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マクドナルドが犯した最大の失敗。「望まぬ顧客」はなぜ増えたのか?

最近ようやく業績が回復してきたマクドナルド。期限切れの鶏肉の使用と異物混入問題が業績悪化の決定打になったと言われていますが、無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、それ以前から「顧客の質」が低下し、危ない、うるさい、不衛生といったイメージが客足を遠のかせていたと分析しています。

マクドナルドは顧客の選別で失敗。「逆選択」のワナ

こんにちは、佐藤昌司です。顧客は選別する必要があります。一瞬、「えっ?」と思われるかもしれません。捉えようによっては、顧客の差別になるからです。

選別差別は違います。購買する顧客は優遇し、購買しない顧客を冷遇することは差別です。望ましい顧客が来店するようにし、望ましくない顧客が来店しないようにすることは選別です。

店によって望ましい顧客像は違います。店にとって望ましい顧客が来店するようにすることは大事なことです。これは差別ではありません

マクドナルドが犯した失敗とは?

マクドナルドの失敗を例に挙げます。マクドナルドが苦戦していることはご存知の通りです。2014年夏以降に発覚した期限切れ鶏肉の使用問題や異物混入問題などの影響で業績が悪化しました。

実は、マクドナルドの苦戦は期限切れ鶏肉の使用問題や異物混入問題の前から起きていました。美味しいメニューがない、価格が割高、店舗が汚いといった問題が指摘されていました。

そして、大きな問題となっていたのが「顧客の質の低下」です。マクドナルドを利用する顧客のモラルが低下していたのです。

「騒ぐ若者がたむろしている」
「食べ散らかす客が増えた」
「子供が騒いでも親が注意しない」

このような声が増えていたのです。望ましくない顧客が明らかに増えていました。マクドナルドは知らず知らずのうちに望まぬ顧客を呼び込んでいたのです。

「類は友を呼ぶ」ということわざがあるように、望ましくない顧客が望ましくない顧客を呼び寄せます。いつのまにか、店内が望ましくない顧客で溢れかえるようになりました。

なぜ、マクドナルドは望ましくない顧客で溢れかえるようになってしまったのでしょうか。それは、「逆選択の原理が働いてしまったからです。逆選択とは、取引主体間で情報の格差があることにより望ましくないものが残ってしまうことをいいます。

逆選択とは?

例えば、保険業界は顧客の詳細な情報を得ることが困難なため、リスクの高い加入者ばかりが集まってしまう、といったことです。

「情報の格差」とは、保険業界でいえば、保険会社は顧客の正確な情報を得ることが困難であることをいいます。例えば、顧客が病気を隠して保険に入ろうとしても、保険会社は「あなたは病気を隠していますよね?」とは聞けません。

顧客は自身の情報を隠し、保険会社は顧客の詳細な情報を得ることができない状態が「情報の格差」になります。よって、病気がちな人と健康な人を同一に扱わざるを得なくなってしまうことになります。

その場合、仮に保険料が一定とすると、健康であるリスクの低い人は保険料が割高になり、保険に入るメリットが少なくなります。逆に、病気がちでリスクの高い人は保険料が割安になり、保険に入るメリットが多くなります。逆選択が働くことでリスクの高い人ばかりが保険に加入してしまうのです。

リスクが高い人ばかりが集まってしまうことで、保険加入者はすぐに病気になったり事故を起こしたりしてしまいます。保険の支払い額が徴収する保険料よりも上回ることで業績は悪化します。

マクドナルドは、低価格や効率重視の経営により、あらゆる顧客に訴求し集客を図っていきました。顧客の詳細な情報など関係なく、ターゲットを広げて訴求していきました。それで集客は実現できたのですが、逆選択が働き、質の低い顧客が集まるようになってしまったのです。次のような循環が発生しました。

以降、同様の循環が繰り返されます。マクドナルドはこの悪循環に陥ってしまったのです。

短期的に見れば、まずはあらゆる手段で集客を図ることは必要です。ただ、長期的に見ると、どこかで先の悪循環に陥ってしまいます。その悪循環を断ち切るタイミングが遅すぎたのです。

質の悪い顧客が集まる店」というレッテルが貼られてしまうと、そのレッテルを剥がすことは至難の技です。失った信頼やイメージは簡単には取り戻せません。もっと早く対策を講じるべきだったのです。

望ましい顧客を呼び寄せるためには顧客の選別が必要

顧客は「選別」する必要があります。「望ましい顧客」を集めるべきです。望ましい顧客とは顧客ロイヤルティが高い顧客です。顧客ロイヤルティが高ければ、顧客生涯価値が高くなります。長期的に安定的なキャッシュ・フローをもたらします。そのためには、逆選択が発生しないようにしなければなりません。逆選択は売り手と買い手とで情報の格差がある状況において発生します。

マクドナルドの例でいえば、顧客はマクドナルドのことをよく知っているが、マクドナルドは顧客のことをよく知らないことが該当します。顧客のことをよく知らないとは、消費者情報を無視した無差別的な訴求・対応のことです。無差別的な訴求・対応で一時的に集客はできますが、望ましくない顧客を集客してしまうことになり、逆選択が発生してしまいます。

長期的に考えると、望ましい顧客を集客していく必要があります。そのためには顧客を「選別」することが大事です。望ましい顧客を集客するためには望ましい顧客像を特定する必要があります。性別、年代、居住地、年収、趣味、ライフスタイルといったあらゆる情報から考察し、望ましい顧客とはどのようなものなのかを明確にすることが大事です。そして、望ましい顧客に向けて訴求していくのです。

顧客は選別しましょう。

image by: Wikimedia Commons

 

店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業
著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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