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中国による尖閣「サラミ」戦術。日本はもう戦争を仕掛けられている

8月に入り尖閣諸島周辺に突如大挙して現れた中国船団。ギリシャ船籍の貨物船との衝突事故後も周辺海域から立ち去る様子は見られません。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは「第2次日中戦争が起こる可能性が出てきた」とし、中国経済の崩壊を仕掛けない限り、日本が中国を屈服させることは難しいのではという私論を展開しています。

第2次日中戦争への準備

中国が漁船250隻と公船を送り込んできたことで、第2次日中戦争が起こる可能性が出てきた。その検討と対応策。

中国の「サラミ・スライス」戦略

2012年頃から、中国は国境や海洋での対立を軍事的・政治的に有利に進めるため、「サラミスライス戦略」、つまり「その一つずつは戦争原因にならないが、時間をかけることで大きな戦略的変化になる小さな行動のゆっくりした積み重ね」を繰り返すことで、初期の目標を達成する戦略であるが、このサラミスライス戦略を南シナ海と東シナ海の両戦線で実行している。

もう1つがキャベツ戦術であり、キャベツが何枚もの皮でできているように、中国の利益を守るために、幾層もの守りで固めるということである。中国の軍艦や法執行船、そして漁民を海洋民兵として使い、中国の様々な組織が緊密な統制の下で行動することである。

このような戦略・戦術の延長上に、今回の漁船250隻の尖閣諸島への派遣があるので、単なる漁船が漁のために尖閣諸島に来たわけではない。この漁船は、海洋民兵である。このため、誰かの命令で派遣されたのであり、普通に考えると習近平ということになるが、G20の開催前に、南シナ海問題を起こしている上に、東シナ海問題も起こして、中国で開催するG20で紛糾するのは、いかにも不味いはずである。

現時点、中国の三戦思想「法律戦」「情報戦」「軍事戦」であるが、法律戦では、バーク国際仲裁裁判所での判決が出て、南シナ海での中国の主張に根拠なしとなって負けている

南シナ海での判決を無視したことで、中国は国際社会で無法者という判断になっている。この影響が国際的な経済連携に出てきている。

英豪両国は中国国有企業が資金提供する投資案件の承認を拒み、長期的な電力関連事業計画が相当進展した段階で待ったをかけた。法律事務所デッカートは「中国の外交政策がますます強引になる中で、英豪は徐々に中国からの投資に関する審査を強化している。姿勢の変化だ」と指摘する。

経済的な面は、政府組織であり、李克強首相がトップであるが、経済面で不利益なことになっている。

経済政策でも、習近平は、太子党が占める国営企業中心に経済を変えて、一帯一路(現代のシルクロード)の構築をしたいようであるが、李克強は民間企業の自由な経済活動を活発化して、経済を発展させようとしている。この経済政策でも習近平と李克強は対立している。

このため、中国の民間企業は中国から逃げるために、世界的なM&Aや不動産に資金を投資して、これにより中国国内の投資が激減している。

このため、習近平は、現に江沢民派を潰したが、今度は団派潰しを行い始めている。このような国内政治闘争が裏にあり、誰かが漁船の民兵に命令したのである。江沢民派か太子党か団派かの誰かでしょうね。

中国の夢

習近平は、中国の夢という構想を掲げて総書記になり、その実現を目指しているが、この中国の夢は、周辺諸国にとっては悪夢になっている。巨大国家が自国の領土を拡大するということであるから、周辺諸国は、中国に従うか敵対するかになる。

中国に敵対する国家は、米国や日本に助けを求めるし、中国に隷属する国は、中国の駒として働くことになる。現時点、中国の駒はラオス、カンボジアであり、中国の駒から離れたのがミャンマーである。

敵対しているのはフィリピンとベトナムインドネシアなどであるが、米国でトランプ大統領候補が、アジアなど諸外国での同盟関係を見直して、金を払わない国の安全保障はしないと宣言したので、中国敵対国家は、保険を掛ける必要になってしまった。日本も中国敵対国家であるが、日本は保険を掛けることをしていない

このため、米国の大統領がトランプ氏になったら、大変なことになりそうであったが、トランプ候補の舌禍事件が立て続けに出たことで、すこし安心できる状態になったようである。

しかし、クリントン候補が大統領になっても、米国の軍事費を社会福祉に回し削減されることになる。このため、中国の軍事増強が続き、サラミスライス戦略+キャベツ戦術で尖閣諸島を巡る攻防が続き、徐々に中国はその強度を増してくることになる。

これに、日本はどう対応するのかが今後の大きな課題になる。

日本の対抗手段

奥山真司さんは、日本も漁船を尖閣諸島に送り、中国と同じようなことをすればよいと提案している。

中国船団を尖閣から追い出す、「テーラード抑止」作戦の可能性

これは、日本の漁民を民兵に仕立てることでもあるが、漁民の数が絶対的に減少して、かつ危険な仕事を希望する人は、いないはず。日本の平和主義と漁業が割に合わない仕事になって長く時間が経ったことで、そうなっている。

米艦載機の爆撃演習地に尖閣諸島を使い、米軍も一役買うようにしたらという提案もあるが、米国は領土紛争には関わらないということであり、現時点では米国は、この案を拒否するはず。

尖閣諸島の領有権を国際仲裁裁判所に持ち込むという案は、日本政府が言っている紛争がない領土ということを撤回する必要がある。それと中国は、その提案に乗ってはこないし、若干の疑念がある可能性もあるのかと思う。

このため、当分、日本は尖閣諸島を軍事的に守るしかない

日本の軍事的な対中国戦略

しかし、通常兵器では、経済格差が大きく出る分野である。日本と中国では、経済規模が2倍から3倍も違う。このため、多くの国と合従連合することであるが、フィリピン、ベトナムなどと一緒に闘っても、経済規模が日本の数分の1であり、合従連合しても中国には、かなわない。ということで、米国との同盟しか対抗できる方法がない

また、いくら、質で勝っていても量で負けると、戦えない。民兵の分野でも同じである。

このため、日本が行うべきことは、米国と対等な同盟を結び、中国に日本と戦争しても米国は出てこないと思わせないことである。トランプ候補の論理が通じないように米国の世論対策が必要である。このためには、現状の憲法や法律を変える必要もあるだろう。戦時法も必要になる。

また、日本の平和主義を払拭することが必要である。戦争を体験した人たちがいなくなり、徐々に日本も変化しているが、日本一国平和主義ではなく、中国から戦争を仕掛けられることを想定した戦争準備をしての平和を守る思想を構築することである。

しかし、通常戦争で中国が劣勢になったら、核兵器が日本に襲いかかることになる。日本人皆殺し作戦になる。これに対応して、核兵器を持つか、それ以上に強力な兵器を開発して、抑止力を持つことである。私は、既に決戦兵器を提案した。この開発を進めるべきである。

しかし、サラミスライスで戦争になる前に、日本は、中国への経済制裁を欧米諸国に提案することである。なぜ、南シナ海での問題でも中国への経済制裁が出ないかというと、中国の世界からの輸入額が大きいからだが、世界の無法者を世界経済から分離することも必要である。

軍事作戦だけを米国も豪州も行おうとしているが、中国経済を崩壊させないと軍事費が積み上がり、戦争でも中国が優位になることは明らかである。経済的な崩壊を仕掛けないと中国を屈服させるのは難しいと思う。

よって、どの段階で経済制裁をするか、G7で欧米日は合意しておくことである。中国の夢をこのままにしておくことはできない。

さあ、どうなりますか?

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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