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なぜ中国は「強がり」を崩さないのか。見えてきた苦しいお家事情

尖閣諸島周辺や南シナ海で度を過ぎた強気な姿勢を取り続ける中国。なぜ彼らは国際社会の理解を得られないような行動をやめようとしないのでしょうか。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、中国が直面している様々な問題点を精査しながら、習近平政権が「強面」を見せ続けなければならない実情について分析しています。

横暴中国、国内は不安定化

中国の国際的横暴が目につく。8月11日には尖閣諸島付近で転覆した漁船の6人が、駆けつけた日本の海上保安船に救助された。南シナ海などにおける中国船の主権は、国際的な仲裁裁判所の判決で否定されたばかりだが、中国はさらに激しく領海侵入を繰り返している。その挙句に、ギリシャ船籍の船と衝突して難破し、海に投げ出された漁船員が領海を守るため監視している日本の保安船に救出されたというのだから皮肉な話だ。

しかし南シナ海における中国の挑発行為はエスカレートするばかりで、中国の公船と公船周囲に数百隻の漁船が航行する異常事態が続いているのだ。

中国は南シナ海を巡る仲裁裁判所の判決に対し「でたらめだ」と無視する姿勢をみせ、カンボジア、ラオス、ブルネイなどを味方に引き入れてASEANの分断工作まではかっている

さらに21世紀のシルクロード(一帯一路)構想を推進するため「海のシルクロード構想に向けてアフリカ諸国と接近中だ。東アフリカからインド洋を通って東南アジアに達する海路で、東南アジアに着くと陸路で中国に運ぶインフラを整備しているのだ。このためアフリカ諸国に支援を増大し、その引き換えとしてガンビアと国交を回復。そのうえ台湾と断交させたり、ジブチには中国軍の国外拠点となる湾港を建設中だ。

一方で国内では1年前に人権派弁護士ら約300人を連行。いまだに20人以上の民主活動家と人権派弁護士が拘束中で、家族にまで嫌がらせが続いているという。さらに一時は収束中とささやかれた腐敗・汚職幹部の一掃運動も、軍部の改革と並行して行われ、7月25日には胡錦濤政権下で軍制服組の最高位にいた郭伯雄上将(軍事委員会副主席)に対し無期懲役の判決が言い渡された。胡政権下で郭氏とともに軍事委副主席だった徐才厚(すでに死去)も腐敗問題で立件されており、制服組のトップ二人が立件されたことになる。

これらを受けて習近平政権は「七軍区」を「五軍区」に改編。総参謀部など四部を解体して中央軍事委を15部門にするなど大幅な軍改革を行なっている最中だ。

しかし肝心の中国経済は減速が続き、中国人民元の国際化は未だならず、人民元切下げから1年経っても元安に歯止めがかからず元安なのに輸出も低調のままだ。中国の株価(上海総合指数)は、2015年から2016年7月末の1年で3,663から2,979に低落、元の対ドル相場は1ドル=6.1172から6.6511へ。輸出が1,931億ドルから1,847億ドル、実質GDP伸び率も7.0%から6.7%といった具合だ。

特に対ドル為替レートは2015年8月に3日間連続して切り下げ、基準値から計4.6%も下がり、「輸出を増やすための切下げではないか」との憶測も流れた。結局、元相場はこの1年で9%近く下落したものの、今年1-7月の輸出額は前年同期比で7.4%減と元安効果はみられなかった。中国の不良債権処理や鉄鋼、石炭などの過剰生産解消も遅々として遅れているし、かといって従業員のリストラを進めると社会不安につながることになる。

こうしてみると、中国は外交や外部面では強気に出て強い中国の面子を保つために汲々としているが、内政や国内経済、社会状態では不安を抱えている実情がよく見えてくる、といえよう。

(Japan In-depth 2016年8月19日)

 

ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」
ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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