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店を繁盛させたいならフェラーリにあってトヨタにないものを考えよう

行列のできる店と、できない店の違いはどこにあるのでしょうか? 例えば飲食店なら、その答えは味以外の、もっと単純で意外に見落としがちなところにあるようです。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、フェラーリを例に上げこの謎をわかりやすく解説してくださいました。

フェラーリから学ぶ差別化の手法

行列ができる店と行列ができない店の間にはどのような違いがあるのか。様々な要因が考えられますが、一言で結論づけるとどうなるのでしょうか。結論から述べます。それは「差別化」です。

行列店に共通している特徴は何かを考えてみると、それは、他にはない差別化された何かがあると結論づけることができます。行列ができない店は差別化されていないので、その他大勢の中に埋もれてしまっている状態となってしまっています。

その他大勢の中に埋もれてしまう状態を経済学でいうと、完全競争の状態にあるといいます。完全競争とは、市場に需要者と供給者が多数存在し、市場の需給が一致するところに価格が落ち着き、供給者側で価格を決定できない経済状態のことをいいます。

完全競争状態は市場としては好ましい状態ですが、供給者からすると、需要者に購買の意思決定を完全に委ねなければならないので、利益を創出できないという、企業としては問題のある状態といえます。

この完全競争から抜け出すためには、差別化以外に方法はありません。差別化することができれば完全競争から抜け出すことができ、独占企業へ近づくことができます。

小さな企業は独占企業になる必要がある

独占企業とは競争相手が存在せず市場を支配して利益をあげている企業のことをいいます。現実的には競争相手が全く存在しないということはありませんが、その状態に近い企業は存在し大きな利益をあげています。

独占企業は供給する商品・サービスの価格を引き上げて利益が最大化するように価格と供給量を決定します。独占企業は価格決定権を自身で握ることができます。また、供給量を少なくすることで価格を釣り上げることができます

ところで、行列店の多くでは数量限定で商品・サービスを供給しています。これは、限定性を演出することで希少価値をだす意味もありますが、この独占企業の原理に従って供給量を抑えることで価格を吊り上げて利益の最大化を狙う意味もあります。数量限定にすることで供給量が抑えられ、価格を釣り上げることができるので利益が最大化するのです。

ということで、企業はこの独占企業にいかに近づいていくかを考えていかなければなりません。そのためには差別化が必要です。

ではどうすれば差別化することができるのか。もちろん、簡単に答えが出るような話ではありません。簡単に答えがでるのであれば、みな儲かることになります。現実にはそんなおいしい話はそうそうあるものではありません。この差別化でみな苦労しているわけです。

フェラーリがあえて行っていることとは

ただ、比較的簡単に差別化できる方法がないわけではありません。フェラーリがわかりやすい例になるでしょう。フェラーリは年間でわずか数千台しか製造販売しません。つくろうと思えばもっとつくることはできるはずですが、あえて数千台しかつくらないようにしています。

フェラーリには、需要よりも一台少ない数をつくるという社訓があるそうです。そうすることでフェラーリに希少価値が発生します。実際の購入申し込み者は生産台数の何倍にもなるため、売れ残るということはありません

さらに、フェラーリというとなんだか製造コストが膨大にかかっているイメージがありますが、実際のコストは他の自動車メーカーと比べても低い水準にあります。独占企業のように供給量を抑えることで収益を最大化させることができるのですが、その大前提にあるのが差別化です。差別化されていないと他の事業者に真似をされてすぐに完全競争状態に陥ります。

しかし、フェラーリは差別化できているからこそ、独占企業に近い位置にポジショニングできています。フェラーリの差別化は高級スポーツカーというニッチな市場に特化している点にあります。トヨタや日産などが真似しようにも真似できません。

ところで、フェラーリのクルマとトヨタなどの他の自動車メーカーのクルマとの間にはどのような違いがあるのでしょうか。ここに差別化のポイントが隠されています。差別化するにはどうすればいいのかがわかります。

簡単に差別化できる方法とは

フェラーリのクルマとトヨタなどの他の自動車メーカーのクルマとの間にある大きな違いは見た目」にあります。トヨタのクルマと日産のクルマの違いを認識できる人は多くはいません。もちろん、クルマに詳しい人はわかるのかもしれませんが、消費者の多くはブランドロゴでも見ない限りその違いはわからないでしょう。

でも、フェラーリのクルマとトヨタのクルマの違いを認識できない人は稀ではないでしょうか。ブランドロゴを見なくても一目でフェラーリのクルマはフェラーリと認識できるはずです。性能の違いというものももちろんありますが、それは試乗してみなければわからないことです。

このことから差別化のヒントが得られます。簡単に差別化する方法は見た目で違いを出すことです。性能で差別化するためには資金と技術、時間が必要です。しかし、見た目で差別化することはそこまで難しい問題ではありません。

差別化を図る方法はたくさんあります。その中でも、比較的簡単にできるのが「見た目」での差別化です。たとえば、長い行列ができるあるラーメン店のラーメンはとにかく山盛りです。もやしやキャベツなどの具が山盛りに盛られています。器から15cmぐらいはみ出して山盛りに盛られているのです。見た目で差別化を図っています。

もやしがメインなのでそれほど原価はかかりません。もやしを山盛りに盛るだけなので何も難しいことはありません。しかし、たったこれだけで差別化を図ることができるのです。

行列店ではありませんが、トヨタ自動車は一時期、特徴のないクルマを販売する企業というレッテルを貼られて苦戦していたときがありました。そこでトヨタは、少し変わったクルマを販売しました。クラウンというクルマなのですが、これがただのクラウンではありません。このクラウンは車体の色がピンクなのです。見た目でも一番わかりやすいを変えることで差別化を図ったのです。

これらの事例からもわかる通り、見た目を変えるだけで差別化を簡単に図ることができます。しかも、難しい理論が必要というわけではありません。難しくないユニークなアイデアを大胆に取り入れることができるのかが問われます。

多くの行列店で行われている見た目での差別化を行うことができるのか。繁栄する企業や店舗というのは、難しくないことを大胆に行えるのかが問われるのではないでしょうか。

image by: Bankoo / Shutterstock.com

 

店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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