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お金ではない。松下幸之助を素人から経営のカリスマにした「志」

パナソニックの創業者で経営のカリスマ・松下幸之助さんは、そもそもなぜ「電器事業」に目をつけたのでしょうか。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、松下さんが最初に電気事業を始めようと思い立ち、素人同然の経営で苦労を重ねながら会社を軌道に乗せるまでの軌跡を記しています。

成功する創業についての考察

事業の本道は「儲かるからやってみよう。」ではなくて顧客が求めていて喜んでもらえるものをやることであり、それがさらにやらねばならないという使命感(ミッション)を持つに至れば強いものとなります。お金を払ってでもそれが欲しいというお客様の要望、さらに言えば渇望に沿うことが「生活の糧」を得られて「やり甲斐」となり得る仕事の「前提」です。

仕事の「前提」であると述べましたが、成功を継続させる多くの事業は最初から「使命感」を持っていたのか、ハタと気付き持つに至ったのかは別としてここから力強い経営を始めています。ただし事業とは「生もの」で、やり抜くには徹夜も厭わぬ情熱や時として微笑んでくれる運命の女神の助けがなくてはやり遂げられません。

話は変わりますが、ノーベル賞の受賞者の多くがノーベル賞を受賞できるのは、コツコツ研究したらからできるのではなくて最初からノーベル賞級の研究をしたからこそ受賞できるのだそうです。大きく成長できる事業についても同じことが言え、時代の流れの中にあるノーベル賞級の欲求を先んじて適える企業が興隆を掴みます。

パナソニックの創始者の松下幸之助さんが電器事業に強く引かれたのは、使いの途中に電車を見て新時代の到来を予感したからとのことです。創業は大正6年のことで、自身が開発した改良ソケットが上司に認められなかったこと、肺尖カタルがこうじてきて会社勤めが儘ならなくなってきたこと、「実業で身を立てよ」という父の言葉を思い出したことなどによります。

まったく商売経験のないなか生活の糧を得んがための開業でしたが、松下さんには改良ソケットがお客様に役立ち喜んでもらえるとの自信がありました。まったくの素人なので買ってくれそうな問屋を巡って押しかけて行き、売れそうか、また価格はいくらぐらいがよいのか聞くことから始めています。しかし当然のこととして、素人ではまったく相手にもされませんでした。

まったくの伝手のないところから事業を始めたので、創業当時は困難の連続で、そんななかでも思わぬ幸運もあり、事業を少しずつ軌道に乗せて行きます。ここでは、知恵の話をしようとしているので松下さんのその軌跡を辿って行きますが、最初の知恵は自覚なく行えたもので、電気に将来を見て、お客様に喜んでもらえる先んじた効用のある商品を開発したことです。

松下さんは「本気になって志を立てれば事は半ば達せられたといってよいかもしれない」ということを言っています。最初の事業初めからソケットの素材のベークライトの製法をオープンにしたり、事業業績についても公私を分け隠し立てしなかったり、ちょっと信じられないほどの一味違った透明性のある経営スタイルをとっていました。

経営は、心理学という小さな枠を超えた人間学の実践と言ってよさそうです。「儲けたい」に凝り固まれば「秘密していれば」となりがちですが、松下さんの取った経営の透明性は従業員の心に微光を灯したでしょう。最先端で企業競争を行うとき1円の原価低減でも勝敗の決め手になり得て、経営者の志から出た微光こそが上質な経営と言えそうです。

志の経営」が松下さんの特徴だと言えそうですが、ご本人は「若い頃、正直なところ大きな志を抱いて仕事についたとは言えない」「一つ一つの仕事をまじめに積み重ねてきたように思うのです」と言われています。いつも成功者の事例から奥義を読み取ろうとするのですが、ここでは「まじめに積みかさねる」が秘訣のようです。

 

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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