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【京都】亡くなった子供らの為の伝統行事「地蔵盆」その慈しみの歴史

関西や中部地方などではよく知られていますが、それ以外の土地にお住まいの方はあまり耳にすることのない「地蔵盆」。無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、毎年8月24日に行われるこの伝統行事が紹介されています。命の尊さを再確認させてくれるという「地蔵盆」、一体どのような行事なのでしょうか。

子供のお盆「地蔵盆」

地蔵盆は京都生まれで、近畿地方の行事として古くから行われてきたと伝わっています。また、北陸地方や新潟、信州では長野市周辺で今でも盛んに行われているようです。しかし、東海や関東にはほとんどその習慣はないようです。地蔵菩薩の縁日は8月24日ですこの日を中心とした3日間を地蔵盆と呼びます

そもそもお地蔵さんとは?

日本人ならどの地域に住んでいてもお地蔵さんを見たことがない方はいらっしゃらないでしょう。でもその正体をご存じの方は少ないのではないでしょうか?

地蔵菩薩にまつわる話として有名なものに親不孝をした子供を三途の川で救う話があります。

親に先だって亡くなった子供を親不孝者といいます。この子供たちは亡くなった後、まず三途の川のの河原にたどり着きます。子供たちの両親や兄弟を懐かしみ石の塔を築くのですが、「お前たちは親不孝者だ!」と鬼がそれを崩してしまいます。子供たちはなかなか三途の川を渡ることを出来ず成仏すら出来ません。それを哀れんだ地蔵菩薩が、子供たちを抱いて親となって救うのです。

地蔵菩薩は本来、お釈迦様が入滅してから未来の仏である弥勒(みろく)菩薩がこの世に現れるまでのあいだ人間を救済する存在です。もっと詳しく言うと、人間の世界のみならず六道すべてを行き来出来て皆を救済してくれる存在なのです。六道とは地獄、飢餓、修羅、畜生、人間、天のことで、現世での行いにより来世の行く場所がこの6つに分かれているというものです。

昔は貧しくて食べることに困ると口減らしのために間引き子殺しが普通に行われていました。産まれた子供をすぐに殺したり、遠くまで連れて行き置いて帰るということが珍しくなかったのです。生活が苦しくて生きるためには仕方がなかったのでしょう。日本全国、町の至る所に地蔵菩薩が建ててあるというのはその当時の名残なのです。亡くなった子供の幸福を祈る民間信仰であり、親の子に対するせめてもの供養の気持ちが込められたものなのです。だから地蔵盆は子供のためのものなのです。

平安時代以降に阿弥陀信仰と結びついた地蔵信仰は民間に広がりました。そして地獄の鬼から子供を救うとして子供の守護神ともなり、現在に至っています。京都では室町時代に地蔵盆が大流行しましたが、東京ではお地蔵さんが作られたのは江戸時代になってからだと伝えられています。江戸ではお地蔵さんよりお稲荷さん信仰が盛んだったため地蔵盆の風土があまり根付かなかったようです。

どんな行事か?

地蔵盆の主役は子どもたちです。京都では、各町内ごと地蔵尊の前に屋台を組んで花や餅などの供物をお供えします。子供たちはお菓子を食べながらゲームなどの遊びや福引きなどをして楽しみます。また数珠繰り(じゅずくり)や数珠回し、といって玉が大きくて長い数珠を子供達みんなで輪になって座り回す儀式をします。その時に大人もその輪の中に入り、子どもたちと一緒に数珠を回します。

地蔵盆が終わると、京都の夏休みも残り1週間となります。子どもたちにとって夏休みの最後の一大イベントが終わります。しかし、そのような光景が京都の町からも少しずつ消えて行っているようです。現代は少子化が進み、特に都市部ではそのようなことを催す場所も減りつつあるのでしょう。

しかし、昔のことを振り返って命の尊さや生きることの喜びなどを今一度再確認する意味では大切な行事だと思います。地蔵盆の存在やその意味だけでも受け継いでいって欲しいものです。

 

 

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