飲み物は何がいいかなどと聞いてきた。

女性が事務所にいるということは怪しい事務所ではないと判断してしまった。

女性が去ると、中年の男性がチェック表のようなものを持ってきて、内容をよく読んで、良ければサインをと言われ、内容をほとんど読まずにサインをしてしまった

サインをすると、宣材写真も含めてグラビアの写真も撮ろうという話になり、その面接の部屋の隣にあるスペースで、水着に着替えることになった。

撮影の最中、もう少し際どい感じの写真を撮れるなら、3万円くれるという話になった。

周囲は男性だらけで少し怖くなったAさんと友人は、トイレにいきたいと言ってその場を抜け、水着の上に服をそのまま着て、逃げ出してしまった。

Aさんはカバンや買い物の品をその場に忘れたことに気がついた。そこで警察に相談に行ったが、水着を返さなければいけないというアドバイスをもらった。

同行を頼んだがそういうのはやっていないと言われてしまい途方に暮れていたところ、幾つかの団体を窓口の警官が紹介し結果、私のところに相談が入った。

私は保護者とも連絡を取り、その事務所に向かった。

社長だという人物は名刺も差し出すことはなく、彼女らと同行した母親に”撮影代を賠償してほしい。”と凄んできた。

それは、それこそ闇金のそれに似た慣れた感じの追い込みであった。

「家も連絡先も知っているぞ。」

「写真をネットに掲載してもいいのか?」

「水着を盗んだのは犯罪だろ!」

「親なら責任を取るのが筋だろ!」

脅し方はいくつでもある

想像してほしい。

仮にあなたがこの親の立場であったらどう対処するのか?

相手は凄みのある脅しを淡々と続けることができ、慣れた様子で、交渉を進めようとするのだ。

金さえ払えば解放される、そう思うのではないだろうか。

しかも、この場はAさんの母親一人である。

もちろん、私もいるが、彼らは私には一切目もくれない。

タイミングを私が見誤れば、こう来ることはわかっている。

”お前が責任取るのか!!”

”責任取らないなら、黙ってろ!!”

ちなみに私はこの場で秘密録音秘密撮影をしている。

できれば、もっと凄んでもらい、誰もが心証を悪く持ってもらいたいと本音では思っている。

また、この手の相手には慣れ過ぎてしまっていて、アクビが出そうなのを必死でこらえている。

母親にもA子さんにも、そういう作業も横でしているので、合図をするまで助けを求めないでくださいねとは、断りを入れている。

彼らの事務所の外には、T.I.U.総合探偵社のスタッフが1名のみ車で張り付き、通話状態になっている携帯電話の音声を聞いて待機している。何かあれば、すぐに通報脱出の手助けをすることになっている。

そろそろ良いだろう。

社長と名乗る男が、脅し疲れてタバコに火をつけたところで、私は母親に合図をした。

しかし、彼女は頭が真っ白になっていて、何を言うのか忘れてしまっていたらしい。

契約を取り消します。”

未成年者の保護者は未成年者がした契約を取り消すことができる。これは法律の話。

とりあえず、その意思は伝えてもらわなければ、何も始まらない。

A子さんらに水着を返させる代わりに、データの削除と目の前で契約書を破棄するように私から話をした。

社長と名乗る男の筋が切れるような、そんな表情であったが、ここから先でゴネるようなら、流石の警察も動くんじゃないかという話をすると、彼は私の提案に応じたのだ。

ほとんど投げやりな感じで、この男はその場から去ってしまった。

一応、保険のため、彼には外で待機していた調査員に尾行をしてもらい家や家族構成はしっかり把握させてもらった

なんと、この男は、千葉県の一戸建てに住宅ローンを組んで家族と普通に暮らしていて、奥さんは夫が映像関係の販売の仕事をしていると聞かされていた。

子どもは小学生の女児と幼稚園に通う男児の4人家族であった。

一応、今後のためにもご挨拶をさせてもらい、家でお茶をご馳走になっておいた。

本職探偵を相手にするということは、こういうことである。

住宅ローンをどうやって組んだか?というのは、彼もさすがに調べるのはやめてほしいということであった。

彼は社長と名乗ったが、その実、それは少し違うのだ。

私は彼の家族には仕事の話はしないという約束のもと、全体概要を聞き出している。

この社長と名乗る男は年代としては40代前半。

彼が事務所として構える雑居ビルは1フロアで60平米程度で実際は、屋号として42の芸能プロダクションやレッスン、撮影会社が入居している。

いわゆる名前だけあって、都合の良いものをその場で使うというのが彼らのシステムであり、42社のうち、2社が法人で、法人の登記は地方にあり債務のない休眠中の株式会社を数万円で司法書士から購入したものである。

残りの40は法人ではなく個人事業主という扱いであるが、開始届もなければ、何もしていない、単純に適当な屋号を名乗り勝手に営業しているに過ぎないインチキなものであった。

