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あのアイリスオーヤマが、なぜ今「家電」で注目されているのか?

ホームセンターのあらゆる売り場を席巻するアイリスオーヤマ。大阪生まれの仙台育ちのこの企業、近年は家電分野に参入し多くのユーザーの支持を得ています。激戦の家電業界にあって、なぜ後発のアイリスオーヤマが好調な業績を上げられ続けているのでしょうか。MBAホルダーの理央周さんがご自身のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』でその秘密に迫ります。

売り手目線だから売れない:競争の激しい家電業界で頑張るアイリスオーヤマの顧客視点に学ぶ

アイリスオーヤマの家電部門の元気がいい。私は「アイリスオーヤマ」と聞くと、愛犬を飼っていることもあり、真っ先にペット用品の販売を思い出す。アイリスグループとして、ペット商品以外にも、LED照明や園芸用品など、数多くのカテゴリーの製品を製造販売している企業だ。なかでも、2005年に開始し、2014年に「大阪R&Dセンターを稼働させ大手電機メーカーの退職者を雇用するなど、家電部門に力を入れている。

しかし、家電業界は、日系の大手メーカーや独立系のアイディア商品のメーカー、ダイソンやサムソンなどの外資系企業の参入などで、競争が激化している。そんな、一見厳しい環境の中で、使い勝手のいいアイディア商品も多く、個人的にも好きなアイリスオーヤマの家電を、マーケティングの視点から、考えていきたい。

なるほど家電というコンセプト

まず目を引くのが「なるほど家電」というネーミング。ホームページを見ると、「機能はシンプル、価格リーズナブル、品質はグッド。そして、人々がより気持ちよく快適に過ごすための『なるほど』をプラス」と書かれている。

「なるほど家電」はアイリスオーヤマ。

「なるほど」とは何だろう? とまずは感じた。

各商品の説明を見ると、たとえば、両面ホットプレートの商品画像の上には、「なるほど!」と吹き出しで目立つように書かれている。さらにその下に、「どこでも誰とでも楽しみの幅が広がる『両面焼き』」と書かれている。

アイリスオーヤマの「なるほど」は、他社製品と違う「自社だけが提供できる独自な価値」のことなのだ。しかも、スペックや価格ではなく、「使い心地」のよさが、説明されている点がいい。

顧客価値には、スペックなどの機能的な価値と、心で感じる情緒的な価値がある。ホットプレートを例にとると、盤面のサイズや、最大ワット数などが「機能的価値」で、使いやすさや、見た目としてのデザインが「情緒的価値」にあたる。そして人は、「使い勝手が良さそうだな」「かっこいいな」と、まずは心が動きそして実際の大きさや価格を確認する。

「なるほど家電」は、感情に訴える表現をしているので、見ている消費者の方は「価格の安さ」ではなく、「家族で焼肉をするのはちょうどいいな」などという、違う軸の判断基準で、この説明を読むのだ。しかも、説明文の下にある画像も、実際に焼肉を焼いている写真だったり、掃除機であれば、女性が楽しそうに掃除をしている姿を全面に出している。イメージを伝える画像においても、機能的な価値よりも「使い勝手」「使ったあと自分がどうなるのか?」という姿を、コミュニケーションできているのだ。

機能的価値を訴えることを「モノ」とすれば、「情緒的価値の訴求はいま流行りのコト」にあたる。すなわちその製品を使ったら、自分はどうなるのか? という、「ストーリー」を伝えることになる。

顧客が本当に欲しいのは、ホットプレートではない。家族との楽しい食事の時間が欲しいのだ。楽しい食事のためには、土鍋でもいいかもしれないし、フライパンでもいいかもしれない。でも、そんな多くの選択肢の中で「ホットプレート」が一番いいんですよ、と消費者に伝えているのが「なるほど」家電なのだ。

なぜアイリスオーヤマは顧客視点で伝えられるのか?

なるほど家電をはじめ、アイリスオーヤマの製品には、顧客の立場にたったものが多い。この理由は、自社のためにではなく顧客のために、という視点で、常に物事を考えるDNAがそうさせているようだ。

大山社長のインタビュー記事によると、「自社都合のプロダクトアウトではなく、実際に使う人たちが何を求めているかというユーザーイン」の考え方で発想をし、製品開発につなげるという。

アイリスオーヤマ、「家電本格参入」の真意 東洋経済オンライン

販売している米も、スーパーなどで売れられているように、5キロ、10キロ単位ではなく、小分けパックにして販売しているとのこと。私も料理をするのでわかるのだが、その方が新鮮で、毎日の料理には便利なのだ。

こういった努力の積み重ねによって、次もアイリスグループで買おうという気持になる。つまり、需要がどんどんと醸成され、新しい顧客、いわゆるおなじみさんの創造につながっていく。

アイリスグループが上場しない理由の一つに、「無理な成長よりも、いかにして社会に貢献し、従業員のためになるか」を優先する、ということがあるとのことだった。そのために、各製品のマージンも10%を確保できるような仕組みにしているとのこと。

アイリスオーヤマが東京に本社を置かず、株式上場もしない理由 ダイヤモンドオンライン

前述のR&Dセンターの構築や高齢者雇用と同じく、「人」に対する愛情を感じることができる。SNS時代において、多くの情報や感情が透明化されている中で、愛情いっぱいに自社製品を開発し販売している姿勢は、やはり、顧客には伝わるのだ。

image by: Wikimedia Commons

 

理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』より一部抜粋

著者/理央 周(めぐる)
あのヒット商品はなぜ「ヒット」したのか?あのレストランの予約は、なぜいつも取れないのか?世の中で「売れているモノや人気者」はなぜヒットするのでしょうか?毎号実際の店舗や広告を取り上げ、その背景には、どんな「仕掛け」と「思考の枠組み」があるのかを、MBAのフレームワークとマーケティングの理論を使って解説していきます。1.「中小企業経営者・個人事業主」が売り上げを上げる 2.「広告マン・士業」クライアントを説得する 3.「営業マン」が売れない病から脱するためのメルマガです。
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