構成するメンバーは、およそ30人前後。

ナンパやブラブラしている若者のグループに、キャッチをしてきたら、いくら払うという成功報酬システムを取っている。

ちなみにテレビ出ているとか、芸能をやっているという在籍者はおらず、せいぜいいて、アダルトビデオの企画物の女優、つまりは数足し要員のような子がいるレベルであり、業者としての繋がりは、「風俗系」「アダルト系」「テレビに出ない雑誌に出ないグラビア系」などだった。

また、詐欺まがいの行為で、クレジットカードを作らせて、キャッシングでダンスレッスン料を支払わせたり、宣材写真の撮影代を奪うなどは常習的にやっていた。

私が同席したA子さんについても、この手の被害を受けそうになっていたようであり、どうやら、裸の写真を撮って、どこかに売り飛ばすか、親に買い取らせようと思っていたようだ。

彼の立場は、法人の管理とお金の管理であるが、どうやらその先にも統括する人物がいるような口ぶりだった。指南役として法律家がいるのは、契約書を見ればよくわかる。この指南役については、彼自身もどうやら知らない様子であった。

ちなみに2法人の法人登記簿謄本は確かに存在したが、役員を変更していないため、会社売買前の状態のままであった。

おおよそ銀行口座だけ使って、どこかで都合が悪くなれば、何もなかったことにして、捨てるのであろう。

全体概要を把握し、構成するメンバーを抑えてしまえば、あとはどうにでも料理はできよう。

一部の芸能人は確かに、街でスカウトされて人気者になっている。

しかし、多くは稽古をしたり、子役から始めたり、オーディションから勝ち上ったりしているのだ。

どこかでスカウトされるかも

そういう心の隙を狙っている組織がスカウトで有名な場所には必ず存在しているということを、頭の片隅には置いておかなければならない。

特に、未成年は色々な知識をネットなどから仕入れていても、経験値がそれに伴わない。多くの大人は、様々な恥や失敗によって、経験は重ねているだろう。

失敗をすることはいい。

ただ、彼らの組織のようなところで、狙われて失敗をすれば、それは、大きな影を落としてしまうことになりかねない。

夏は開放的になる期間でもある。

肌の露出も高くなり、見た目からも開放的になるのかもしれない。

休みの期間となり、特に学生は街にも海にも繰り出す訳であるが、それは出会いの季節ともなるわけだ。

私の世代は、連絡手段が主に電話であった。

私は40歳になる世代であるが、高校生時代はポケベル、大学生になる頃にはPHSだったり携帯電話を持ち始めた。その頃は、メールというより電話であった。

電話やポケベルであれば、同居している親に色々と勘ぐられるし特に、家の電話しかない頃であれば、それこそ、時間を決めて、その当時付き合っている彼女に出てもらうなどしないと、親父さんの雷が落ちたり、お母さんに時間が遅いわよって説教をされたりした。

この時代は、保護者のガードもあって、付き合うにしても、それなりの節度がなければならなかった。

そしてしばらくすると、メールの時代が来る。

携帯でメールをする。この時代の歌詞にも、よく登場する行為であった。ただ、メールというのは、相手が既読したかというのはわからない。

わからないからこそ、しばらく待つということは当然であったし、都合が悪いものは、届いていないとか、読んでいないというのも理由としては有りであった。

ところが、現代は主にLINEなどが連絡手段としては使われる。

メールとの違いは、既読の有無がわかることである。

”確かに届いているはずだ。”

なのに返事をしない、既読をスルーしたなど、そのレスをすぐに求めようとする傾向が強い。

ナンパなどの出会いから、LINEを教えるということは多いであろう。

ところが、これは相手が異常な者であると、ストーカー被害であったり、デートDVを受けたりと、酷い被害を受けることがある。

特に開放的な心持ちの時と家に帰って落ち着いた心持ちの時は、その対応も異なってくるであろう。

学校教育下では、情報リテラシーについての教育も進んではいるが、その実、家庭教育の差異が激しく、学校のみではそもそもとして、対策が薄くなるというのは当然の結果として捉えることができる。

対処は基本住所や名前など個人情報は教えない

表示されないというように設定をしたり、自分ルールを設けておくことが望ましい。

特にには、見えないコミュニケーションを子どもたちは当たり前で取っているわけであり、その変化はかなり観察する必要がある

できれば業者に、何らかの有効対策を取ってもらいたいところではあるが、それも難しいことから、自己防衛力を高めていくしかないであろう。

私はこの「伝説の探偵」による資金やT.I.U.総合探偵社のCSR基金を使い勝手に彼らと対峙するが、それも限りがある。

どの被害者も同じように、自分が被害に遭うとは全く思ってはいない。

ただ、被害にあって、驚き、運が悪いとでも思うのだ。

狙っている者がいれば必ず被害は起きる

単純にその数が表面化しづらいだけなのだ。

法に期待ができないのであれば、実態を伝え、少なからず、それを聞いた人がほんの少し意識を変えることに期待するしかないだろう。

image by:  Shutterstock

 

『伝説の探偵』より一部抜粋

著者/阿部泰尚

2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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